中谷美紀と水川あさみのドロドロ出版界愛憎ドラマ「ゴーストライター」今夜3話
火曜9時ドラマ「ゴーストライター」(フジテレビ系列)。中谷美紀が13年ぶりに連続ドラマの主役として帰ってきた。脚本は「僕の生きる道」「ブラザーズ」の橋部敦子。今夜、3話が放送される。
超ベストセラー作家・遠野リサ(中谷美紀)。彼女が出した小説は必ずミリオンセラーになり、実写映画はどれも大ヒットする。エッセイや講演でも引っ張りだこ。それでいて締め切りを一度も落としたことがない。リサはたった一握りの「成功した作家」だった。
満たされた完璧な日々を過ごしているように見えるリサ。けれど、彼女の作家生活には影が落ちつつあった。最新作の『エバーフレッシュ』の評判は「スランプ?」「かつてのキレがない」。リサ自身もそれもわかっているが、どうすることもできない。
家族との関係も破綻している。1人息子の大樹(高杉真宙)はリサを「遠野リサ」と呼び、ネットでのリサの悪評を読み上げて挑発する。認知症を患った母親は「あんたは私がいないとなんにもできないんだから」と繰り返す……。
そんなリサのところにやってきたアシスタント・川原由樹(水川あさみ)は小説家志望の冴えない女だ。地元の名古屋で就職、彼氏にプロポーズされ、「1年だけ」という条件で小説家を目指すために上京。さまざまな賞に投稿したが芽は出ず、そろそろ実家に戻ろうとしていた。
由樹の小説は、粗削りだが強い魅力を持つもの。由樹の小説を読んだ編集者は上司に「これを本にしたい」と掛け合うものの、「欲しいのはいい本じゃない。金になる本だ」と一蹴されてしまう。由樹はミーハー心と「小説家になる夢をきっぱり諦めさせてほしい」という思いから、リサのアシスタントとして働くようになる。
スランプのベストセラー作家と、芽の出ない小説家志望の女。2人は出会って「しまった」。
「ゴーストライター」は、リサが「堕ちていく」物語だ。売れっ子作家としての高いプライドと、自負を持つリサ。当然、「誰か他の人間に書かせる」なんて選択肢は思いもつかなかった。それが、じわじわと追い込まれ、泥沼にはまっていく。リサのモノローグからは、小説家・遠野リサの破滅が暗示されている。
「遠野リサはすべてを失った。世間はそう騒ぎたてた。でも……そもそも本当の私は、最初から何も持っていなかった」
「その時は気づいていなかった。いつでも引き返せると思っていた。罪が大きくなる前に引き返すつもりだった」
1話でリサを追い込んだのは大作家の追悼文。新聞広告として使われるほんの数百字の文章を、リサは書くことができない。そんなときに、由樹が(無意識の野望から)「追悼文案」を書いてきてしまった。それを使ってしまいそうになるリサ。けれど、すんでのところで自分で書くことができ、踏みとどまった。
2話でも不調は続く。リサは「書かせてみたらどうなるのだろう」という興味から、由樹に自身の連載小説『奏での果て』の続きのプロットを書かせる。「プロット」がなんなのかも知らない由樹。最初はボロボロだったが、リサのアドバイスを的確に受け止め、書き直していく。
スランプのみならず、日常生活もリサをひたすら追いつめる。反抗的な事件を起こす息子、徘徊する母……これまで一度も原稿を落としたことのなかった遠野リサが、連載小説を2本も落としてしまった。そして『奏での果て』までも落としてしまいそうなところで、リサは由樹のプロットに目を落とす。見違えるほどに完成度を上げたそのプロットに夢中になるリサ。そして、キーボードを叩き始めた……。
2話の段階ではまだ小説を書いているのはリサ自身。由樹も、リサに対して尊敬の気持ちを抱いている。けれども由樹は近い未来、リサに対してこのセリフを吐く。
「私がいなきゃ、なんにもできないくせに」
リサはどこまで堕ちていくのか? 由樹はどう変わっていくのか? 2人の関係はどうなってしまうのか? このジリジリ感が気持ちいい。
ちなみにこのドラマ、出てくる男はだいたいみんなクソだ。敏腕編集長の神崎雄司(田中哲司)はリサと身体の関係を持っているが、リサの才能を冷静に見きっていて、利用するだけ利用して枯渇したら捨てようとしている。由樹の婚約者の尾崎浩康(小柳友)は優しいが「由樹には才能がない、平凡な人間だ」と決めつけている。「あー、こういう人、いそう」と嫌な方向にリアリティがある。
嫌な方向のリアリティは他のところでも出ている。たとえば、新人賞を取って仕事を辞めてしまった新人作家に編集者が向ける「バカなの!?」の視線。ネット上に書かれる新作やイベントの反応、めちゃくちゃリアルなエゴサーチ描写。つらい!
クソったれな世界で進んでいく、女2人の泥沼な愛憎劇。今夜放送の3話では、昔のライバルも出現し、リサはますます追い込まれる。がんばれリサ! 負けるなリサ!
(青柳美帆子)
超ベストセラー作家・遠野リサ(中谷美紀)。彼女が出した小説は必ずミリオンセラーになり、実写映画はどれも大ヒットする。エッセイや講演でも引っ張りだこ。それでいて締め切りを一度も落としたことがない。リサはたった一握りの「成功した作家」だった。
満たされた完璧な日々を過ごしているように見えるリサ。けれど、彼女の作家生活には影が落ちつつあった。最新作の『エバーフレッシュ』の評判は「スランプ?」「かつてのキレがない」。リサ自身もそれもわかっているが、どうすることもできない。
家族との関係も破綻している。1人息子の大樹(高杉真宙)はリサを「遠野リサ」と呼び、ネットでのリサの悪評を読み上げて挑発する。認知症を患った母親は「あんたは私がいないとなんにもできないんだから」と繰り返す……。
そんなリサのところにやってきたアシスタント・川原由樹(水川あさみ)は小説家志望の冴えない女だ。地元の名古屋で就職、彼氏にプロポーズされ、「1年だけ」という条件で小説家を目指すために上京。さまざまな賞に投稿したが芽は出ず、そろそろ実家に戻ろうとしていた。
由樹の小説は、粗削りだが強い魅力を持つもの。由樹の小説を読んだ編集者は上司に「これを本にしたい」と掛け合うものの、「欲しいのはいい本じゃない。金になる本だ」と一蹴されてしまう。由樹はミーハー心と「小説家になる夢をきっぱり諦めさせてほしい」という思いから、リサのアシスタントとして働くようになる。
スランプのベストセラー作家と、芽の出ない小説家志望の女。2人は出会って「しまった」。
「遠野リサはすべてを失った。世間はそう騒ぎたてた。でも……そもそも本当の私は、最初から何も持っていなかった」
「その時は気づいていなかった。いつでも引き返せると思っていた。罪が大きくなる前に引き返すつもりだった」
1話でリサを追い込んだのは大作家の追悼文。新聞広告として使われるほんの数百字の文章を、リサは書くことができない。そんなときに、由樹が(無意識の野望から)「追悼文案」を書いてきてしまった。それを使ってしまいそうになるリサ。けれど、すんでのところで自分で書くことができ、踏みとどまった。
2話でも不調は続く。リサは「書かせてみたらどうなるのだろう」という興味から、由樹に自身の連載小説『奏での果て』の続きのプロットを書かせる。「プロット」がなんなのかも知らない由樹。最初はボロボロだったが、リサのアドバイスを的確に受け止め、書き直していく。
スランプのみならず、日常生活もリサをひたすら追いつめる。反抗的な事件を起こす息子、徘徊する母……これまで一度も原稿を落としたことのなかった遠野リサが、連載小説を2本も落としてしまった。そして『奏での果て』までも落としてしまいそうなところで、リサは由樹のプロットに目を落とす。見違えるほどに完成度を上げたそのプロットに夢中になるリサ。そして、キーボードを叩き始めた……。
2話の段階ではまだ小説を書いているのはリサ自身。由樹も、リサに対して尊敬の気持ちを抱いている。けれども由樹は近い未来、リサに対してこのセリフを吐く。
「私がいなきゃ、なんにもできないくせに」
リサはどこまで堕ちていくのか? 由樹はどう変わっていくのか? 2人の関係はどうなってしまうのか? このジリジリ感が気持ちいい。
ちなみにこのドラマ、出てくる男はだいたいみんなクソだ。敏腕編集長の神崎雄司(田中哲司)はリサと身体の関係を持っているが、リサの才能を冷静に見きっていて、利用するだけ利用して枯渇したら捨てようとしている。由樹の婚約者の尾崎浩康(小柳友)は優しいが「由樹には才能がない、平凡な人間だ」と決めつけている。「あー、こういう人、いそう」と嫌な方向にリアリティがある。
嫌な方向のリアリティは他のところでも出ている。たとえば、新人賞を取って仕事を辞めてしまった新人作家に編集者が向ける「バカなの!?」の視線。ネット上に書かれる新作やイベントの反応、めちゃくちゃリアルなエゴサーチ描写。つらい!
クソったれな世界で進んでいく、女2人の泥沼な愛憎劇。今夜放送の3話では、昔のライバルも出現し、リサはますます追い込まれる。がんばれリサ! 負けるなリサ!
(青柳美帆子)