対向車線を走行する車を発見し、パトカーのサイレンを鳴らして停車させた警察官。車に近づくと、中には誰もいないことが分かった(『New York Post 「Cop confronts driverless Waymo car that ‘freaked out’ and drove into oncoming traffic」(Phoenix Police Dept.)』より)

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米アリゾナ州の警察は先月19日、交通違反をした車を目撃し、サイレンを鳴らして停車させた。運転手に話を聞こうと近づくと、車内には運転手どころか1人も乗っていなかった。実はこの車、自動運転車で、想定外の状況に遭遇して対向車線を逆走したという。米ニュースメディア『New York Post』などが伝えた。

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米アリゾナ州フェニックス警察は先月19日午前11時8分、セブンス・アベニューとオズボーン・ロードの交差点付近で、対向車線に飛び出して走行する車を発見した。

警察官がすぐにパトカーのサイレンを鳴らすと、車はさらに赤信号を無視して走行したが、その後は誘導に従い安全な場所で停車した。ところが停車してから車内を確認すると、奇妙なことに誰も乗っていなかったのだ。

当時の様子を警察官のボディカメラが捉えており、警察官が無線で「無人の車を停止させました。“ウェイモ(Waymo)”の車です」と話している。ウェイモは自動運転車開発企業で、無人の自動運転タクシーを運営している。今回、交通違反をしたのは人が運転しているのではなく、自動運転している車だったのだ。

停止した車に警察官が近づくと、自動で窓が開く様子が映像で確認できる。そして車の音声システムがウェイモの担当者と繋がり、警察官が「おたくの会社の車が対向車線に突っ込んで走行したんです」と状況を説明すると、担当者は「分かりました。すぐ確認します」と答えた。しばらくしてからウェイモの担当者が現場に駆けつけ、警察官らとの対応にあたったそうだ。

ウェイモによると、自動運転車が対向車線を走行した理由は、当時この一帯で行われた工事の関係で工事標識があちこちに出されていたのが原因だったという。工事現場を通りすぎた辺りで混乱した車が対向車線に入ってしまい、正しい車線に戻るためのナビゲーションが始まるのに約30秒間かかり、そのタイミングで警察官の目にとまったようだ。また、警察官に呼び止められたことに気づいた車は、交差点で止まるわけにはいかないと判断し、赤信号を無視して走行したという。

フェニックス警察は、今回の件で違反切符を切らなかったと言い、「コンピュータに違反切符を発行することはできません」とユーモアを交えて報告した。

ウェイモの自動運転車は、緊急車両のサイレンの光や音を検知すると停車し、車のロックが解除されるように設計されている。担当者と話すためには、今回のように車内の通話システムを利用するか、割り当てられている電話番号を使って電話をかけることも可能だという。また自動運転ではあるものの、手動での運転に切り替えることも可能で、緊急事態には警察官などが運転して自動車を移動させることができる。

アリゾナ州運輸局は現在、13社の自動運転車のテスト走行や運行を許可しており、ウェイモもその一つだ。自動運転タクシーは、自分で運転ができない人々の行動範囲が広がるという点で、大いに期待が寄せられているが、安全性へ懸念の声もあがっている。

今回の件が多数のメディアに報じられると、「本当に危険だと思うし、自動運転車を運行する会社には、高い罰則金を設けるべきだ」「世界にとって、自動運転を導入するにはまだ早いんだ」「会社の代表に違反切符を切るべきでしょう」「パソコンやスマホだってバグが起きたり故障したりするんだから、それが走行中の車に起きたらと考えると恐ろしいね」「もし死亡事故が起きたらどうするの?」「私は絶対に無人運転の車には乗りたくない」といった声が寄せられた。

ちなみに昨年2月には米カリフォルニア州で、テスラ車で高速道路を走行していたドライバーが、自動運転中に爆睡する様子を別のドライバーが動画で捉え、世間を驚かせていた。

画像は『New York Post 「Cop confronts driverless Waymo car that ‘freaked out’ and drove into oncoming traffic」(Phoenix Police Dept.)』より
(TechinsightJapan編集部 iruy)