とまらない 三浦知良著 新潮新書
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書評とまらない 三浦知良著
47歳にしてなお現役でピッチを駆けるキングカズこと三浦知良選手の著書。15歳でブラジルに渡り、プロとして29年目になるという今シーズンも、いつもと同じように準備を怠らず、自分に厳しく、そしてサッカーを楽しんでいるその姿は、プロアスリートとしての自覚と向上心がなせるわざではないかと思わせられます。同書は日経新聞に掲載されていたコラムをまとめたものですが、非常に読みやすく、そしてカズ選手の経験を通して語られる言葉はさまざまなことを考えさせられます。
「刺激は疲労を上回る」。趣旨に賛同した慈善試合に出場することを決めたときのこと。長時間の移動や環境の違うところでのプレーは体にひずみをうみ、自チームでのスタメンすらも危うくなるリスクを背負いつつ、「挑戦から得る刺激は疲労を上回る。次に必ず活かせる」と決断してプレーするカズ選手。遠征の多い中でもこうして何事も前向きにとらえてチャレンジする姿は、言い訳なし!の潔さとともに、ある種の覚悟がうかがえます。年齢を重ねるにつれてフィジカル面での不安も大きくなると思うのですが、その不安を解消するだけの準備を怠らないのです。
またこの本の中で痛みやケガについてもカズ選手の考え方が述べられています。「休めばいつものルーティンは途切れる。(中略)やるべきことをやると決め、やりながら鍛え、痛みが去るのを待つ」(P110より引用)。トレーナーとしては何としてもストップをかけたくなるところですが、「休むより、やることで『やれる』という自信に変える」(P111)というカズ選手の強さに脱帽です。ただし「ケガをおしてプレーをして悪化させたこともある」そうなので、どこまでできて、どこからはやめておいた方がいいのかという判断は、あくまでも自分の体と相談しながらすすめてくださいね。
こうして読み進めていくと、「だから年齢に関係なく、毎年進化してプレーをすることができるのか」と驚かされることばかりです。肉体は衰えていくかもしれないけれど、経験は積み重なり、考え方は進歩する。スポーツに携わる皆さんにとって、心のフックにひっかかる言葉が見つかるのではないでしょうか。
(書評:西村 典子)