―石破政権のカラータイマー点滅、総選挙後の荒野を行く中低位の好実態株に刮目せよ―

 週末25日の東京株式市場は下値模索の動きに終始した。日経平均株価はフシ目の3万8000円台をあっさり下回り、下げ幅は一時400円を超える場面もあった。直近では先物主導で海外ファンド筋とみられる売りが全体相場を押し下げている。日本の政治が今危殆に瀕しているとの認識が、株式市場からのグローバルマネー退避につながっている。

 27日に行われる衆議院選挙では自民・公明の連立与党の苦戦が伝えられている。自民党の議席数単独過半数割れはおろか、自公合わせても233議席確保が怪しいという状況が報じられ、株式市場でもポジション調整の売り圧力が拭えない状況となった。国内の政局不安がここまで株式市場に影響を与えたのは久し振りといってもよい。現在、世界的にみれば欧米をはじめ金融緩和局面にあり、経済減速への懸念を利下げで打ち消すという金融政策面からの対応が可能だ。しかし、日本の場合は遅かれ早かれ日銀が利上げに動くことが濃厚視されており、株式市場にとっては政治と金融両面からの向かい風を意識せざるを得ない環境に晒されている。

●11日連続陰線でにわかに警戒モード

 そうしたなか、今週は日経平均の「日足陰線」が記録的に続いたことが話題となった。23日まで11営業日連続陰線を示現、これは2012年4月から5月にかけて13営業日連続陰線をつけて以来約12年半ぶりとなるネガティブ現象であった。24日にはようやく陽線をつけたものの、それで吹っ切れたということはなく、25日には再び売り直され3万7000円台後半まで水準を切り下げている。

 日足チャートで陰線をつけるということは、その日の日経平均の高安に関係なく、始値を終値が下回った状態を意味する。つまり、取引終了時間までに保有株を売却したいという思惑が強まれば、後場に売り注文を出すという投資行動が促され、それが結果的に株価の下げトレンドを助長することになる。11営業日連続で陰線を形成したということは、それだけ保有株をキャッシュ化するニーズが強いことを意味し、日本株の先行き警戒感が取り沙汰されることになった。

●引き続き株式はリスクアセットの中軸を担う

 これから3月期決算企業の決算発表が本格化していくことになる。総じて増額修正に動く企業が多いという見立てだが、東京市場はその期待を先食いしてしまっている部分もあり、為替の円安進行にもかかわらず慎重なムードが漂う。全体指数への寄与度が高い半導体セクターの株価不振も投資家の疑心暗鬼を増幅させているようだ。ただし、大勢トレンドが下降トレンド転換していると判断するのは早計である。

 米国では前週末18日までNYダウが史上最高値更新基調を続けていた。また、機関投資家がベンチマークとして重視するS&P500指数も前週末時点で最高値をつけた。米国だけではない。欧州でも前週末にドイツの主要株価指数であるDAXが史上最高値を更新している。株式はむしろリスクアセットとしてグローバルマネーフローの中心軸に堂々と位置しているのだ。そのなか、いうまでもなく日本株は出遅れ感が非常に強く、企業のファンダメンタルズ面を考慮すれば株価見直し余地が大きい。ここは買い場である。

●半導体株や銀行株は宴の後始末がしばらく続く

 東京市場で足もとリスク回避の相場環境を作り出しているのは、来週以降の相場に対する不安心理にほかならない。具体的には選挙後の政局不透明感を警戒しているのだが、それは漠とした不安材料でもある。懸念されるビッグイベントを通過する直前、それは最も暗い夜明け前の闇である。総選挙で仮に与党が大敗したとしても、日本株が総売り状態になるほど国内政治が企業収益の成長を左右するのかと言えば、答えはノーだ。足もとリスクオフの波に揉まれバランスを失ってしまっているが、実はかなりの部分が空売りによって株価の下げ圧力が演出されているという実態も理解しておきたい。