中国不動産大手・万科、「新本社予定地」を赤字売却
万科は大規模開発プロジェクト「深圳湾超級総部基地」の一角に新本社ビルを建設する計画だった。写真は同プロジェクトの完成予想図(深圳市国有資産監督管理委員会のウェブサイトより)
中国の不動産大手の万科企業(バンカ)は5月27日、新本社ビルの建設予定地だった広東省深圳市の土地を競売により売却したと発表した。買い手は唯一の応札者だった国有企業2社によるコンソーシアムで、売却価格は最低落札価格の22億3500万元(約484億円)だった。
この土地を落札したコンソーシアムは、深圳市地鉄集団と百碩迎海投資が共同で組成した。前者は深圳市国有資産監督管理委員会の直属企業であり、万科の発行済株式の27.18%を所有する筆頭株主でもある。また、後者は深圳市南山区の国有資産監督管理委員会の傘下にある投資会社だ。
購入時の3割安で「損切り」
今回の競売は、万科の委託を受けた深圳公共資源取引センターが5月8日に公示。売却地は深圳市南山区の大規模開発プロジェクト「深圳湾超級総部基地」の一角にあり、総面積は1万9200平方メートル、用途指定は(オフィスや店舗などの)商業サービス用地となっている。
万科は2017年12月、この土地を31億3700万元(約679億円)で取得し、奇抜なデザインの新本社ビルを建てる計画だった。しかし今回の競売では、購入価格より3割近くも安い「損切り価格」で処分した格好だ。
中国の不動産市況の悪化が続く中、不動産大手のなかで財務状況が比較的健全と評価されていた万科も、流動性確保のための資産売却が不可避になっている。財新記者のまとめによれば、2024年末までに償還期限を迎える万科の債務は総額322億元(約6970億円)に上る。
「わが社の現在の優先課題は、リスクを避けて経営基盤を補強し、長期的かつ健全な発展を図ることにある」
万科の董事会主席(会長に相当)を務める郁亮氏は、4月30日に開催した年次株主総会でそう強調し、対策の第一段階として事業の徹底したスリム化を進めると宣言した。
万科の郁亮・董事会主席は、資金繰り確保のため非中核事業の資産売却を急いでいる(写真は同社ウェブサイトより)
具体的には、今後の事業を住宅開発、不動産管理サービス、賃貸住宅の3分野に絞り、オフィスビルや商業施設などの非中核事業の清算や譲渡を急ぐとしている。
市政府の決意表明の一面も
今回の新本社ビル用地の売却も、上述のスリム化の一環にほかならない。同社は5月27日付の声明のなかで、この取引が資産ポートフォリオの適正化や資金繰り改善に寄与し、中核事業への集中にも有益だと説明した。
その一方、この土地を深圳市政府直系の国有企業が買い取ったことは、市政府が万科(の経営破綻回避)を支える“公約”を果たすという、事実上の意思表明と受け止められている。
万科が2023年10月末に最初の信用不安に直面した際には、深圳市国有資産監督管理委員会のトップが同社をサポートすると公の場で発言し、市場の動揺の沈静化を図った。だがその後、市政府による資金面での支援に大きな進展はなく、万科は資金繰り悪化が続いていた。
(財新記者:陳博)
※原文の配信は5月28日
(財新 Biz&Tech)