人間関係が悪い会社で身を守るサバイバル術
退職理由の多くが職場の人間関係です。「いじわるな人への防災対策」についてご紹介します(画像:『職場の人間関係 防災ガイド』より)
入社後3年以内に約4割が退職するといわれ、新卒1年以内の離職理由の1位は「人間関係」です。これまで1万人以上の相談に乗ってきたキャリアコンサルタントの藤本梨恵子さんの新刊『職場の人間関係 防災ガイド』の中から、人間関係のトラブルを、起こる前に防ぐ方法について解説します。
陰険で遠回しに嫌がらせをする人
いつも退職理由の上位に上がるのは職場の人間関係です。心理学者のアドラーも「すべての悩みは人間関係の悩みである」というほど、人間関係は一番の悩みの種です。
クセの強い・めんどくさい人たちは、極端な考えや行動をするので、トラブルを引き起こします。だから、否が応でもあなたも巻き込まれることになるでしょう。まさに人間関係の災害。その災害を、うまくかわし、ストレスを溜めず、やり過ごす方法を知っているかどうかで、あなたを取り巻く環境は天国と地獄ほどの差が生まれます。今回は「いじわるな人への防災対策」についてご紹介します。
【気にしなくていい3つの意地悪】
上司にあなたが「来週の金曜日お休みをいただきたいのですが」と言うと「はぁ〜。(ため息)休みね。ハイ、わかりました……」とムッとされたり、営業で新規開拓を成功させたあと、同僚が集まるランチで「新しく何かを開拓するより、現状維持する方がよっぽど大変なのに、会社には評価されないよね」と遠回しにあなたを否定するのも「受動的攻撃行動(以下受動攻撃)」と呼ばれるものです。
「受動攻撃」とは自分が感じている怒りや不満などを直接口に出さず、間接的にあなたにぶつける行為です。
受動攻撃は、もとはアメリカの軍隊で、上官の命令に逆らえない部下が、わざと仕事を遅らせたりして、間接的に反抗心を表したことから生まれた言葉です。この攻撃は主に、無視・批判・妨害という3つの形で行われます。
目を合わせないようにしたり、聞こえないふりをするのは「無視」。「今日は冴えてるね! いつもピントがズレてるのに」とほめ言葉に辛辣な一言を付け加えるなどして、みんなの前で恥をかかせるのが「批判」。仕事になかなか手を付けず、「締め切りを忘れていた!」などと言って、あなたをわざと困らせるのが「妨害」です。
はっきり文句を言ってくる攻撃は、犬が吠えたり噛むようなわかりやすい攻撃。受動攻撃はハリネズミが丸まって背中のハリで防衛するように、相手が手出しできないように、壁をつくる自己防衛なんです。
この受動攻撃は、意識的または無意識的に行われます。実は、受動攻撃をする人は、子どもの頃に、支配的で怖い親に直接反抗できず、受動攻撃で反発していたり、親から受動攻撃を受けていた場合が多いんです。
その結果、親から学んだ歪んだコミュニケーションで、大人になっても他者に関わろうとしてトラブルになるんです。
ネガティブな感情を吐き出させてあげる
【防災方法】
受動攻撃をする人は、表に出せない怒りや不平不満を抱えています。仕事を頼まれて「はぁ〜」とため息をつくのは「忙しいのに、この仕事も私がやるんですか?」とストレートに言えないから、遠回しに不満を表現しています。つまり、受動攻撃する人はあなたに「もっと、察して!」「配慮してほしい」と願いながら、言えなくて不満を溜め込んでしまった人なんです。
そこで、ネガティブな感情を吐き出させてあげると、そもそもいじわるな受動攻撃に走らなくなります。
たとえば、普段から「何かあれば、いつでも相談してくださいね」「先輩の苦労話を聞きたいです!」と声をかけ、愚痴や本音を話せる環境をつくるのが効果的です。
また、もしあなたが会社に働きかけられるなら、意見が言いやすい仕組みをつくるのも効果的です。
ある企業では「困りごとや不満を紙に書いて箱に入れてもらい、必要に応じて上司が対処する」という取り組みをしたそうです。結果、たったこれだけで受動攻撃が減り、退職者まで減少したといいます。
そこまではムリなら、定期的な個別のミーティングで本音で話せる環境をつくることもオススメです。仕事をわざと遅らせるような妨害は、仕事の締め切りや手順、報告・連絡・相談のタイミングなどを事前に細かく指示し、確認すると、ある程度防ぐことができます。
冗談っぽく相手の本音を代弁する
【復興プラン】
廊下であなたが同僚と立ち話をしていると後ろから、書類を運んでる相手が、ムッとしながら「邪魔!」と言ってきたとします。相手はただ通りたいだけですよね?
本当はそんな言い方で受動攻撃をしなくても、「書類を運んでいるので、道をあけてください」とお願いしてくれれば済むことです。ところが、「こっちは重い書類持ってるんだから、察して、さっさとどきなさいよ!」という本音が隠されているからキツい言い方になるんです。
そんなときは、冗談っぽく相手の本音を代弁するのが有効です。「通りにくかったですね! 気づかずに失礼しました!」とか「早くどけよ! って感じですよね?(笑)」みたいに冗談っぽく相手の本音を代弁すると、相手も「察してくれた」と感じ、笑うなど緊張が緩み、過剰に反抗しなくなります。
「はっきり言ってもいいんだ!」と安心してもらう
上級者向けですが、質問するという方法もあります。休みの申請をしたら、ため息をつかれた場合、「それは、その日は休まないでほしいということでしょうか?」と質問するのです。
「それは、〇〇してほしいということでしょうか?」と相手の本音を言い当ててみるのも、相手がストレートにモノを言う練習になるので効果的です。
そうすることで、相手が「はっきり言ってもいいんだ!」と安心して、次回からストレートな表現方法になることがあります。
ただし、「なんですか、その態度。なんか文句があるんですか?」と喧嘩腰に、あいまいに指摘するのはNGです。
最後に、仕事の締め切りをわざと守らないなど妨害に当たる行為があった場合。「次回、このように期日が守れなかったら、担当を変わってもらいます」など、限度を提示して、受動攻撃を許さない姿勢も大切です。
(藤本 梨恵子 : キャリアコンサルタント)