映画『ミッシング』より
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 石原さとみが『空白』『ヒメアノ〜ル』などの吉田恵輔(※吉は「つちよし」が正式)監督と組んだ映画『ミッシング』(公開中)。石原にとって2022年の出産後、1年9か月ぶりの芝居となる作品で、自ら監督に売り込んで役を射止めた勝負作としても注目を浴びたが、その気概が結実したかのように公開から1か月経てもネット上では石原の熱演に対する感想やリアクションが多く寄せられている。

 5月17日より公開中の本作は、突然失踪した幼い娘を探し続ける母親・沙織里(石原)とその家族が、事件をめぐるマスコミと世間の声に翻弄されていくさまを追うストーリー。共演に中村倫也、青木崇高、森優作、小野花梨、細川岳らが名を連ねる。

 石原演じる沙織里にとって、娘が失踪してからというものの行方を探すことだけが日常。来る日も来る日も夫と街頭でビラを配り、まるで根拠のない手がかりであっても藁にもすがる思いで希望を託し、次の瞬間には絶望のどん底に突き落とされる。かろうじて正気を保つ日々の繰り返しだ。しかも、そんな沙織里に向けられるのは同情ではなく心無い誹謗中傷。マスコミのさまざまな思惑が絡み、歪んだ報道がなされたことで沙織里は好奇にさらされ、精神的に追い詰められていく。

 キラキラとしたパブリックイメージを覆す石原の熱演が話題沸騰だが、その役づくりは驚くほど入念。沙織里が自分の服装を気にする余裕がないであろうことから紺のフーディーにデニムパンツの組み合わせが基本スタイルに。髪の色は色むらの目立つブラウンに。石原が衣装スタッフやヘアメイクと話し合いを重ねて追い詰められゆく沙織里を丁寧に作り上げていった。それは撮影の間も続き、石原はあえて添加物の多い食事を摂り、ジム通いを控えて体を緩めた。髪はシャンプーではなくボディソープで洗い、手入れの行き届かないパサつきが、くたびれた佇まいを醸し出した。束ねた髪から毛束が飛び出ていたり、顔まわりにボサついた前髪や乱れたおくれ毛が散らつく。石原のチャームポイントである唇もリップクリームを塗らず常に荒れた状態だったという。

 そうした石原の血のにじむような努力が実を結び、映画が公開されてからはネット上で「石原さとみの演技が凄すぎた」「新しい石原さとみを見た」「壊れていく様子が凄まじかった」「従来の殻を破ったような印象」「確実に石原さとみの代表作」「子のいない自分でも見ていて苦しかった」とその熱演に圧倒される声が続々。作品に対しての評価も「二度ほど泣いてしまった」「地獄のような2時間」「リアルで苦しくなる」「夫婦のやり取りがリアルで辛い」「1人で観にきて正解」と自分事のように感情移入する声が目立つ。

 ロングランヒットが続く本作は、来週以降に約30以上の劇場で上映が順次開始される予定(※ワーナー・ブラザース映画営業部調べ)。6月29日にはヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーで吉田監督登壇のティーチインイベントが開催される。(石川友里恵)