最近はキャッチボールも本格的に始めている

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ホームランダービー辞退でも混乱はなく

 ドジャースの大谷翔平(29)がMLBオールスターゲーム(7月16日/現地時間)の前日に開催されるホームランダービーの出場辞退を正式に表明したのは、日本時間7月4日だった。デーブ・ロバーツ監督(52)がそれに先駆けて、

「shoheiはドジャースが王者になるためにプレーしている。彼一人がメジャーリーグを背負う必要はない。ホームランダービーはリハビリの邪魔になる。(大谷は)球団とも話し合っている」

 とコメントしていたため、大きな混乱はなかった。むしろ、ファンは大谷を踏み止まらせたドジャースの判断を支持していた。

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「ドジャースの運営しているファンサイトでは、『辞退して良かった』という内容ばかりでした。昨年9月のトミー・ジョン手術のことを心配しての書き込みですが、ホームランダービーそのものを否定する意見もありました」(米国人ライター)

 大谷は現在、ナ・リーグ本塁打王争いのトップにいる。昨年9月に2度目のトミー・ジョン手術を受けた影響など微塵も感じさせない活躍ぶりが連日、日本でも報道されているが、チームの状態は複雑だ。

最近はキャッチボールも本格的に始めている

「前日のダイヤモンドバックス戦で、また先発投手が炎上してしまい、コマ不足に陥っています。山本由伸(25)が右肩腱板損傷で離脱するなど負傷者も出ており、好調だった他のピッチャーも調子を落とし、ロバーツ監督は投手陣のやり繰りに頭を抱えています」(現地メディア関係者)

 この試合で炎上したのはメジャー2年目の右腕、ギャビン・ストーン(25)。ここまで16試合に先発登板して9勝を挙げていたが、3回4失点で降板した。20年のドラフト5位(全体159位)で指名された、いわゆる生え抜きである。大谷や山本など、昨年オフに大型補強を敢行したドジャースにとって、「育成の象徴的選手」でもあった。そのストーンの疲労困憊は、先発投手陣の負傷者続出による影響を改めて印象づけた。

「彼の投球には力強さが感じられませんでした。チェンジアップと直球のコンビネーションで勝って来たので、直球に勢いがなくなると苦しくなります。先発陣を支えてきたタイラー・グラスノー(30)も6月29日のジャイアンツ戦で3回4失点KOされており、30日もジェームズ・パクストン(35)が4回9失点と大乱調でした。初夏は開幕からの疲れが出る時期ではありますが、山本の離脱で先発不足となり、登板間隔がずれたことも影響していると思います」(前出・同)

 速球派右腕のボビー・ミラー(25)も負傷者リスト(IL)入りしてしまった。山本はまだキャッチボールも再開していない。ベテランのクレイトン・カーショウ(36)は「8月中旬に復帰予定」と伝えられていたが、それを急かすような声も出始めた。

大谷の弱点

 6月の上旬までは18年MVPのムーキー・ベッツ(31)の負傷もあって、選手不足が指摘されていたのは野手のほうだった。ドジャースはナ・リーグ東地区の首位にいるが、怪我人の続出で苦しい状態が続いている。「さらに大谷までいなくなったら」と心配されたものの、結局、ホームランダービーは出場を辞退することになった。

「大谷の右肘は順調に回復しています。30メートルほどのキャッチボールもすでに再開され、6月半ばにはかなり強いボールも投げていました。現地では『投手復帰の時期が前倒しされ、今秋には投げるんじゃないか』というジョークも出ていますが、大谷の様子を見るとマンザラ冗談でもないような気もします」(前出・米国人ライター)

 例年、「ミスター・ジュン(6月の男)」と呼ばれ、今年も12本のホームランを放っている大谷だが、新しいフォームやバットに慣れてくることで調子も上がっていくのだろう。だが、同11日のレンジャーズ戦で復活の16号2ランが出るまで、直近14試合の打率は1割8分3厘だった。そのころ、MLB通算204勝を挙げた解説者オーレル・ハーシュハイザー氏が地元テレビ局LAの中継で、

「shoheiはどのコースでも打とうとする。早打ちだ。内角球をフルスイングしすぎている」

 と“弱点”を指摘していた。

 このとき、新しいニックネームもつけられていた。「Flight distance King」。飛距離王という意味だ。大谷は18日のロッキーズ戦で476フィート(約145メートル)の大ホームランを放ったが、これは7月に入った今も「今季最長ホームラン記録」としてカウントされている。その476フィートアーチの前にも460フィート超えを2本打っており、22年にMVPとホームラン王のタイトルを争ったヤンキースのアーロン・ジャッジ(32)の473フィートを超えて、今季トップの達成だった。

「6月28日からオラクル・パークでのジャイアンツ3連戦があり、6月初旬から『大谷がスプラッシュヒットを達成するのではないか』との期待感も膨らんでいました」(前出・米国人ライター)

 スプラッシュヒットとは、同球場のライトスタンド後方にあるサンフランシスコ湾へ放たれる場外ホームランのことで、往年のバリー・ボンズ氏がそれを達成する映像が日本でも紹介されている。

 ただホームランを打つのではなく、相当の飛距離も期待できる――こうしたプレッシャーが大谷のスイングに必要以上の力を加えさせたらどうなるか。何より「飛ばす」ということを意識したショーがホームランダービーであり、出場することで大谷に何らかの影響を及ぼすことをドジャースは懸念したのだ。

チームメイトへの配慮も

 ホームランダービー以外にも、大谷の気になる発言があった。

 5月27日のレッズ戦後、メジャーリーグ機構が次回26年WBC大会の大概を決めたことを受けて、大谷は米メディアからその意気込みについて質問された。大谷は「出られたら出たいです」と消極的なコメントを返した。「出たいと思って出られる大会ではない」とも説明していたが、「出たい!」と目をギラギラさせて答えていた前回大会前とはあまりにも対照的だった。

 ド軍と長期契約したからもう無理はしないと決めたのか、それとも、日本代表の指揮官が恩師・栗山英樹氏(63)から井端弘和監督(49)に代わったからなのか――大谷の冷静すぎるコメントに首を傾げる米メディアも少なくなかった。

「米国の野球ファンにとってWBCというと、米国代表が優勝した前々回ではなく、大谷とマイク・トラウト(32)が対決した前回大会の決勝戦ラストシーンを思い浮かべるファンが多い。さらにいえば、大谷とドジャースに関して米メディアやファンが抱く興味は大谷、ベッツ、フレディー・フリーマン(34)との関係です。MVP受賞選手が3人もいて、プライドがぶつかり合わないのかと。今のところ、3人の関係は良好ですが」(前出・同)

 大谷は本音では、「WBCに出たい」と思っているようだ。だが、「WBC愛」を語ればプレー以外での注目度が高まってしまう。ホームランダービーに出場すると決めれば、メディアが大挙してくるのは必至だ。今回の辞退には、チームを離脱しているベッツ、調子の上がって来ないフリーマンへの配慮もあったのかもしれない。

デイリー新潮編集部