まるで巨大な木が何もない平原を歩いているかのように見える「歩く木」が、ニュージーランド樹木協会が主催する毎年恒例のコンテスト「ツリー・オブ・ザ・イヤー」の2024年度チャンピオンに選ばれました。

Tree of the year / Rākau o te tau | New Zealand

https://www.treeoftheyear.co.nz/

Northern rātā walks away with victory in Tree of the Year competition | RNZ News

https://www.rnz.co.nz/news/national/518694/northern-rata-walks-away-with-victory-in-tree-of-the-year-competition

100-foot 'walking tree' in New Zealand looks like an Ent from Lord of the Rings - and is the lone survivor of a lost forest | Live Science

https://www.livescience.com/planet-earth/plants/100-foot-walking-tree-in-new-zealand-looks-like-an-ent-from-lord-of-the-rings-and-is-the-lone-survivor-of-a-lost-forest

ニュージーランド南島の西海岸にあるカラメアという町には、「歩く木」というニックネームで親しまれている高さ約32mの大木があります。

「歩く木」の写真がこれ。何もない放牧場の真ん中に1本だけ巨大な木が立っており、その根元が二股に分かれていて2本の脚で歩いているように見え、まるでJ・R・R・トールキンの「指輪物語」に登場する樹木のような姿をした巨人・エントのようだともいわれています。



「歩く木」の正確な樹齢は不明ですが、約150年前に付近の樹木がまとめて伐採された際にこの木だけが残されたため、現在のように平原にぽつりと立っている状態になったそうです。当時の近隣住民もこの木を特別なものとして見ていたことがうかがえます。

「歩く木」の正体は、ニュージーランド固有種のノーザンラタという木です。ノーザンラタは高さ25m以上に成長するニュージーランドで最も背の高い木のひとつで、最長で樹齢1000年に達するケースもあるとのこと。

ノーザンラタの大きな特徴が、ライフサイクルの初期を他の木に寄生する半着生植物として過ごすという点です。まずは他の木の樹上で成長したノーザンラタは、やがて気根を地面に伸ばして自立します。これにより、ノーザンラタの木は根元のあたりの幹が中空になっています。

先に宿主となった木が枯れてしまうと、「歩く木」のようにノーザンラタだけが残されるというわけです。「歩く木」の根元が二股になっている理由については、宿主の木が大きすぎてノーザンラタが二股のように気根を張ることになったという説や、途中で宿主の木が裂けて二股になったという説などが考えられます。

「歩く木」はニュージーランド樹木協会が主催する2024年度のツリー・オブ・ザ・イヤーで最終候補の6本に選ばれ、42%の圧倒的得票数でチャンピオンに選ばれました。

なお、「歩く木」は私有地の中にあるため間近に寄ることはできませんが、付近の墓地などからその姿が見えるとのことです。