「それでは視聴率が取れないから」とはよく聞く台詞だが、では、視聴率を巡る枠組みになぜメスは入らないのか。視聴率10%が多いか少ないかの基準は何かと言えば、他局との比較だ。視聴率が見込める地上波のチャンネルは、東京でたった7つ。つまり比較対象するものは7つしかない。全体で70%の人が視聴していれば、平均値は10%。7%だと問題。20%だと万々歳という話だ。だがチャンネル数が倍に増えれば、平均値は5%になる。ハードルはグッと下がる。気分はずいぶん楽になる。よいものはこの方が作りやすい。

繰り返すが、アジアカップ期間中、僕は1個のリモコンで1000チャンネル視聴可能な環境の中にいた。討論番組を3時間も4時間もやっていられる理由が分かる気がする。

スカパー!は頑張っていますよという声を、たまに聞くが、こちらの視聴率は1%に満たない。簡単には見られない、知る人ぞ知る領域に潜んでいる。地上波との落差は著しい。その間にBSという分野もあるのだが、いずれにせよ、サッカーの魅力を伝える放送の環境は十分とは言えないのだ。新聞や雑誌も似たり寄ったり。メジャーなのかマイナーなのかはっきりしない中途半端な位置にいる。

その結果、いずれ「卒業」したくなる作りになっている。サッカーってもっと面白いんだけれどなー。日本がアジア杯を制しても、サッカー熱がイマイチ盛り上がらない日本を憂わずにはいられない。

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