聖望学園vs慶應義塾

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決定打が出ない中、どう戦うか? 

原田匠(慶應義塾)

  2014年春季関東大会が開幕。開幕戦は慶應義塾と聖望学園が対戦した。試合は『我慢の試合』といっていい展開で進んだ。慶應義塾、聖望学園ともに初回から走者を出すが、決定打が出ない。両校にとって消化が悪い試合内容である。

 先制したのは聖望学園。内野安打2本、四球で一死満塁のチャンスを作り、1番菊池 倫徳(3年)が三ゴロ。まず三塁手の柳町が三塁を踏んで、二死。そして次に本塁へ投げたが、これがセーフとなり、1点を先制する。

 この場面、ホームゲッツー、あるいは三塁を踏んで一塁へ投げて併殺を狙う手段もあったが、近いところに目が行ってしまったのだろう。三塁手がまず目についたのは三塁ベース。次に目についたのは本塁をむかう三塁走者。0対0の緊迫した場面で、三塁走者をアウトにすれば、チェンジなので、本塁へ投げるのも無理がない。ただ満塁になった時、内野へ打球が飛んだ際にどのようにしてアウトにするのかを事前に確認ができていれば、慌てることなく、併殺に出来たのかもしれない。無意識にやってしまうのが一番怖い。その怖さを実感させられるワンシーンだった。

 その後も試合は走者を出すものの、決定打が出ない展開に。慶應義塾のエース・原田 匠(3年)は常時135キロ前後の直球、120キロ前後のキレのあるスライダーを外中心にコントロール良く投げる投球で、聖望学園打線に抑え込んでいく。

 聖望学園の先発・中村 碧聖(3年)も右スリークォーターから130キロ近い速球、スライダー、球速が遅いカーブを投げ分ける投球。この試合、多投したのが遅いカーブ。一本調子で向かっていってはやはり危険と判断したのか、遅い球で打ち気を逸らしていた。芯に食えば、スタンドインさせる長打力を持つ慶應義塾打線だが、遅い球に本来の打撃が狂わせられたのか。単打は出ていても、なかなかジャストミートすることが出来ずに点を奪うことができなかった。 

 

3点目の適時打を放った田島匠(聖望学園)

 こうして、試合は9回表に入り、聖望学園は二死一、三塁から3番大野 泰樹(3年)のライトへポテンヒットを放ち、2対0と貴重な1点を追加すると、さらに4番田島 匠(2年)も右前適時打で続き、3対0とする。

 投げては4回無死からリリーフする松本 龍尭(2年)が走者を出しながらも粘り強く抑えるピッチング。9回裏も走者を出したが、最後は4番名幸 大成(3年)を高めの釣り球で見逃し三振に打ち取り、試合終了。初戦突破を決めた。

 聖望学園は中々決定打が出なかったが、9回表に3番大野、4番田島の主軸2人が追加点を挙げるタイムリーヒットを放ちチームに勢いをつけた。また守っても再三、走者を背負う場面を我慢強く抑えた。関東大会という舞台での『我慢の試合』。チームとしては勝ち方が一つ増えた試合になった。

慶應義塾は三者凡退は7回裏のみと毎回走者を出したが、あと1本が出なかった。

 走者を出しても、なかなか1本が出ず、フラストレーションが溜まる試合展開というのは当然あるものだ。ただそこからそのチームの戦略性が問われる。そこで点を取って勝てるチームは優勝を狙えるチームであり、強いチームになるための一つの条件とも言っても良い。そういう意味で慶應義塾は聖望学園の隙を突くような攻撃は出来ずに終わった。

 夏は独特の雰囲気のなかで戦うものなので、今日のような試合展開は当然、考えられる。自分たちの野球が思うようにできない中で、どのようにして戦略を立てて1点をもぎ取りにいく野球が出来るかを注目していきたい。