「くまモンがはやっているから」と言えば、ゆるキャラに走り、「B級グルメが受ける」と言えば、B級グルメへ…。そして今度は動画アプリ「TikTok」…。ぐっちーさんは、日本人が競争の厳しい「レッドオーシャン」の分野でばかり勝負する体質に疑問を投げかける(写真:アフロ)

このたび、「東洋経済オンラインアワード2018」で「ロングランヒット賞」をいただきました。日頃から大変親しくさせていただいている山崎元さん、吉崎達彦さんとご一緒に賞がいただけるのは、本当にうれしいことでございます。

「ロングランヒット賞」は書き手冥利に尽きる

当日いただいた賞状には、こんなことが書かれていました。

連載「競馬好きエコノミストの市場深読み劇場」で、日々変化する世界のマーケットについてわかりやすく解説。ときに裏を読み、今後を読み解くコンテンツとして多くの読者ファンを獲得。競馬予想も織り交ぜることで金融エンターテインメントの分野を確立されました。その功績をたたえここに表彰します。


この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

いろいろな賞をいただいたことがあるのですが、このロングランヒット賞、というのはある意味書き手冥利に尽きるわけでして、それだけ多くの方に読んでいただいているという証拠でもありますので「大変すごいことだな」、と思うわけであります。

いつもたくさんコメントをいただいておりますが(笑)、その皆様にも支えられている、と思いますと感慨深いものがございます。

そしてなんといっても編集者のFさん。ある意味われわれ以上の熱い競馬ファンでありまして、競馬場での集まりなど、さまざまな企画までお考えいただいて、感謝であります。改めて御礼を申し上げたいと思います。

さて、いよいよ年末でありますが、12月第1週なので2018年のまとめは、少しだけ気が早い。ということで、それは次の山崎さんと吉崎さんのお2人に任せると致しまして…

今回のテーマは

日本人はなぜレッドオーシャンで勝負してしまうのか……

です。タイトルのニュアンスをより正確に出すと、「しまう」が入るわけです。当ネタは、このオンラインにも記事を書いている畏友・木下斉(ひとし)君のひとことから。

日本経済新聞さんに以下のような記事が出ていまして、ワタクシも正直ぶっ飛んだわけです。「まだ、わからんのか……いくら俺たちの税金を無駄に使いまわせば気が済むのか、君たちは……」というわけです。

日経さんから引用します。

栃木県は動画アプリ「TikTok(ティックトック)」で県の魅力を伝える動画を県内の高校生や大学生らと制作する。べろんちゅさんや脳みそ夫さんなどティックトックを使いこなすタレントを招き、ワークショップを開催。内容を練り上げ、12月22、23日の2日間で県内をバスで移動しながら撮影する。

ワークショップは4日と11日の夕方に県庁内の会議室で開く。参加希望者は県のホームページから申し込める。締め切りは11月22日。とちぎブランド戦略室は「若者のアイデアで斬新な動画をつくってほしい」と期待する。

ティックトックは中国発の動画投稿アプリ。動画は1本15秒と短く、曲に合わせたコミカルなダンスなどを楽しめる。10〜20代を中心に人気を集めている。

「ゆるキャラ」「B級グルメ」…で、効果が上がったのか?

この記事に対する「狂犬木下」(木下君はこう呼ばれています)のひとことを紹介しましょう。

「ゆるキャラつくってクリックを競い合い、B級グルメで箸をたくさん入れてもらうのに動員して競い合い、ブロガー呼んでブログ書いてもらってPV競い合い、PR動画でユーチューバー呼んで再生数を競い、インスタ映えだとかいっていいね数など競い合い、そして今度はこれ。ほんとはやり物のレッドオーシャンに税金使うのがお好き。役所にしかできん仕事しろ...。

まさにその通りであって、もういい加減こういうことは繰り返してほしくない。あれだけ税金を使って、日本全国でメディアが取り上げたゆるキャラ、B級グルメは今どうなっているのか?調子にのって人の金で作ったそういうものが、実際にどの程度役に立ったのかという検証をなぜしないのか。

例えばそのB級グルメによって、具体的に単位面積当たりの売り上げがこれだけ上がったので、税金を使った効果があった、無かった、という検証もしないまま、どうしてこういう「はやりもの」にほいほい飛びつくのか。人の金(税金)を使って、こういうワークショップや勉強会を繰り返す、というのでは全く地方の活性化にならないことは証明済みです。

そして、なんといっても、他の人がやっていることをやりたがる日本人の特異性。これは実は官だけでなく民間でも同じで、人がやらないことをチャレンジする人は本当に少ない。

日本全国でB級グルメをやったら過当競争になることは明らかなのに、人のやっていることをすぐやりたがる。ハロウィンにしてもそうですが、みんなが渋谷に来るから渋谷に集まるわけですよ。「みんなが渋谷に来るから俺は品川がいいや」、という奴がいない。とにかく人のやっていることをやるのではわざわざ競合に飛び込んでいくようなもので、どうしてブルーオーシャン(人が誰もやっていない競争の全くない世界)に飛びこむ人がいないのか、不思議でなりません。

ブルーオーシャンだからこそできること

そこへ行くと、岩手県紫波町のオガールプロジェクトでは10年以上も話が前に進まなかった岩手県フットボール協会の公認グラウンドを作り、日本で最初のバレーボール専用体育館(オガールアリーナ)を作ったわけです。

そりゃ、こんなもんブルーオーシャンですから、独占です。もちろん綿密な市場調査もし、さまざまな分析のうえに成り立っているプロジェクトですが、キーになっているのは「ブルーオーシャン」ということ。繰り返しますが、何せ独占ですから、営業努力をすれば1年目から黒字となります。全日本のチームもVリーグのチームも頻繁に合宿に来てくれ、今年の世界大会ではついにカナダのナショナルチームの合宿所となりました。

これは2020年東京オリンピックの海外チーム誘致のステップとしては最高の布石になりました。思えば私とオガールベース社長の岡崎正信氏はわざわざ、ブラジルで開かれていた2016年のリオデジャネイロオリンピックまで出かけ、誘致活動を開始したのです。

ここで勝負を分けたのはやはり「日本で唯一といっても過言ではないバレーボール専用コート」があるということ、そしてやはりこの「東洋経済オンライン」でも連載をされている、「日本の断熱王」こと、竹内昌義先生の断熱によるエネルギー消費削減による環境対策です。すでに紫波町は東京オリンピックのホストタウンのひとつでありますが、このオガールアリーナがあれば、バレーボールでの東京オリンピック直前の事前キャンプ地としても、必ずや選ばれることでしょう。

断熱についても言いたいことはたくさんありますが、それは別の機会に譲るとして、とにかく「初」「唯一」というビジネスは成功する確率が非常に高いのです。にもかかわらず、われわれがバレーボール専用体育館を作ると言ったときは「あいつらアホだ」、とか「ビジネスのど素人だ」、とか散々非難されました。でも今になったら「成功すると思ったよ」と言われるので、まあ「何を言ってんだろ」、と思います。

これは民間における新規事業についても、日米両国を比較すればわかりますね。

グーグル(アルファベット)、アマゾンに代表されるいわゆるGAFA企業は今まで世の中になかったものを作り出して成功しています。新規事業と言っても、アマゾンの二番煎じみたいなものしか出てこない日本。これはもう、日本の将来が不安になるのは当たり前です。

われわれはビル・ゲイツやジェフ・ベゾスになれるとは思いません。しかし、彼らと同じようにまったくなかったものを作り出すことはできると思いますし、その際に土地を含むコストの安さは逆に地方の大きなメリットだと思っています。実際に、あの体育館やホテルを東京の地代で成功させることはかなり難しく、紫波町のコストだったからこそ採算に乗っていることは明らかです。

地方は自らチャレンジせよ

申し訳ありませんが、新幹線を通しただけでは何もならないことは、同じ岩手県の花巻温泉の凋落ぶりや、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社)でも知られる新井紀子先生が、いま再生に力を入れている米原駅前の寂れっぷりを見ればすぐわかります。

なのに新幹線を招致することには必死になるのに、それをどう使うか、ということに対してあまりにも知恵がなさすぎます。われわれの今回のナショナルチームの招致も「新幹線で東京まで2時間ちょっとですよ」、というのがもちろん強力なセールスポイントになっていますし、東京オリンピックでは岩手県は寒い、というのを逆手に取って、夏も涼しい、ということが今強力なプロモーション材料になっています。紫波町には何もない、というのも実は強力なセールスポイントで、選手が練習に集中できるからいいそうです(笑)。

あれがない、これがないといって 人なし、物なし、金なしと嘆くより、自分たちでチャレンジをした方がよっぽど早いのではないでしょうかね。

と、ここで終わろうと思っていたら、ついに恐れていた事態が発生!
わが広島カープの丸佳浩選手がよりによって、「ヨミ売リウサギチーム」(巨人)にFAと……

奇しくも、来年の初戦はマツダスタジアムで巨人を迎え撃つという事態に・・・大瀬良大地君の丸選手に対する初球は、思い切りデッドボールで宣戦布告だ!  

ということで、ちょー落ち込んでます……

(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

えー、この週末は第19回チャンピオンズカップ(G1)(12月2日、中京競馬場11R、ダート1800メートル=左回り)が行われます。いよいよ2018年のG1レースも12月に入って佳境でありまして、2018年秋の最強ダート馬を決める非常に楽しみなレースです。

チャンピオンズカップの本命は3歳馬ルヴァンスレーヴ

注目はなんといっても南部杯で強力なダート巧者の古馬(ノンコノユメ、ゴールドドリームなど)をなぎ倒し、中央・地方の交流G1で3連勝中のルヴァンスレーヴ(フランス語で「風立ちぬ」の意味)。鞍上もM・デムーロ騎手となれば、よもや外すまい、と考えます。

難点があるとするとやはりこのレース3歳馬はあまり戦績が良くなく、もし勝つと2006年アロンダイトまで遡る、という3歳馬にとってはちと「鬼門レース」っぽい、と言う点。

さらに言うと社台グループの種牡馬の中でも、ちょっと産駒に恵まれていないシンボリクリスエスの子、と言う点でしょうかね。

ただ、吉田オーナーはインタビューでは決して悪い血統ではなく、恵まれなかっただけ、ともおっしゃっており、走りっぷりからしても期待していいのでは? 調教師が名伯楽の荻原清調教師というのも強気の材料で、あとはミルコに任せるレースと見ました。

対抗はやはりノンコノユメ。そしてJ・モレイラ騎手が乗るサンライズソアを推します。

ただでさえ、外国人ジョッキー旋風が吹き荒れているわけですが、ダートとなると、ますます彼らの腕が冴えわたるということで、外国人ジョッキーの乗る馬は海外馬パヴェル(M・グティエレス騎手)、オメガパヒューム(C・デムーロ騎手)まで含めて、押さえておきたいと思います。