京都東山七条 京都国立博物館 国宝鳥獣戯画と高山寺
11月24日まで

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秋、そろそろ紅葉の季節です。京都は11月の見頃に向けて、観光客が続々訪れているもよう。
今年の京都旅行の楽しみのひとつに「鳥獣戯画」展は必須でしょう。
日本の漫画の原点とされる平安時代の作品で、兎や蛙が擬人化され、相撲をとったり弓を射ったり、コミカルな動きをしている絵が墨で描かれた絵巻物。
高畑勲監督の「かぐや姫の物語」のあの絵の感じも、元をただせば、この絵巻に当たるのではないでしょうか。

歴史ある鳥獣戯画が、4年もの長い間、修復作業されて、甲乙丙丁の4部作がすべて公開されるというビッグイベントとあって、京都国立博物館 明治古都館にて10月7日から開催され、連日、長蛇の列。
わたくし、三連休明けの平日の午後イチで行ったところ、70分待ちでした。
さんざん並んだ後に出会う「鳥獣戯画」の原画の数々は、印刷物で見るもの以上に、躍動感に溢れ、墨の濃淡や筆のタッチの強弱までこの目で確かめられ、心が沸き立ちます。

せっかくですから、めいっぱい楽しみたい。ここでは、「鳥獣戯画」展を楽しむための心得を書いてみたいと思います。

その1  長く並ぶのを覚悟しよう。

さきほども書きましたが、並びます。オープンしたての3連休などは2時間待ちだったとか。平日の午前中、9時30分の開館と同時に突入するのが狙い目のようですよ。
向いにあるハイアットリージェンシー京都に泊まったら、朝イチも楽々ですね。

Twitterの公式アカウントで @chojugiga_ten  混雑状況がわかるので、チェックしましょう。

その2  正確には「国宝 鳥獣戯画と高山寺」展であることを認識しておこう。

展示されているのは、鳥獣戯画だけではありません。展示は、全4章からなる構成で、4つの間に区切られ、その3室までは「高山寺」展です。
最初に会場に足を踏み入れると、期待した動物ではなく、お坊さんの絵が展示されていて、虚をつかれたのは私だけ? ちゃんと概要を調べていかなといけませんね。

とはいえ、高山寺は「鳥獣戯画」誕生の場で、鎌倉時代から続くその寺は、世界文化遺産にも選ばれているのです。寺を代表する明恵上人というお坊さんの、動物好きでひたむきな人柄などもわかる展示になっていて、その歴史の流れを見た後の「鳥獣戯画」。時間の流れを描いた絵巻ものを、右から左に移動しながら見ることで、観覧者自身が身体で時間の流れを体感できて、いっそうの感動です。

面白かったのは、消しゴムなどなかった時代、うっすら下絵を描いて、ホワイトでその線を修正しているのがちゃんと見えること。平安時代でも、修正の仕方は変わらないんだなあと親しみを感じました。

なんといっても、1000年前に描かれた肉筆が、今も見られることに感動します。印刷物やデータで残っているものよりも、実際、そこに人がいたんだ、と思えるのがすごい。
時間が経つと紙の劣化が起こるので、時折、大規模な修復が行われるそうで、その営みが続くことがすばらしいです。

今回、4年間かけて修復されたものが展示されています。修復によって発見された新事実も興味深いものでした。

その3   イヤホンガイドを借りるべし。

展示作品の解説を聞きながら、展示を見るためのアイテム・イヤホンガイドを
入り口で借りることができます(税込み520円)。
こちら、京都出身の俳優・佐々木蔵之介がナビゲーターを担当しています。

言葉の解説はなしで、自分の感性で楽しみたいと思う気持ちもわかりますが、ここで借りておくと、あとで役立ちます。
というのは、お目当ての「鳥獣戯画」は、ラストの4つめの部屋にあり、そして、そこの入るまでにすごく並ぶのです。そのとき、イヤホンガイドが活躍しますよ。

「70分待ち」とあったのは、正確には、「10分+(鳥獣戯画の間の前での)60分待ち」(入り口にちゃんと分けて書いてあります)。
「鳥獣戯画」の部屋の前に、待つ部屋がひと間あり、そこは、まるですごく混んでる空港の入国手続き場所のように蛇腹式に人が並びます。その間の壁には、鳥獣戯画が拡大されたものや、修復の仕方が描かれていますが、1時間、待つのは大儀です。ご老人が諦めて帰ってしまっていました。切ない!
さあ、そこで、イヤホンガイドです。待ち時間に聞けるボーナストラックがちゃんと用意されているんですよ。

よけいなお世話ですが、これ、待ち部屋でも借りられるようにしたら、かなりの人が後から借りたと思うのですが、商売っ気がないのか、入り口にしか置いていません。ここで、入り口へ借りに戻ったら、また並び直さないとならないし。うーん、悩ましい。
部屋が薄暗いので、本を読むこともできないし、ケータイも館内使用禁止なので、イヤホンガイドしか頼れるものはございませんよ。

その4   1回ではコンプリートできないことを覚悟しよう。

いよいよ最後の間。どーん!と待ちに待った「鳥獣戯画」が川の流れのように広がっています! よく見る兎と蛙のほか、麒麟や龍などの空想の動物の絵まで。象とか犬とか馬とかはじめて、見ました。一筆でさらさらと、しなやかな動きを描く、作家の高い才能に感動します。
ですが、これだけ待って、なんと、「鳥獣戯画」2部構成。前期は10月7日〜11月3日まで、後期は11月5日〜24日まで。甲乙丙丁、各々半分ずつ前半後半に分けて展示されるのでした。
もう1回来ないといけないのか・・・と、なんとなく腑に落ちない気分になりますが、4年もかけて行った修復作業がよっぽどお金かかってしまったのでしょうか。だったら、待ちの間にもイヤホンガイドを置けば・・・(しつこい)。

とまあ、このように、この展覧会、一部、言葉にからくりがありますので、要注意です。いや、もちろん、最初に書いたように、見れば、圧倒されるのは事実ですが。

その5  グッズで散財に要注意。

今回の展示、テーマカラーがパステルカラーのピンクとブルーと、キュート。サンリオのキキララの初期バージョンみたいな色です。

まず、装丁に凝った図録、2600円(税込)が圧巻。
これには鳥獣戯画全作品が掲載されているので、2回も京都に行けないよ、11月なんて紅葉シーズンで宿もとれないし、という方はこちらで我慢?

そのほか、中面をずらっと並べると鳥獣戯画の絵巻図になる楽しいトランプ1500円(税込)が評判いいようです。

ほか、八つ橋、そばの実の金平糖、小さな御饅頭、コーヒー、湯のみ茶碗、
マグネット、絵はがき、何枚あっても便利なクリアファイルなど、いろいろ。

佐々木蔵之介の実家・京都老舗の佐々木酒造の吟醸酒と大吟醸酒の2種類が、
鳥獣戯画の特別ラベルで販売されていることにも注目です。

その6 隣の館での「京へのいざない」も見逃すな。

鳥獣戯画展のチケットで隣の平成知新館(新館)も展示も見ることができます。こちらは、9月13日にオープンしたばかり。館内では、京都の各所に所蔵されている、彫刻、絵画、書、工芸など、様々な名品が1〜3階までずらっと展示されています。でかい仏像など見どころあります。
あと、仏像に眼を入れる体験コーナーなどもやっています。
私の入れた眼はなかなかいい顔に仕上がり、満足満足。
さらに時間があれば、向いの三十三間堂に寄るのも良し。

以上、そんな感じで、抜かりなく、京都国立博物館を楽しみ尽くしてくださいね。
あと、さりげなく注目したいのは、LEDよりも寿命が長い照明・有機ELが使用されていること。これは10月に発表されたばかりの新しい照明。未来の光の技術が、過去の絵画を照らします。

鳥獣戯画展公式サイト

(木俣冬)