人工知能やロボットの登場で、米国ではすでにロボットに職を奪われる「テクノ失業」が社会問題になっているという。中国メディアの財新網はこのほど、「誰が米国人の仕事を奪ったのか?」と題する記事を掲載した。(イメージ写真提供:123RF)

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 人工知能やロボットの登場で、米国ではすでにロボットに職を奪われる「テクノ失業」が社会問題になっているという。中国メディアの財新網はこのほど、「誰が米国人の仕事を奪ったのか?」と題する記事を掲載した。

 記事は、米共和党の大統領候補であるドナルド・トランプ氏が、「メキシコ人や中国人、日本人に仕事を奪われた」と訴えていることを紹介。しかし、米国人の仕事が奪われた真の理由は「ロボット導入のため」であると主張し、ロボットの性能向上によって単純作業が人間から奪われたとしたほか、今後は自動運転技術によって多くの運転手が失業の危機にあると紹介。将来的には作家や編集、画家、作曲家など創造性を必要とする仕事も脅かされるようになっていくと予測した。

 雇用者にとっては、安上がりで休まず、ストライキも賃上げ要求もしないロボットは、人間よりも都合が良いのは当然だ。では、人類はロボットのために失業するしかないのだろうか。記事は過度に恐れる必要はないとし、3つの解決方法を示している。

 1つ目は「人口の移動」だ。米国では古くから存在する工業地域が衰退と同時に、別の地域では新しい産業が興った。例えば、シリコンバレーなどでは世界に名だたるIT系の新興企業が雇用を創出しており、人口が移動し、新しい場所に人が集まることで新しい仕事が生まれると主張した。

 2つ目の方法は、「社会保障の増加と職業訓練」だ。米国にある失業者向けの再訓練プログラムは効果的だと評価した。3つ目は「ワークスタイルを広げる」こと。シェアリング・エコノミー企業は、これまでのように「失業か就業か」ではなく、パートタイムやワーキングシェアで稼ぐ新しい働き方ができると提案した。

 記事は最後に、ロボットは人類の敵ではなく、問題は社会制度に適応力がないことにあると主張。問題解決のためには、ロボットや人工知能を制限するのではなく、社会福祉、戸籍制度、教育システムの完備に注意を向けるように勧めた。ロボット革命を推進している日本にとっても「テクノ失業」が生じるのは遠い未来の話ではなく、政府による失業対策のみならず、1人1人が労働市場における自らの競争力を高める努力が求められることになるだろう。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)