経済産業省と業界団体が、飲食店の無断キャンセル対策に乗り出した。同省は11月1日、「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」を発表し、コース料理の場合は全額、席のみの予約の場合は平均客単価の何割かをキャンセル料として請求できるとした。

予約を無断でキャンセルされると、飲食店は得られる予定だった売上を失うだけでなく、食材費や人件費の損害をこうむることになる。予約の人数が多ければ、無駄になった食材の廃棄に費用がかかることもある。同省は無断キャンセルで年間で約2000億円もの損害が生じており、前日・2日前のキャンセルも含めると約1.6兆円にもなると試算している。

店が無断キャンセルの損害額見越して価格に転嫁することも 他の客も損害

消費者も無断キャンセルにより不利益を受けている。飲食店が一定の割合で生まれる無断キャンセルの被害額をメニューの価格に転嫁していることがあるからだ。また、予約で満席のため入店を諦めたのに、無断キャンセルで結局空席ができていることもある。

同レポートでは、コース料理を予約した場合、契約の債務不履行に当たるとして、全額をキャンセル料として請求できるとした。席のみの予約の場合には、平均客単価の何割かがキャンセル料の目安になるという。

店舗にはキャンセルポリシーの設定を求めた。予約時に消費者に対してそれを明示する必要もある。他にも、予約の再確認や客がキャンセルしやすい仕組みの整備も求めた。連絡がつきにくく無断キャンセルになってしまうこともあるため、予約確認のSMSにキャンセルボタンを付与するといった方法があるという。

そうした仕組みを提供している企業もある。トレタ(東京都品川区)では、予約トラブル防止アプリ「トレテル」を運営。客から聞いた電話番号にSMSで確認の連絡をし、キャンセルもSMSで済ませられるようにしている。

「やむを得ないキャンセルの場合、キャンセル料を請求しないことも多い」

対策レポートの取りまとめには、飲食業界の業界団体も加わっていた。日本フードサービス協会もその1つだ。

しかし同協会の担当者は、一律でのキャンセル料設定がどの程度広まるのか疑問を抱いている。

「キャンセル自体がケースバイケースです。突然の会議でやむを得ず無断キャンセルになってしまうこともある。こうした場合には、今後のことを考えてキャンセル料を請求しない飲食店も多いです。私達の商売はお客様との信頼関係で成り立っているからです」

貸し切りパーティ等で幹事と打ち合わせをしていた場合には、食材の原価分だけでも支払ってもらうことがある。しかし通常の予約では、キャンセル料を請求しないことが多いという。

「キャンセル料を明確にすることで、予約しづらいという印象を持たれてしまうかもしれません。またキャンセル料の取り立て自体が大変です。その労力を考えると実際には請求しないことが多いのです」

経産省のレポートでは、キャンセル料を確実に回収できるようにアプリの利用やクレカの利用登録を促していた。今回の件についてネットでは、「指針が出来たのは良いですね」「(キャンセル料は)取るのは当然だと思う」と歓迎する声が相次いでいた。また「カードで半額前払いしないと予約できない」「〇名以上の予約は要デポジット」などの提案が出ていた。