前回は、社会保険庁でのヤミ専従をニュースにからめて、「ヤミ専従とは何か」という記事を書いた。今回は、いくつかの官庁におけるヤミ専従の実態を紹介するが、その前にもう一度ヤミ専従とは何かを押さえておきたい。

ヤミ専従とは正規の手続きを取らずに労組活動に従事する行為であるが、より具体的には、職務専念義務免除の対象となる「労使交渉準備行為」を拡大解釈して、一切の組合活動を準備行為とみなして、結果として労組活動に専念する行為であると言った方が正鵠を得ていよう。

現在は存在しない某官庁に勤務していたT氏は、ヤミ専従が原因で給与減額処分を受けた。T氏は労組の執行役員をやっているほか、労組と関連の深い上部団体の活動に多忙で、しばしば自席を離れて、組合書記局で労組業務に従事していた。

なにしろ、勤務時間の半分以上は自席にいないのだから、管理職から目を付けられるのは当然である。それでも本来の役所業務はこなしていたというのだから、要するにヒマな部署なのである。

そして、たまたま席を立った瞬間を狙って、管理職から「汝何処へ行くや」と詰問された。「ちょっとそこまで」とお茶を濁すつもりだったT氏は、管理職からこれまで自席を不在にしていた日と時刻の一覧表を突きつけられた。そして後日、勤務不良の門で減給処分が言い渡された。

このような処分は、当局側としては当然であると思われるだろうが、この事件が起きた1980年代には、管理職のこのような態度を指して「マル政」と呼んで、反対闘争の対象となっていた。
ヤミ専従を指摘されて逆ギレとしか思えない様相であるが、昔はそれが普通だったのである。

現在でもヤミ専従は存在するが、あからさまなヤミ専従は減ってきている代わりに、「パートタイム専従」という形で生きている。
典型的なのは、選挙期間である。官公労は有力な選挙活動実働部隊であるから、総選挙ともなれば、組合役員は、役所の業務はほったらかしで、組合書記局にカンヅメで支持者集めのカード配布や、ポスター貼付準備などで忙しい。

某官庁の労組役員をしている、M氏は、選挙活動を理由に処分を受けた。一般職の公務員は政治行為への関与が禁止されている。しかし、労組役員としては、選対本部にカンヅメになって全戸ローラ作戦(特定地域の住居を一軒一軒回って支持を訴える作戦。戸別訪問)などをこなさねばならない。M氏は、ポスター貼り行為をアゲられて、そのまま政治行為禁止規定違反でアウトである。当然の結果である。

公務員叩きをするならば、官公労とセットにして叩かないと、本当の叩きにはならない。今後、総選挙あるいは地方選挙があったなら、ぜひお近くの官庁にある労働組合書記局を訪問してみるとよいだろう。
職務専念義務に違反して、選挙活動に熱心な公務員(労組役員)にお目にかかれるはずだ。