左からドミニク・セッサ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ポール・ジアマッティ
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 第96回アカデミー賞で作品賞をはじめ主要5部門にノミネートされた映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(6月21日公開)から主演のポール・ジアマッティ、本作でアカデミー賞助演女優賞を受賞したダヴァイン・ジョイ・ランドルフらメインキャストの名演が光る本編映像が公開された。映像には、日本でリメイクもされた『サイドウェイ』でも知られるアレクサンダー・ペイン監督のメッセージも挿入されている。

 本作の舞台は1970年のボストン近郊にある全寮制の名門校。生徒からも教師仲間からも嫌われている古代史の教師ハナム(ポール・ジアマッティ)と優秀だが反抗的な生徒アンガス(ドミニク・セッサ)、ベトナム戦争で一人息子を失ったばかりの料理長メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)の3人が、クリスマスと新年を共に過ごすなかで寄り添っていくさまが描かれる。

 『サイドウェイ』で名コンビと言われたアレクサンダー・ペイン監督とポール・ジアマッティが再び組んだことでも注目を浴びる本作は、アカデミー賞で作品賞・主演男優賞・助演女優賞・脚本賞・編集賞の5部門にノミネート。哀しみをたたえた料理長メアリーを演じたダヴァイン・ジョイ・ランドルフが同助演女優賞を受賞し、全米の映画賞を総なめにした。

 本編映像は、クリスマスが明け、アンガスの強い希望から車でボストンへ向かった3人のレストランでのシーン。アンガスの希望でチェリー・ジュビリーを注文するが、”大人のお菓子”なので彼は食べることができない。そこで、メアリーは機転をきかせて“嘘”を付きアンガスの願いをかなえようとするも、店員は笑顔でお祝いの言葉を述べるのみで注文を受けようとしない。するとハナムは店員の融通の利かない態度をののしり始め、メアリーがまたしても機転をきかせて場を収める。

 この後、3人は駐車場で至福のひとときを過ごすことになるが、本シーンをはじめ劇中に起こるささやかながらもコミカルな事件のいくつかは、脚本を務めるデヴィッド・ヘミングソンの実体験に基づいたもの。まるで対照的なハナムとメアリーがアンガスのために小さな奮闘を見せ、物語の序盤ではまるでかみ合わなかった3人の心がゆっくりと近づきつつあることも感じられるワンシーンでもある。

 バカンスや家族のもとに戻った人々を尻目に、学校に取り残された3人が織りなす物語について、ペイン監督は「かなり複雑な3人のキャラクターが意外な家族像を作り、お互いを愛する方法を人間的でエモーショナルな形で見つけていく物語」と紹介している。(石川友里恵)