■ 33節

J1は残り2節。10勝14敗8分け。勝ち点「38」の大宮アルディージャは引き分け以上でJ1残留が決定する。大宮は32節で16位のヴィッセル神戸と対戦して2対2のドロー。貴重な勝ち点「1」を奪った。一方のアルビレックス新潟は11勝9敗12分けで勝ち点「45」。すでに残留を決定しており、一つでも上の順位を目指しての戦いとなる。

ホームの大宮は<4-2-2-2>。GK北野。DF杉山、深谷、坪内、鈴木規。MF青木、李浩、藤本、渡部。FW市川、ラファエル。元韓国代表のFW李天秀が出場停止で、FW市川が21節以来のスタメン。MF金久保がベンチスタートでユース出身で21歳のMF渡部が右サイドハーフでスタメン。9ゴールを挙げているFW石原はベンチスタートとなった。

対する新潟は<4-2-2-2>。GK東口。DF三門、千葉、永田、酒井。MF小林慶、本間、マルシオ・リシャルデス、ミシャウ。FW田中亜、大島。DF西が出場停止のためDF三門が右サイドバックに入る。韓国代表としてアジア大会に出場していたMF曹永哲がベンチ入り。32節の仙台戦で試合終了間際に同点ゴールを決めたFW田中亜は2試合連続スタメンとなった。

■ 2対2のドロー

試合は前半19分に大宮が高い位置でボールを奪うと、MF渡部の絶妙のパスからFWラファエルが裏に抜け出してゴール。1点を先制する。FWラファエルは今シーズン8ゴール目。しかし、前半29分に新潟が波状攻撃から最後は右サイドバックのDF三門が決めて同点に追いつくと、さらに前半39分にもコーナーキックからMFマルシオ・リシャルデスが決めて逆転に成功する。MFマルシオ・リシャルデスは今シーズン14ゴール目。前半は2対1の新潟リードで折り返す。

1点ビハインドの後半開始から大宮はDF鈴木規とMF藤本に代えて、DF村上とMF金久保を投入。さらに後半11分という早い段階で3枚目のカードとなる切り札のFW石原を投入し、攻撃のスイッチを入れると、後半19分にMF渡部のクロスをゴール前に残っていたDF深谷がヘディングで決めて2対2の同点に追いつく。DF深谷は今シーズン6ゴール目。ここ8試合で5ゴールと貴重なゴールを挙げ続けている。

引き分けでも残留が決まる大宮は、残り時間でFWラファエルが決定機を作るなど逆転のチャンスもあったが、決められず。しかし、そのまま2対2で試合は終了したため、最終節を待たずにJ1残留が決定した。

■ J1残留が決定

大宮は引き分けたため残留が決定した。2005年にJ1に昇格してから降格したことはなく、6年連続で残留を果たした。シーズン前半はFWラファエルの怪我もあって苦しんだが、FWラファエルが戻ってきて、さらにシーズン途中にFW李天秀らを補強。シーズン終盤は安定した戦いを見せて、残留という見事にミッションを果たした。

毎年のことであるが、残留がかかった時期の大宮は強さを発揮する。この強さがシーズンの序盤から見せられれば、もっと上位に食い込むだろうが、なかなか難しくて、同じような波のシーズンが続いている。

■ 同点ゴールは深谷

引き分けでもOKの大宮は、後半19分にDF深谷のゴールで追いついた。これでDF深谷は6ゴール目であるが、ここに来てのDF深谷の活躍は凄まじいものがあり、大きな貢献をしている。DFマトは今シーズン限りで退団が決定したが、D坪内とDF深谷のコンビネーションはよくて安定していた。

また、2つのゴールをアシストしたのが3年目のMF渡部。もともとはフォワードの選手であるが、今シーズンは右サイドバックでプレーすることも多かったが、この日は右サイドハーフで先発。2試合連続スタメンとなったが、見事なスルーパスと正確なクロスでゴールをおぜん立てした。

■ 飛躍のためには・・・

大宮はどのポジションにも優秀な選手を抱えており、選手層も厚くなってきているが、スペシャルな存在というとFWラファエルくらいであり、もっと上の順位を目指すには、少し物足りないメンバー構成といえる。ここに来て、MF渡部、MF金久保、MF青木あたりが出場機会を得ているが、彼らがブレークスルーを果たすか、補強で日本代表クラスの選手を引っ張ってくるか、何かがないと、来シーズンも同じようなそこそこの結果に終わってしまうだろう。

鈴木監督はJリーグで実績のある指導者である。今シーズンは、「残留」という目標を達成するのに精いっぱいであったが、鈴木監督が来シーズンに向けて、どんな選手をリクエストしてチームを作っていくのかは、注目したいところである。

■ 三門が同点ゴール

新潟は右サイドバックのDF西が出場停止のため、ボランチのDF三門がサイドバックに入ったが、違和感なくプレーし、1対1に追いつくゴールも決めて、予想以上の活躍を見せた。もともと、DF西もサイドバックが本職の選手ではなく、新潟の右サイドバックに求められるものが、サイドをアップダウンするだけではないこともあって、DF三門も戸惑うことなくプレーすることができた。

MF三門はボランチで出場することが多かったが、ここ最近は攻撃的なポジションでもプレーしており、この日はサイドバック。いろいろなポジションで使われているが、どのポジションでもこなせており、2年目のシーズンであるが、プレーのレベルを上げてきている。今後の新潟を支えていかなければならない選手であるが、順調に育ってきている。

■ ブレーキになった大島

2試合連続でスタメンとなったFW田中亜は積極的な守備と飛出しで持ち味を発揮していたが、2トップの相方のFW大島はミスが目立って不本意な出来だったといえる。日本代表のFW矢野がフライブルクに移籍したこともあって、13試合連続でスタメンを飾っており、当初と比べると、持ち味が出るようになってきているが、年齢的にも伸びシロは少なく、物足りない部分もある。

すでに、MFマルシオ・リシャルデス、MF曹永哲、DF永田あたりが他チームに移籍するのではないか?という話が出ているが、センターフォワードは、是非とも、補強したいポジションである。ロンドン世代のFW川又もいるが、まだ、まかレギュラーを任せるには心細くて、外国人の含めていい選手を獲得したいところである。

■ 中位クラブのモチベーション

新潟はここ5試合で1敗4分け。16試合連続失点を喫しており、勝ちきれない試合が続いている。

新潟はスタートでは出遅れたが、夏場に盛り返して、苦労することなく残留を決定させた、3位以内に与えられるACLの出場権も難しい順位で、ここ何試合かは、目標を見つけにくい状態での試合が続いている。プロなので、言い訳にはならないが、残留を死にもの狂いで向かってくるチームとは、やはり、精神的な部分で差が出てきてしまうのは仕方がないことである。

3位以内のチームにACL出場権が与えられるようになって、上位チームは優勝以外にも目標が出来た。今シーズンも、G大阪、鹿島、C大阪、川崎F、清水あたりが3位以内を目指しての戦いが続いている。下位チームは、当然、降格があるので、一刻でも早く残留を決めるための戦いが続く。ただ、その一方で、中位クラブは目標が見つけにくいままである。

どうにかならないか?と思うのが、賞金の額である。現状では、7位以内のチームに賞金が与えられる。1位に2億、2位に1億、3位に8000万、4位に6000万、5位に4000万、6位に2000万、7位に1000万となっている。1000万というと、若手であれば二人くらい雇える金額であり無視できないものであり、「7位以内に入る。」というのも、各チームの目標の1つにはなっているが、1000万くらいであると、資金のあるクラブにとってはそこまで惹かれる額ではないので、ちょっとモチベーションにするには少し弱い気もする。このあたりの金額を、もう少し増やせないか?というのは、以前から思っていたことである。




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