養護教諭が13人、席次を争ってバトル。『第13保健室』は多すぎる養護教諭の中、真っ当な保健室を営もうとする南園若葉の物語。生徒が癒やされる場所って、一体どういうところが一番いいのだろう?

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小中高の一貫校、燕舞台学園。生徒数4000人のマンモス校。
この学校には13人の養護教諭が、保健室のランキングを競っている。
 
あおやぎ孝夫のマンガ『第13保健室』は、保健の先生だらけ。
年間を通して、生徒からどれだけ支持されたのかで、保健室の席次が決まります。
人気があれば第1保健室に。人気がなければ第12保健室に。

養護教諭たちは、あの手この手を使って生徒を呼び込みます。
例えば第3保健室のお嬢様養護教諭、三条成美。
彼女の保健室に入るのには、20分待ちの行列に並ばなければいけません。
メイドさんが生徒を誘導。テーブルがたくさん並ぶ、体育館級に広いフロアに、生徒が集います。
生演奏のカルテットを聞きながら紅茶が飲める、くつろぎの空間。
ベッドはヴィクトリア調。三ツ星の保健室です。

第4保健室の、モコちー(本名・西山知子)。アイドル養護教諭。
彼女の保健室は、ライブ会場に改造されています。
ファンの生徒は彼女の歌を聞き、声援を送ります。
時々大きなトレーラーで乗り込んで、ゲリラライブも行います。

第5保健室の麗奈。女王様養護教諭。
ベッドは鉄格子の中。椅子には拘束具。
ボンテージ衣装で出迎えてくれる彼女。手にはムチ。

はい! ぼくは第3がいいです!
あー、でも第6保健室の、競泳水着で元気ハツラツの鮫島先生も捨てがたい。

生徒の支持数の増減がはっきりするイベントのひとつが、身体検査。
各養護教諭が、自分のところに来てね、とポスターなどでPRします。
高校生にもなると推しメンならぬ推し養護教諭がいます。今までの各々のアピールが実を結ぶところ。
数値としては小学生を引き込む作戦が重要。スイーツ、遊具、きぐるみなどなど駆使します。
使えるものならなんでも使う。身体検査に来た人数は、デジタルカウンターでカウントされます。

1巻で登場するのは、まだ数人。
特に第1・第2のトップ養護教諭は一切登場していません。

主人公の南園若葉は、ランキングに参加するためなにか手段を講じようとしません。
真っ向からただ「養護教諭」であろうとします。
こうなると生徒たちはまあ、……面白い保健室に行くよね。
誰も彼女の12番保健室(最下位)に来ません。

このマンガは保健室を「生徒の心と身体を癒やす、そんな学園のオアシス」と言います。
でも「癒やす」ってなんだろうね?

アイドル養護教諭・モコちーのライブシーン。
生徒はサイリウムを持ち、モコちーに向けて力いっぱい、高く掲げます。
はちまきを巻き、はっぴを着て、彼女のライブを応援する生徒達。
熱気あふれるライブ会場=保健室は、ファンの生徒でびっしり。握手会も、大盛況です。
生徒「モコちー今日も最高だったよ!!」
モコちー「午後の授業も頑張ってねー!!」
彼女のライブを見に来ている生徒のほとんどが、動画で彼女のことを知って、本物の彼女に会いたくてやってきた、元不登校児です。

「これだけ大きな学園ですからね……色んな人がいるんですよ。教師にも、生徒に……保健室もね」
早乙女椿という養護教諭のセリフ。
彼女、あまりにだらしなくて、若葉が入ってきたことで第12保健室を追い出されました。
今は第12保健室の隅っこに「第13保健室」を作って過ごしています。

若葉「保健室は生徒の為にあるんです!! 私達の優越感の為じゃありません!!」
モコちー「ふーん、だからさ、生徒達が行かない保健室には……意味が無いってことじゃないかな?」

あおやぎ孝夫『第13保健室』

(たまごまご)