「こんなことができるのはアイツしかいない」…六代目山口組の三次団体組長・ラーメン店長射殺事件で浮かび上がった「黒ずくめの男」と「犯人断定」

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ヤクザ業界でも情報が錯綜

事件が起きたのは昨年4月22日、神戸市長田に店を構える一軒のラーメン屋だった。店内に倒れ込む余嶋学さん(当時57)の姿を買い出しから戻った従業員が見つけ、発覚した。

「当時、余嶋さんは頭や口、鼻からも出血がみられていた。頭部には銃撃されたあとがあり、弾は貫通せず頭の中に残っていた。死因は撃たれたことによる脳幹の断裂。銃撃を受けてほぼ即死です。余嶋さんの周囲には薬莢こそ落ちていたが、使用された拳銃は見当たりませんでした」(全国紙社会部記者)

発生当時、ヤクザ業界でも余嶋組長の死については情報が錯綜していた。ある暴力団関係者はこう振り返る。

「余嶋組長が亡くなったというのはすぐにヤクザ関係者に広まった。ただ当初、弾が見つかっていなかったこと、本人が口や鼻から血を流しているとの話で病気が理由の突然死ではないかとも噂されており、判別がつかなかった」

しかし、頭部から検出された銃弾から兵庫県警は何者かが余嶋さんを射殺した殺害事件と認定。捜査本部を設置し、本格的な捜査に着手したのである。

カギを握る男

「余嶋さんは六代目山口組三次団体の湊興業の組長という立場でもあった。一人親方ながらも六代目の影響力が少ない神戸で組を構えていた。ラーメン屋稼業も順調だったこともあり、本人は引退したがっていたが、組織としては数少ない神戸の組をなくしたくないという思いもあり『もう少しだけ待ってくれ』と頼んでいたと聞いている」(前出・暴力団関係者)

ラーメン屋の大将の死から一転、組長の殺害という側面を生み出した今回の事件。カギを握るのは、防犯カメラに記録された黒ずくめの男だった

「事件当日、店の防犯カメラには全身黒の服を身に着けた男の姿が映っていました。動画では店内に入ってからおよそ40秒ほどで店をあとにしています。県警はこの間に余嶋さんが殺害されたと睨み、慎重な裏付け捜査を続けていました」(前出・社会部記者)

防犯カメラ映像もまたヤクザ界隈に瞬く間に拡散され、犯人探しが過熱。そこで浮上したのが、ある大物幹部の名前だ。別の関係者が語る。

組員に待機指示

「当初から絆會の金澤成樹若頭の犯行説は濃厚だった。関係者の間でも『こんなことをできるのは金澤ぐらいしかいない』という声は多く上がっていた。

一方で六代目側としては、組織の組長が殺されたという揺るがぬ事実がある。相手が相手ならヤマを返さないといけない。実際、事件直後から本部から六代目山口組関係者に待機指示が出されるなど物々しい雰囲気は漂っていた」

この時、すでに金澤容疑者は20年9月に六代目山口組に移籍しようとしていた元弟分を発砲した殺害未遂の疑いで指名手配を受けていた。22年1月には逃亡中の身ながら茨城・水戸で六代目山口組傘下の組員を射殺。以降も稀代のヒットマンとして行方をくらましている状態が続いていた。

「ただし、金澤がやったという確固たる証拠もなく、映像でも『背格好が違う』『歩き方が違う』と指摘する関係者もいたのも確か。六代目としても寸前で押し留まっているような状態だった」(前出・暴力団関係者)

そんな中、今年2月に金澤容疑者が潜伏先の仙台で逮捕される。3年ほどにも及ぶ逃亡劇が終わりを告げると、余嶋組長殺害事件は急展開を迎えていく――。

つづく後編記事『「抗争の合図になりかねない」「織田組長自宅を不審な車が…」六代目山口組の三次団体組長・ラーメン店長射殺事件「犯人逮捕予告」で国が「厳戒態勢」を敷くワケ』では、金澤容疑者をラーメン屋亭主襲撃の犯人として逮捕した経緯、そして県警が敷く抗争包囲網の詳細についてお届けする。

「抗争の合図になりかねない」「織田組長自宅を不審な車が…」六代目山口組の三次団体組長・ラーメン店長射殺事件「犯人逮捕予告」で国が「厳戒態勢」を敷くワケ