履正社vs大冠 大苦戦から一夜明けた準決勝!選手、指揮官の胸中!!
5回2安打無失点の永谷暢章(履正社)
前日の準々決勝(東大阪大柏原戦)で、6点リードを終盤に追いつかれ、大苦戦をした履正社。岡田龍生監督は試合後、「あまりにも腹が立ったので、(選手を)無視して帰りました」とミーティングを行わなかったそうだ。
選手からも、「あんな岡田先生の様子は見たことがない」という声が聞かれたほど。一夜明けての準決勝は、チームとしても、大きなポイントとなる試合だった。
1回表から気合いを入れて大冠に襲いかかる。相手のミス絡みで先制すると、その裏にマウンドで躍動したのがエースナンバーをつける永谷 暢章(2年)。『打てるものなら打ってみろ』と言わんばかりの直球に、変化球を組み合わせたピッチングで大冠打線を打ち取っていった。
「昨日(準々決勝)はキャッチボールもしてないまま、リリーフのマウンドにあがって、9回に4失点してしまった。今日も昨日みたいなピッチングをしてしまうと、大阪の全部の高校に、永谷やったら打てるという印象を与えてしまうと思う。今日は、永谷が出てきたら絶対に打てないという印象を与えるピッチングをしたかった」と強い気持ちだったことを永谷は明かした。
結局、5回コールドゲームでの完封で、被安打2。三振も8つ奪い、「今日は球がきていたと思います」と指揮官も連投で送りだした期待に応えてくれたことを讃えた。
攻撃では、3回に4番吉田 有輝(3年)に3ランが飛び出すなど、大冠のエース左腕・下薗勇介(3年)を攻略。4回途中からマウンドに上がった2年生右腕の吉田 大喜も打ち崩した。
金岡洋平主将(履正社)
もう一つ、際立ったのがベンチワークだ。 2回の攻撃で、6番ファーストの絹田 翔太(3年)が死球を受けてベンチに下がった。 代わりのファースト・三浦 和磨(3年)はこの時、一塁ランナーコーチを務めていたが、主将の金岡 洋平(3年)がすぐに駆けよって、役目を交代。三浦は、次のイニングからの守備に就く準備をするために、速やかにキャッチボールを開始した。
さらに役目を代わった金岡の走者に対する掛け声も見事に的をえていた。 永谷が二塁走者としていた際の指示、「三遊間(の打球)は抜けてからスタートやぞ。ライナーゲッツーには気をつけろ」と声をかける。すると打球はその三遊間を破った。永谷は指示通り、抜けるのを見てからスタートし、三塁に達した。
展開、打者と走者の特徴、相手守備の分析などができていたことを窺わせる場面だった。
苦しんだ準々決勝から、しっかりと気持ちを入れ直すことができた準決勝を5回コールドゲームで終えた。「(選手は)まだ子供なので、経験が慢心になったり気が抜けたりすることもある。反省がどれだけ次に生きるか。苦しんだ次のゲームと言うのは、チームとしてすごく大事」と話した岡田監督。この日も指揮官は、あえて試合直後にミーティングをせずに球場を後にした。
その姿を見送った後、エースナンバーの永谷は最後に言った。「岡田先生が納得した顔をした時の野球が出来た時は、僕らも気持ちが良いんです」。
(文=松倉 雄太)