「なんだか『イヤな感じ』と思いましたが、『たまたま方向が同じだけかな』と。でも、不自然に車間距離が近かったんです。ついにライトでパッシングされたのがミラーに映りました」

 鈴木さんは「ヤバいヤツに絡まれた」と、あおられていることを確信した。その車は、蛇行したりパッシングをしたり、鈴木さんの車から離れなかったという。

◆赤信号で止まらなくて助かった

「いくつかの信号があったのですが、青信号だったので止まることもなくて助かりました。もしも赤信号で止まってしまったら、『鉄パイプなんかを持ってきて車から降りてきたらどうしよう』とまで考えていましたから……」

 焦っていた鈴木さんは、「絶対に止まれない! 止まったら何されるかわからない」と不安な気持ちが続いたのだが、運転手は諦めずについてきたと振り返る。恐怖で平常心を失いつつあったというが、「やってみるか!」と、“あること”をひらめき、覚悟を決めた。

「“ある場所”に向かって走りました。赤信号にあたらないように遠くから信号を観察して、速度を調整しながら運転していました。今考えると滑稽ですが、それくらい怖かったんです」

 そして、ついに目的地に到着した。

「警察署です! スッとウインカーを出して警察署に入った瞬間、あおってきた運転手は混乱したのでしょう。警察署の入り口にある縁石に乗り上げていました」

鈴木さんは、平然ともう一つの出入り口から、無事に家に向かうことができた。

「あの車、警察署前で自損事故を起こしてどうなったんでしょうね? 知ったことか! あースカッとした!」と締めくくった。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。