中川安奈アナ(本人のInstagramより)

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 この夏、毎日のようにネットを騒がせた女子アナ関連の報道。なぜ女子アナはここまで嫌われる職業になってしまったのか――ライターの冨士海ネコ氏が分析する。

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【写真12枚】中川安奈アナの「何も着てない」疑惑の一枚 Instagramには“体のラインくっきり”な「ぴたぴたニット姿」が大量に投稿されていた

 この夏、連日のように炎上していたのは迷惑系YouTuberではなく女子アナではなかったか。パリ五輪での衣装が物議を醸したNHK中川安奈アナ、男性の体臭に苦言を呈したフリーの川口ゆりアナ、病気療養中かと思いきやパリでの五輪観戦が話題になったフジテレビの渡邊渚アナ(先月末で退社)、さらに夫の不倫騒動で注目を浴びた元日テレ・笹崎里菜アナなど、毎日のように女子アナたちがネットニュースの主役となった。

中川安奈アナ(本人のInstagramより)

 そして先日はテレビ東京の池谷実悠アナの退社発表が話題になった。アイドル顔負けの美貌で評価は高かったが、ひと足先に退社した森香澄アナとの「悪口音声」の当事者とうわさされており、冷たい目で見ている視聴者もいるよう。退社の理由は「自分の興味関心があることをより深く専門的に学ぶ為」としているものの、かつてアイドルグループのオーディションに参加していたという過去もあって、タレント転身かとみる向きもある。

 今年2月に大谷翔平選手が結婚を発表した時、「女子アナじゃなくて(よかった)」という言葉がSNSでトレンド入りしたが、なぜ「女子アナ」はここまで嫌われてしまったのだろうか。それは彼女たちの奔放な言動によるところが大きいにせよ、昔に比べて視聴者にとって「推しがい」のない存在になったからではないか。

インフルエンサー養成所と化したテレビ局 局も女子アナもアナウンス技術よりフォロワー対策を優先?

 女子アナ30歳定年説、という言葉があるが、今の女子アナは30歳まで待たずにフリーになる。2022年には久慈暁子さんが27歳でフジテレビを退社。2023年には山本里菜さんが29歳でTBSを、森香澄さんが27歳でテレビ東京を退社。全員フリーに転身しつつも、アナウンサーという仕事よりはインフルエンサー的なポジショニングが目立つ。

 というか今や、テレビのアナウンサー職はインフルエンサー養成所なのだろう。アナウンス技術はそこそこでよいとされ、SNS受けする振る舞いでフォロワーをいかに獲得するかに当事者たちの意識は向けられている。どうせすぐ退社するのだから、割り切って会社や番組の広告塔になってもらえばいいというテレビ局の思惑と、アナウンサーでいるうちに全国に自分のファンを作りたいという女子アナの利害は一致している。

 けれどもそこに、テレビの視聴者を意識する目はあまり感じられない。主戦場はテレビでなくインスタやTikTok。レギュラー番組でコツコツと好感度を稼ぐのではなく、短期でガツンと注目を浴びたいからこそ、炎上もいとわない。まさに川口さんや渡邊さんはSNSの使い方でバッシングされてしまったが、川口さんはチャンスと捉えてさまざまな媒体からの取材に答えたり、なかなかに強(したた)かな立ち回りを見せている。

 そうした「インフルエンサーデビュー」を見据えたキャラは、テレビの視聴者を置き去りにしてしまっているのではないだろうか。せっかく番組を見て応援していたのに、こんな人なの?と肩透かしを食らったような気になる人は少なくないように思う。

独立心旺盛だけどかわいげがない? 大御所の色ではなく自分の色は自分で決めるという世代

 今回話題になった女子アナたちは、いわゆるゆとり・さとり世代。合理的で能力が高く、自己実現を重んじ組織への帰属意識が希薄な世代とされる。確かに、みな組織人というよりは自分のカラーを出すことに重きを置いている人たちだ。体のラインが出る服装を好む中川アナや、かたくなに自分の病名は明かさない渡邊アナなど、世間がどう受け取るかよりも自分の信念を貫くことを大事にしたいという思いがうかがえる。

 それからもう一つ、ここ数年でフリーになるゆとり世代の女子アナは、特定の芸能人の色がついていないのも特徴である。

 一世代前は、バラエティーで組んでいた芸人MCの「お気に入り」としてスターダムにのし上がった女子アナがフリーになったもの。けれども久慈さんにしろ森さんにしろ渡邊さんにしろ、かわいさは有名だったが特定の芸人の色はない。久慈さんなら明石家さんまさん、森さんなら千鳥、渡邊さんなら「ぽかぽか」のハライチとの共演が思い浮かぶが、彼らの「お気に入り」と言い切るのはちょっと違う気がする。

 でもそれは、彼女たちのあえての戦略なのかもしれない。フリー転身したときに、余計な色眼鏡は無しに見てほしいという、自信と旺盛な独立心の表れではないか。本当の私は芸人とのやり取りなんかではなく、SNSで分かるようにしてありますので、という主張。自分の道は自分で切り開くという姿勢はカッコいい。でも裏返せば、組織になじもうとしないかわいげのなさという欠点にも映りやすい。

 9月末にテレ東を退社する池谷アナも、自社の番組をあまりにも観ていないと出川哲朗さんからツッコまれていたことがある。また先輩の松丸友紀アナからも、あいさつを無視するとチクリとやられていた。とはいえ、そうした不遜(ふそん)な振る舞いは、「伊集院光&佐久間宣行の勝手にテレ東批評」で面白がられ、同期入社の中で最も後れを取っていたかに見えた池谷アナの認知度を急上昇させた。佐久間プロデューサーといえばテレビ朝日の弘中綾香アナや森香澄さんなど、「勘違いしている」と言われがちな女子アナの通訳が上手なことで有名。特定の芸人の色はつけたくない女子アナも、無色の佐久間さんには寄っていくというのもまた、自分の色は自分で決めたいという世代の特徴が出ているように思う。

 テレビにも大御所タレントにも視聴者にも思い入れがなく、自分の道を切り開くことに熱心に見える女子アナたち。将来はAI、自動音声に取って代わられるというリスクもあるからこそ、自分のカラーをテレビ以外の場でも出していく、という傾向は加速していくことだろう。もしかすると女子アナという言葉は数年後には消え、局専属インフルエンサーという職業名に変わっていくのかもしれない。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部