カキは「食中毒ガチャ」なのか 加熱しても「2次感染は否定できない」
カキは基本的に「食中毒ガチャ」です――。大阪市内の料理人を名乗るツイッターユーザーのそんなつぶやきが「リツイート」2万4000件の反響を呼んでいる。
このツイートが意味するものは何なのか。J-CASTニュースはユーザーに投稿の意図を取材するとともに、カキに詳しい関係者に見解をたずねた。
「一定の確率であたる」
2018年2月、三重県鳥羽市の飲食店で食べ放題の焼きガキなどを食べた旅行客ら36人が下痢や嘔吐などの症状を訴える事件があった。三重県はノロウイルスによる集団食中毒と断定し、同日付で営業禁止処分にしたと発表。いずれも焼きガキやカキご飯、カキフライなどを食べており、原因食品は調査中だという。
この事件を受けて、大阪市内ホテルで和洋中の幅広いジャンルを手がける料理人「たつ」さんは2月19日、ツイッターで「料理人として一言」と投稿。その上で
「どんなに徹底管理、検査しても、新鮮でも、加熱しても、一切関係なくカキとは常に『一定の確率であたる』食べ物なので食べるときは自己責任で。多少体調にも左右されますが、基本的には食中毒ガチャです」
と持論を展開した。過去には、厳しい衛生管理で知られる給食の現場(社員食堂)で働いていたという。
「食品にゼロリスクはありません」
そもそもカキで「あたる」原因には、どんな可能性があるのか。たつさんはツイッターで「加熱すればノロウイルスはほぼ大丈夫」と投稿していた。J-CASTニュースの取材には、加熱で防げない「あたる」原因を以下のように明かす。
「貝毒(プランクトンの摂取で体内に毒素を蓄積させる現象)」「無自覚の牡蠣アレルギー」「亜鉛の過剰摂取による体調不良」「ノロウイルス二次感染(調理器具からの感染)」...
その上で「安全なカキであっても、店舗の衛生管理次第で食中毒が出る可能性は否定できません。人からうつされたという実例もあるそうです」と主張した。
実際、農林水産省の畜水産安全管理課・水産安全室も「細菌系の食中毒は加熱でほぼ間違いなく防げますが、2次感染は否定できません」とコメント。
「ノロウイルスにかかっている人がいたり、調理者の横に置いてある生のカキから加熱後に感染したり、個人的にウイルスに耐えられるキャパシティが異なったり...」と2次感染の可能性を説明した。
一方、厚生労働省の食品安全企画課は「状況によるため、一概にこうとは言えない。食品にゼロリスクはありません」としていた。
「国の基準よりも厳しい」ものを...
消費者に少しでも安全なカキを届けたい――。卸売業者もそんな想いから、国の規制基準を超えた枠組みを設定している。
日本最大級のオイスターバーチェーン「ゼネラル・オイスター」(東京都中央区)の100%子会社である日本かきセンター(東京都中央区)では2014年、富山県入善町にカキの浄化センターを新たに設立。世界で初めて海洋深層水で浄化するシステムを構築した。
同センターの担当者は「国の基準よりも厳しい、自社の安心安全基準を設けています。海洋深層水で浄化することで、カキの栄養分を殺すこともなくなります」と話した。
「店舗側のみ悪く言われることも」
ツイートを投稿した理由について、たつさんは「『カキ食べ放題』がツイッターのトレンドに入り、職業柄やりきれない思いを感じました」と説明。その上で、
「ノロウイルスのみならず食中毒全般に対し、飲食業界は徹底した衛生管理や温度管理で対策を取っていますが、絶対はありません。そもそも無菌状態の食品など存在しません」
と強調した。
「客の体調などを考慮せず、店舗側のみ悪く言われることもあります。少しでも『それは違う』と伝えられれば」
最後にカキを食べる際に注意すべきことも教えてくれた。
「普通の食品よりもリスクがある食べ物であることを認識して、その上で体調を整える。生で食べる場合は特に」
「自分がカキアレルギーの可能性を疑う(何度食べても自分だけがお腹を壊す場合など)」
「もちろん食べすぎないこと(過剰摂取等のリスクを軽減できる)」
「生で食べるよりは加熱して食べること(ノロウイルスのリスクをほぼ0にできる)」
「衛生管理がしっかりしている、または信頼できる料理人がいる店を選ぶこと」