ケンブリッジ・アナリティカのサイト

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 3月に入ってからのFacebook社の株価急落の要因となった、「個人情報不正利用」問題。ビッグデータを利用したビジネス全体に訴求する問題だけに、今後はさらなる波紋が予想される。

 そして、その背景に存在するイギリスの政策コンサルティング会社に注目が集まっている。それが、「ケンブリッジ・アナリティカ」だ。

 同社は、ビッグデータを用いて選挙などへの戦略的アドバイスや効果的なPRを行うプライベートカンパニー。直近では、トランプが勝った2016年のアメリカ大統領選や、英国のBrexitに際しての国民投票で離脱派のPR戦略を担った企業である。

 ケンブリッジ・アナリティカのPR戦略における主戦場はSNSだ。シェアや「いいね」の傾向からその個人のプロファイリングを行い、それをベースにユーザーに合わせた自陣営に有利なターゲティング広告を表示させたり、効果的に拡散させることで、自陣営に有利なネット世論を構築させるシステムを持っているといわれている。

 そして、この会社にはトランプの支援者だとされる重要な人物が関わっているのだ。

 それは、コンピューター学者としての知見を投資に応用し、ヘッジファンド「ルネサステクノロジー」を創業し、巨万の富を築いたロバート・マーサーである。彼は、ケンブリッジ・アナリティカ創業時の大口の資金提供者であり、今もなお強い影響力を誇っている。

 ケンブリッジアナリティカがBrexitの国民投票で離脱派のキャンペーンを行ったのは、このロバート・マーサーが離脱派の大御所であるナイジェル・ファラージと旧知の仲だったことが理由だと言われている。

◆アメリカ右派勢力の強力なパトロン

 昨年11月にルネサステクノロジーからの引退を表明したロバート・マーサーは、ゴリゴリの右派である。右派ではあるが保守派とは言い難く、どちらかといえばリバタリアン系であり、新興の富豪にありがちな反エスタブリッシュメント(既存富裕層)である。とはいえ、大筋で共和党支持者であり、彼が一族の名を冠して設立した「マーサー財団」は、アメリカの右派にとっては大口のパトロンだ。

 保守系シンクタンクであるヘリテージ財団の大口のスポンサーであり、ロバートの長女であるレベッカ・マーサーは同財団の理事を務めている。さらに、アメリカの保守系メディア監視団体、すなわちリベラル系メディアのファクトチェックなどを行う「メディア・リサーチ・センター(MRC)」や、地球温暖化否定のキャンペーンを張ったことでも知られる保守系シンクタンク「ハートランド研究所」、茶会運動の最大派閥であるパトリオッツと、アメリカのさまざまな右派系団体・シンクタンクに出資を行っている人物だ。

 そして、レベッカを通じて、オルトライト系陣営とも密接な繋がりを持っている。特に、トランプ勝利の推進力と言われたスティーブン・バノンが率いていたオルトライトメディア「ブライトバート」にも大口の出資を行うなどつながりが深く、一時期バノンはケンブリッジ・アナリティカの理事も務めていた。Facebookにおいてフェイクニュースが猛威を振るった背景には、こうした事情があったのは言うまでもない。

 ただ、「バノンのファーストレディ」とさえ言われたレベッカだが、バノンを見限ったようで、その後のバノンの凋落は周知のとおりである。

◆2010年に起きた反民主党キャンペーンでもマーサー

 今回のケンブリッジアナリティカの一件は、SNSなどを利用した巧妙なキャンペーンだったが、マーサー一族が「直接的に」扇動を行ったとされた件もある。

 それが、「グラウンド・ゼロ・モスク」キャンペーンだ。

 2010年、ニューヨークで大きな議論を巻き起こした問題がある。それは、穏健派のイスラム教グループによる、マンハッタン島南部への「イスラム・コミュニティ・センター・パーク51」建設計画がきっかけだった。これに反対する勢力が、「グラウンド・ゼロにモスク!」といった煽り文句で大々的にキャンペーンを行ったのだ。キャンペーンでは、民主党の下院議員が「グラウンド・ゼロにモスク計画に賛同している」としてやり玉に上げられた。ときに待ち伏せしていた身元不明の人間から挑発され、それに抗議をする姿をカメラに収められ、その姿を「議員が暴行」などとしてオルトライト系メディアで拡散されたりもしたという。

 この、狡猾かつ卑怯なキャンペーンに100万ドル出資したのがロバート・マーサーだったのだ。(参照:「POLITICO」)

<文/HBO編集部>