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クリテオは、現CEOメーガン・クラーケン氏が1年以内に退任し、同氏の後継者を育成することを併せて発表した。

プライバシー要求の高まりに応じて、広告リターゲティング企業からコマースメディア企業への転換を図っている。

リテールメディア分野の強化を進めるため、M&Aを積極的に行っている。


アドテク企業のクリテオ(Criteo)が、CEOの「後継者育成」を開始すると発表した。現CEOのメーガン・クラーケン氏が取締役会で1年以内に退任すると伝えたためだ。

現在、クリテオは重要な時期にある。プライバシーへの要求が高まるなか、広告リターゲティングから「コマースメディア」への転換を進めているためだ。

クラーケン氏は後継者が決まるまでCEOを続けることになっており、1年以内に新CEOが就任する予定だ。また、同氏は退任後も上級顧問としてクリテオにとどまり、移行の完了を見届けることになっている。

プレスリリースによれば、クリテオはハイドリック&ストラグルズ(Heidrick & Struggles)に後継者探しを依頼した。クリテオの取締役を務めるレイチェル・ピカード氏は、クラーケン氏は「この5年間、クリテオに多大な貢献」をしてきたと述べている。

M&Aと研究投資の5年間



クラーケン氏は2019年11月、クリテオのCEOに就任した。当時、AppleやGoogleといった大手インターネットプラットフォームがブラウザにおけるサードパーティCookieなどの技術の使用を見直し始め、上場アドテク企業としてのクリテオは試練のときを迎えていた。

大手インターネットプラットフォームのこうした動きは、GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(米カリフォルニア州消費者プライバシー法)などの法律が制定され、プライバシーへの要求が高まったことによる必然だった。

その結果(株価の下落もあり)、クリテオは広告リターゲティングから、より広範な広告テクノロジー、ソリューションへと焦点を移した。これはクラーケン氏の任期を特徴づける出来事だ。当時、クラーケン氏はDIGIDAYの取材に対し、クリテオを「オープンインターネットのための(独立系)アドテク企業」にするという野望を語っていた

以来、クリテオはリテールメディア事業を強化するため、いくつかの重要な買収を行ってきた。もっとも注目すべき買収は、2021年12月に約3億8000万ドル(約556億円)で買収したアドテク大手アイポンウェブ(IPONWEB)だ。現金と自己株式で行ったこの買収は、クリテオのメディア取引能力を高め、サードパーティCookie後の広告業界でより良い地位を確立するための戦略的な動きだった。

さらに、クリテオは2022年に英国ロンドンのリテールメディアプラットフォーム、マバヤ(Mabaya)を買収し(金銭的な条件は不明)、2023年にはブランドクラッシュ(BrandCrush)を買収して事業を拡大した。

さらに最近、複数の情報筋がDIGIDAYに語ったところによれば、クリテオはリテールメディア分野での存在感を増すため、かつてケンショー(Kenshoo)として知られていたスカイ(Skai)とM&Aの交渉を行っているようだ。その価格は5億ドル(約732億円)以上になるという見方もある。

また、クラーケン氏の任期は、プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)の研究に多額を投じてきたことでも特徴づけられる。GoogleがChromeブラウザでサードパーティCookieを段階的に廃止すると決定し、オープンインターネットが「オープンなインターネット」として維持されるかどうかの危機を迎えたためだ。最近では、この重要な決定そのものが疑わしくなっている。

クリテオ自身が買収される可能性も?



クラーケン氏の在任中、M&Aの臆測はすべて一方向だったわけではないが、独立系アドテク企業の統合が進むなか、クリテオ自身も売却を検討するのではないかという見方がある。

しかし、クリテオの広報チームが流している気配は、そのような臆測を示唆するものではなく、クラーケン氏の退任発表に関連している。クラーケン氏は公式声明で、「我々は一丸となり、業界の複雑な課題を克服し、差別化された能力をつくり上げることで、この会社を変革してきた」と述べている。

「取締役会と緊密に連携し、引き継ぎをシームレスに行いながら、これからも全力でクリテオを率いていきたい」。

[原文:Criteo seeks new chief executive after Megan Clarken announces pending exit]

Ronan Shields(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:戸田美子)
Image via Criteo