アメリカの司法省と連邦取引委員会(FTC)が、Microsoft・OpenAI・NVIDIAのAI業界における影響力を鑑みて、反トラスト法(独占禁止法)に基づく調査を行う予定であると報じられました。司法省とFTCは調査を進めることを認める合意に至り、6月上旬には成立する見込みだそうです。

U.S. Clears Way for Antitrust Inquiries of Nvidia, Microsoft and OpenAI - The New York Times

https://www.nytimes.com/2024/06/05/technology/nvidia-microsoft-openai-antitrust-doj-ftc.html

U.S. regulators to open antitrust probes into Nvidia, Microsoft and OpenAI

https://www.cnbc.com/2024/06/06/us-regulators-to-open-antitrust-probes-into-nvidia-microsoft-and-openai.html

関係者からの情報によると、FTCはOpenAIとMicrosoftを対象とする調査を、司法省はNVIDIAの調査を主導するとのこと。調査の内容は合併や買収ではなく、各社の行為に焦点が当てられるそうです。

MicrosoftはOpenAIにばく大な投資を行っており、2023年1月には数十億ドル(数千億円)規模の出資を約束する長期的なパートナーシップを結んだことを発表しています。

MicrosoftがOpenAIに対し数千億円規模の出資を行い長期的なパートナーシップを締結したことを発表 - GIGAZINE



また、NVIDIAはAI向け半導体市場で最大のシェアを占めており、生成AIの普及が進むにつれて急成長を遂げています。2024年6月には時価総額がついに3兆ドル(約468兆円)を突破し、Appleを抜いて世界第2位の公開企業となりました。

NVIDIAの時価総額が3兆ドルを突破、Appleを超えMicrosoftに次ぐ世界第2位に - GIGAZINE



かくしてMicrosoft・OpenAI・NVIDIAはAIブームの波に乗っているわけですが、FTCや司法省からは厳しい目を向けられています。

NVIDIAは2022年にソフトバンク傘下の半導体企業であるArmホールディングスを買収する計画を進めていましたが、FTCが買収差止めの訴えを起こし、結果として買収合意には至りませんでした。

NVIDIAによるArm買収差し止めを連邦取引委員会が求め提訴 - GIGAZINE



また、FTCは2023年7月に「ChatGPTによって生成された誤情報が消費者に危害を与えた疑い」で、OpenAIの調査を行いました。さらに、FTCは2024年1月にMicrosoftがOpenAIに、AmazonとGoogleがAnthropicにばく大な投資を行っていることについて、調査を進めています。

ChatGPTが「個人についての不名誉で誤解を招く虚偽の説明」を生成したとしてアメリカ当局がOpenAIの調査を開始 - GIGAZINE



アメリカ日刊紙のThe New York Timesによると、アメリカの一部の連邦議員はアメリカがAIの規制でEUに遅れを取っていることに業を煮やしており、AIに関する規制法案を提出するなど、具体的な新規制を求めているとのこと。FTCがAI関連企業に何度も調査を行うのはアメリカ国内で高まるAI規制への圧力が背景にあると、The New York Timesは指摘しました。

なお、The New York Timesの問い合わせに対して、FTCと司法省、NVIDIAはコメントを控えると回答。MicrosoftとOpenAIも、コメントの要請に応じなかったそうです。