暴走族に関する110番通報件数・逮捕者数

写真拡大

 熊本県警は5月、自分のバイクを人に貸して暴走行為をさせたとして、19歳の少年を道路交通法違反(共同危険行為の禁止)の疑いで逮捕した。

 実際に暴走行為に加わっていない人物を共同危険行為の疑いで逮捕するのは、県警では初めてだ。活動実態を変容させる暴走族。数字上は確実に減っているが、果たしてこのまま消えゆくのか?

押収されたバイク。アルミホイルはバイクの形を特定されないためで、違法改造ではないという=熊本県警提供

 昨年10月22日午前0時45分ごろ、バイク2台と原付き1台に分乗した少年らが熊本市中央区保田窪2丁目の東バイパス交差点付近で赤信号を無視して渦巻き状に走行した。これが昨年11月〜今年5月、当時14〜19歳の少年8人を熊本東署が逮捕した容疑だ。

 このうち実際に暴走行為に加わったのは6人。残る土木作業員(19)と会社員(18)の2人は指示役と連絡役だった。自分たちは乗らずにバイクを貸し出し、SNSを使って参加者や見物人を募っていた。実際、現場には300〜400人が見物に集まったという。

 暴走族と言えば、かつては違法改造車が定番だったが、今回は「空ぶかしはしていたがマフラーはそのまま。一見改造に見えるバイクも、車種が分からないようアルミホイルで隠していただけ」(熊本東署)。逮捕された8人の中には現場で初めて顔を合わせた少年もおり、東署は「暴走族として固定化された存在ではなかった」とみている。

 県警の記録では、1973年ごろから、熊本市の交通センター(現・サクラマチ)や八代市港町に暴走族が出没。翌年5月には同乗していた高校生が死亡し、80年7月には熊本市内で見物人300人がパトカーや花畑派出所(現在の交番)に投石する騒ぎも起きた。

 取り締まりの強化で繁華街での暴走は減ったが、85年の東バイパス全面開通を機に再び活発化。県警は91年、二輪車の通行禁止区間を深夜に設けた。2000年施行の県条例では、車両の改造や整備不良車へのガソリン販売、はちまきや旗への刺繡(ししゅう)をしないよう、業者に求めた。

 これらの対策が奏功し暴走族に関する110番は激減。逮捕者も減少傾向だ=グラフ。

 ただ、懸念はある。かつての暴走族が中年になって集団走行を復活させる「旧車會(きゅうしゃかい)」の存在だ。県警は、阿蘇や天草を目指して数十台で走行したり、熊本港(熊本市西区)や宇土市の「道の駅」に集まったりする実態を確認している。

 交通指導課は「大半は交通ルールを守っているが、若者を仲間に加える動きもみえる。散発化してきた若者の暴走行為が、旧車會の影響で固定化するとまずい」と警戒している。(森北喜久馬)