ついに甲子園開幕!

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 8月7日に開幕する夏の甲子園。今春の選抜を制した健大高崎(群馬)、準優勝校の報徳学園(兵庫)が出場を決め、さらに花咲徳栄(埼玉)、東海大相模(神奈川)、大阪桐蔭(大阪)、智弁和歌山(和歌山)など、近年夏の甲子園で優勝を果たしている学校も多く出場しており、優勝争いは混戦模様だ。その中で勝ち進み、優勝を決めるのは、どのチームになるのか。地方大会の戦いぶりや過去の傾向から予想してみたい。【西尾典文/野球ライター】

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優勝の最有力候補は…?

 当然ではあるが、優勝予想に大きく影響するのが、組み合わせである。夏の甲子園は、49の代表校で行われるため、1回戦から登場するチームと2回戦から登場するチームに分かれる。

ついに甲子園開幕!

 2021年以降の過去3回の大会では、いずれも2回戦から登場するチームが優勝を果たしている。ここ数年の暑さは以前とは比べ物にならない。優勝まで1試合少ないか、否か。これは非常に大きい。

 2022年、東北勢として初優勝を果たした仙台育英(宮城)の須江航監督に大会後、話を聞いた時も、2回戦からの登場で、かつ準決勝までが比較的気温が低い第1試合に組み込まれていたことが、選手のコンディション調整で有利に働いたと語っていた。

 今大会期間中の天気予報を見ると、もちろん猛暑が予想され、選手の負担は極めて大きくなる。今大会から暑さ対策として「午前と夕方の二部制」が導入されたが、それは、大会第1日から第3日の3日間に限定されている。それ以降は、炎天下の日中にも試合が行われるのだ。こうした点を踏まえると、今年もやはり2回戦から登場するチームが有利であることに変わりはない。

「U18侍ジャパン」にも選出された名バッテリー

 それに該当するチームは15校。そのなかから、筆者は、4季連続の甲子園出場を果たした広陵(広島)を優勝候補の最右翼と見ている。チームの中心は、入学直後から背番号1を背負うエースの高尾響(3年)と、1年秋から不動の正捕手として活躍する只石貫太(3年)のバッテリーだ。

 高尾は身長172cm。投手としては小柄だが、ストレートはコンスタントに140キロ台中盤をマークし、制球力の高さと変化球の質は、高校生でトップクラスである。

 今春の選抜では、2回戦で延長10回タイブレークの末に青森山田(青森)に6対5で敗れたものの、2試合連続で二桁奪三振をマークした。一方、只石は、キャッチング、スローイング、バッティング全てのレベルが高く、高尾とともに「U18侍ジャパン」に選ばれている。

 夏の広島大会では、高尾は4試合、19回を投げて1失点。只石は6試合で打率.235にとどまったものの、7四死球を選んだ。3回戦でホームランを放ち、4番の役割を果たしている。

 さらに、今春以降、さらなる戦力の底上げに成功している。サウスポーの山口大樹(3年)が、広島大会で6試合に登板。21回を投げて1失点、35奪三振と抜群の成績を残した。

 ストレートの球速は140キロ前後だが、ブレーキのあるカーブとのコンビネーションが光り、制球力も高い。広島大会決勝では、高尾をリリーフして、優勝に大きく貢献している。

 野手では、今春まで控え選手だった世古口啓志(2年)がファーストのレギュラーに定着。広島大会で、チームトップの9打点をたたき出した。また4月に入学したばかりの曽根丈一郎(1年)もセカンドの定位置をつかみ、攻守で存在感を示している。

 広陵は、日程的に余裕があることに加えて、雨天順延がなければ、2回戦と3回戦が続けて、気温が低い第1試合となる予定だ。これも優勝に向けて、大きな追い風となるだろう。

本命・広陵の対抗チームは?

 対抗の一番手として挙げたいチームは、広陵と同じゾーンに入った東海大相模だ。エースの藤田琉生(3年)、2番手の福田拓翔(2年)はともに150キロ近いスピードを誇る本格派で、ストレートだけでなく変化球もレベルが高い。

 彼らをリードする捕手の木村海達、ショートの才田和空(いずれも3年)といった中心選手が好調。東海大相模と広陵が初戦を突破すれば、3回戦で両者が激突する。東海大相模は、ここで広陵を倒して、準々決勝に勝ち上がれば、2015年以来となる夏の頂点が視野に入ってきそうだ。

 一方、ダークホース的な存在となりそうなチームが、青森山田(青森)だ。こちらも2回戦から登場する。昨秋の東北大会で優勝。今春の選抜で広陵を破り、準々決勝に進出した実力校だ。

 エースの関浩一郎(3年)は、青森大会で最速152キロをマークし、投手としての総合力は、今大会で屈指と言える。今春まで関とエースを争っていた桜田朔(3年)が不調な点は気がかりだが、他にもタイプの異なる投手を揃えており、打線も強力だ。一昨年の仙台育英に続いて、東北勢の優勝に期待がかかる。
 
 1回戦から登場するチームでは、健大高崎、大阪桐蔭、花咲徳栄、神村学園(鹿児島)、報徳学園の5校が有力。ただし、健大高崎はエースの佐藤龍月(2年)が怪我でベンチから外れたほか、大阪桐蔭も、エースの平嶋桂知、主砲のラマル・ギービン・ラタナヤケ(いずれも3年)が調子を落としている。

 花咲徳栄は、埼玉大会では準々決勝、決勝で大量失点(9失点、計18失点)を喫するなど、投手陣に不安が残る。そうなると春夏連続出場で、地方大会で安定した戦いぶりを見せた神村学園と報徳学園は不安要素が少ない。同じゾーンに有力校が少なく、投手力が強い報徳学園が優勝に近いと言えそうだ。

優勝予想と組み合わせ一覧

◇2024年夏の甲子園優勝予想
本命:広陵
対抗:東海大相模
穴:報徳学園、神村学園
注意:青森山田

<夏の甲子園組み合わせ>
※日程は8月6日時点、雨天などで順延あり

第1日 8月7日(水)1回戦
有田工(佐賀)vs滋賀学園(滋賀)
英明(香川)vs健大高崎(群馬)
岐阜城北(岐阜)vs智弁学園(奈良)

第2日 8月8日(木)
大阪桐蔭(大阪)vs興南(沖縄)
明豊(大分)vs小松大谷(石川)
京都国際(京都)vs札幌日大(南北海道)

第3日 8月9日(金)
花咲徳栄(埼玉)vs新潟産大付(新潟)
金足農(秋田)vs西日本短大付(福岡)
南陽工(山口)vs菰野(三重)

第4日 8月10日(土)
中京大中京(愛知)vs宮崎商(宮崎)
木更津総合(千葉)vs神村学園(鹿児島)
聖カタリナ(愛媛)vs岡山学芸館(岡山)
掛川西(静岡)vs日本航空(山梨)

第5日 8月11日(日)
鳴門渦潮(徳島)vs早稲田実(西東京)
聖光学院(福島)vs鶴岡東(山形)
大社(島根)vs報徳学園(兵庫)
創成館(長崎)vs白樺学園(北北海道)

第6日 8月12日(月)※ここから2回戦
熊本工(熊本)vs広陵(広島)
富山商(富山)vs東海大相模(神奈川)
鳥取城北(鳥取)vs明徳義塾(高知)
北陸(福井)vs関東第一(東東京)

第7日 8月13日(火)
長野日大(長野)vs青森山田(青森)
石橋(栃木)vs聖和学園(宮城)
霞ケ浦(茨城)vs智弁和歌山(和歌山)
花巻東(岩手)vs有田工と滋賀学園の勝者

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部