あなたが本を出さない理由【わたしが本を出した理由】第4話
出版サクセスストーリー「わたしが本を出した理由」第4回目は、ブログ本出版に踏み切った理由をついに打ち明けた聡美(29)に、後輩のあおい(26)が自身のファッションブログの書籍化を相談するという。
そして、タケシが出版を頑なに反対する真の理由とは…!?


これまでのあらすじ
大学の演劇部時代の仲良し3人組、聡美(29)・タケシ(28)・あおい(26)が久々に出会い、会話をする中で、運営中のブログの話から、聡美が自身のブログを書籍化したことが判明。聡美は出版に踏み切った理由を、なぜか興味津々なタケシに日本の出版事情を交えて丁寧に説明していく。一方で、「自己投資の最上級」と熱く語る聡美先輩に、ますます憧れを強めるあおい。


「わたしが本を出した理由」は、大学の演劇部時代の仲良し3人組、聡美(29)・タケシ(28)・あおい(26)が、日々の生活の中のふとしたきっかけから、あることに気付き、挑戦していく姿を描いた、サクセスストーリーです。

聡美(29)・タケシ(28)・あおい(26)のプロフィール



4話
印刷工場に見学にきた、
聡美・タケシ・あおい
「印刷工場って大きいんですね〜。ビックリですぅ〜」
あおいが、無邪気に感動の声をあげる。
先日、聡美の書籍化の話を聞いて以来、出版に興味を募らせる好奇心旺盛なタケシとあおいは、本が出来上がる現場を見たいということで、無理を言って印刷工場を見学させてもらっているのだ。

「印刷工場って、言わば情報産業の最前線なんだから、ふつうは見学なんかできないんだからねっ!」
聡美は恩の売り方も大袈裟だが、爽やかすぎて憎めない

「大きいって言っても、ここは大量部数の雑誌も刷っているから特に大きいけど、スタッフ数人・ワンルームぐらいのスペースの町工場みたいな規模の工場も多いのよ。大きいと言えば新聞社のなんて、1時間に10万部以上も刷りあげる超大型だから、ここの何倍もデカいわよ」
聡美先輩を崇拝するあおいはますます尊敬の眼差しを強めるのだが、聡美の知識も自著出版以来のものだから、ここ半年程度のものだということを、タケシは気付いている。

「普通の書籍は数千部だからケタ違い。私の本も初版1,000部。刷るだけならあっという間ね」
「なるほど、本を出すなら、ここに原稿を持ってくればいいのか…」
ふと、タケシがつぶやく。

「タケシは甘いわね…。本を作ることと、それを売ることは別なのよ〜。
 本だけ出来上がったとしても、どうやって書店に流すのよー? それに保管場所も決めないと、刷り上がった本の山でタケシの部屋は埋まっちゃうわよ!」
聡美は以前、実はタケシと同じことを思っていたのだ。
ほんの半年前、それぐらい出版って縁遠いもののように感じていたのだから不思議なものである。

「本を作るのは、著者以外にも、編集者、デザイナー、印刷会社…って色々な力が必要なのよね。さらに、それを町の本屋で取り扱ってもらうためには、書店に卸す販売会社(取次)、出版物固有のコード(ISBNコード)が必要になるの」

4話
『B型自分の説明書』の
裏表紙に記載されている
ISBNコード
『取次』と『ISBNコード』について

本は作っただけでは当たり前ですが書店には並びません。
出版社が丹誠込めて作った本を、全国2万強の小売書店に届けるのは、「取次(とりつぎ)」と呼ばれる販売会社の役割であり、書店・商品・出版社が膨大な日本の出版界において、流通の要となっています。取次は、全国の書店にどう本を配るか(どう配本するか)を握る重要なポイントであり、そのラインナップは出版社の力や戦略など、様々な力学が関係してきます。

また、一般に流通する書籍には、出版物固有のコード「ISBNコード」がふられているのが原則です。このコードは言わば世界共通の書誌管理コードであって、これがあれば世界中で書籍の取り寄せや管理が可能になります。通常、出版社が発行を代行し印刷物に印刷されますが、これが記載されていないと、既存の流通ルートの中で書籍の入手は事実上不可能に近いといえます。