〈40度超でも休めない〉「コンビニに寄るだけで苦情」「日陰で休むとサボり」ごみ収集員を追い詰める“周囲の目”

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全国各地で40度を超える危険な暑さが続くなか、市民生活を支えるごみ収集の現場では、熱中症との闘いが続いている。事業者に熱中症対策を義務づける制度整備が進む一方で、作業員の間では、水分補給や休憩が「サボっている」と市民に誤解され、苦情につながることへの懸念が現場から報告されている。命を守るために欠かせない熱中症対策を、現場はどのように講じているのか。

【画像】これすらも「サボり」!? ごみ収集員がコンビニに立ち寄れない切実な事情

「ごみの臭いを服の中に巻き込んでしまうのではないか」

気象庁は2026年4月、最高気温40度以上の日の名称を「酷暑日」と定めた。7月20日ごろの梅雨明け以降、日本列島は記録的な暑さに見舞われ、静岡県浜松市天竜区佐久間で41.1度、三重県桑名市や愛知県豊田市でも40度を超える気温を観測。

東京都内でも最高気温35度以上の猛暑日が連日のように続き、熱中症警戒アラートの発表が相次いでいる。

こうした猛暑のなかでも、家庭ごみなどの収集・運搬業務を休むわけにはいかない。東京23区内のある区の清掃担当職員は、その過酷な現場をこう語る。

「ウチは区の職員がごみ収集車の作業員として区内を巡回し、ごみの収集に日々あたっています。毎年必ずと言っていいほど体調を崩す人が出ており、『めまいがする』といった訴えから、病院へ搬送されるケースもありました」

衛生面やケガ防止の観点から、夏場でも長袖・長ズボンでの作業が基本となるが、さすがに体にこたえる。

休憩環境の整備が進む一方、「サボり」と誤解されることへの不安も

こうした課題に対応するため、自治体では、休憩場所の確保や装備の充実など、さまざまな熱中症対策が進められている。

環境省が2024年9月に公表した「ごみ処理作業時等における熱中症対策事例集」は、全国の自治体における熱中症対策の実態をまとめたものだ。

それによると、冷房設備や日陰など涼しい休憩場所を確保している自治体は9割に上る一方、収集ルートの途中で必要に応じて公共施設などを休憩場所として確保している自治体は約2割にとどまった。収集作業の途中に気軽に立ち寄れる休憩場所は、まだ十分に整っているとは言いがたい。

同事例集では、匿名の「F市」が収集車ごとに公共トイレマップを備え付けている事例も紹介されている。コンビニエンスストアなどのトイレを利用すると、収集員が「勤務中に買い物をしている」と市民から誤解され、そのことを気にして水分補給をためらう可能性があるためだという。

また、東京都大田区では昨年度(令和7年度)から、ごみ収集作業員を対象に空調服(ファン付き作業着)の導入を始めた。

区のごみ減量推進課の担当者は、その経緯をこう説明する。

「例年一定数の職員が体調を崩しておりましたし、何より現場の作業員側から『熱中症対策を講じてほしい』という強い要望がありました。建設現場などでも普及している空調服をごみ収集の現場にも導入することを決め、東京都の補助金を活用して本体やバッテリーを整備しました」

導入前には、「ごみの臭いが服の中にこもるのではないか」と懸念する職員もいたというが、運用を始めると、臭いに関する懸念は大きな問題にはならなかった一方、着用感や効果については職員の間で評価が分かれた。

外気の熱風が服の中を循環することに違和感を覚える職員がいる一方、収集場所から次の集積所へ向かう車内ではエアコンの冷気が空調服の中を巡り、「体感がかなり違う」「体の熱がこもりにくい」と効果を実感する声も上がった。今年度は希望者への追加配布も進められている。

また大田区では、深部体温の上昇を検知してアラームで知らせるウェアラブル端末を導入したほか、区内の福祉施設や出張所を「クールスポット」に指定。

体調がすぐれない場合には途中で立ち寄って休める体制も整えている。こうした取り組みもあり、大田区では今年度の猛暑による体調不良者を4~5件程度に抑えられているという。

「休憩はサボりではない」だけでは解決しない

23区内のある区の担当者は、現場に寄せられる声についてこう明かす。

「ごみ収集の現場からは『日陰で休んでいるとサボっているように見られる』『収集が遅い』といった苦情やご指摘を受けるケースがある。

そうした市民からの誤解を防ぐため、区の公式ホームページ等において『作業中に直射日光を避けて日陰で休憩することがあるため、熱中症予防のためご理解ください』といった趣旨の周知・発信を行っております」

このように、作業員の休憩や水分補給への理解を求める自治体がある一方、行政の発信と現場の実際の運用にずれが生じた例もある。

東京都東久留米市は、ごみ収集の事業者から「熱中症対策として休憩を取ることへの理解を市民に呼びかけてほしい」と相談を受け、市ホームページに理解を求めるお知らせを掲載した。

しかし、その後、委託事業者から「実際の運用と異なる内容がある」と指摘があり、掲載内容を見直し、市は、お知らせを取り下げた。

ごみ対策課業務係の担当者はこう説明する。

「お知らせに『作業員がコンビニエンスストアで停車して休憩する場合がある』と記載しました。しかし実態としては、収集車用の駐車場やエアコン付きの休憩室がある中間処理施設へ戻って休憩を取っており、コンビニで休憩する運用にはなっていなかったのです」

市はサングラスの着用についても、熱中症対策の一例として紹介していたが、実際にはほとんど着用しておらず、作業上の懸念もあるとの意見が寄せられたという。

都内のごみ収集事業の関係者は、今回の行き違いについて私見をいう。

「市民からの『サボり』『悪印象』というクレームを完璧に防ぐため、現場事業者がコンビニ利用やサングラス着用を自粛するような形で控えて拠点へ戻る運用を徹底していたことで、市側の配慮が結果として現場の実情と乖離してしまった格好だと思います」

ごみ収集員がこまめに水分を補給し、必要に応じて日陰や車内で体を休めることは、熱中症を防ぎ、ごみ収集を続けるために欠かせない。

必要なのは、「休憩はサボりではない」と市民に理解を求めることだけではない。作業員が周囲の目を気にせず休める場所や運用を整え、その実態を行政、事業者、市民の間で正確に共有することだ。

猛暑が日常化するなか、働き続けるためにきちんと休める仕組みが、これまで以上に求められている。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班