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3車種の新型SUVを年内導入

中国の自動車メーカーであるセレス(賽力斯)は、メルセデス・ベンツ、アウディ、テスラといった高級車ブランドを視野に入れ、欧州市場への進出準備を進めている。

【画像】欧州車に対抗する「中国高級SUV」ってどんな感じ?【セレスの新型SUV「5」「7」「9」を写真で見る】 全20枚

セレスは今年後半、3車種の新型SUV「5」「7」「9」を欧州に導入する予定だ。バッテリーEVとレンジエクステンダーEV(ガソリンエンジンで発電するEV)を発売する。


大型SUVのセレス9(中国ではAITOブランドから「M9」として発売)    セレス

小型SUVの5は、テスラ・モデルYやフォルクスワーゲンID.4への対抗馬となるエントリーモデルだ。76kWh(使用可能容量)のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーを搭載し、欧州WLTPサイクルにおける航続距離はシングルモーター車で最長480km、デュアルモーター車で最長450kmとされている。

5のシングルモーター車では永久磁石同期モーターを採用しており、最高出力272psと最大トルク36.8kg-mで後輪を駆動する。これにより、0-100km/h加速タイムは7.1秒となる。

デュアルモーター車はフロントにAC同期モーターを追加し、合計出力495psと最大トルク68.8kg-mを発生。0-100km/h加速は4.5秒に短縮される。

どちらのバージョンも最大100kWの急速充電に対応し、わずか30分で30〜80%の充電が完了するという。

5にはまた、1.5Lターボガソリンエンジンと40kWhのニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーを使ったレンジエクステンダーEV(以下、REx)も用意されている。

シングルモーター、後輪駆動のRExは最高出力266psと最大トルク36.0kg-mを発生し、0-100km/h加速は7.1秒。バッテリーのみでの航続距離は183km、エンジンの燃費は16km/lである。

デュアルモーターのRExは、合計出力486ps、最大トルク67.7kg-mとBEVより若干パワーが劣るが、加速に優れ、0-100km/h加速を4.4秒で達成する。

いずれにせよ、5の車両重量は2トンを超える。最軽量バージョンのシングルモーターRExは2220kg、デュアルモーターRExは2335kg。BEVはこれらRExよりさらに15kg重い。

デジタル技術に「優位性」

5と同時に登場するのが、ランドローバー・ディスカバリーをライバルに見据えた6人乗りSUVの7だ。

パワートレインはRExのみで、5 RExと同じ40kWhバッテリーと266psのリアモーターを搭載する。デュアルモーター車では前後に永久磁石同期モーターを使用し、合計出力440psと最大トルク66.6kg-mを発生、0-100km/h加速は4.8秒となる。


中型SUVのセレス7

欧州WLTPにおけるバッテリーのみの航続距離は、シングルモーター車で135km、デュアルモーター車で140kmとされる。

大型SUVの9の欧州仕様はまだ発表されていないが、5と7よりも大型で、BEVとRexを設定している。欧州では5と7の後に登場する。

セレスは、先進的なデジタルサービスとソフトウェアの無線(OTA)アップデートを自社モデルの特徴に挙げている。欧州車と比較して、アップデートの迅速さに優位性があるという。

セレスの海外市場責任者であるJiaxi You氏は取材で、「セレスはテクノロジーとインテリジェンスによってラグジュアリーを再定義しようとしている」と語った。

「新しいソフトウェア・バージョンが用意できたら、OTAアップデートでお客様にお届けすることができます。ソフトウェアは週ごとに進化していきます。当社は常に製品を改善するために、お客様からのインプットやフィードバックを集め続けています」

こうした対応は「従来の開発よりもはるかに機敏」であり、「海外市場専任の担当者」により、新機能を現地の嗜好に合わせて調整できるという。

「さまざまなシナリオについて、お客様からのフィードバックを注視しています。バグ修正であれば一晩ですぐに実行できますが、製品のアップグレードや新機能追加の場合は、OTAが増えすぎないようにバンドル(セット化)します」

タッチと音声操作が主体

セレス車のインテリアには物理的なボタンがほとんどなく(ステアリングホイールにのみ装着)、タッチスクリーンおよび音声での操作が主となる。タッチによる車載機能の操作については利便性や安全性を懸念する声もあるが、セレスは問題視していない。

中国では数年前まで、すべてのクルマに物理ボタンが装備されていました。ボタンが多ければ多いほど、そのクルマは高級なのです。今では、その役割がタッチスクリーンに置き換わりました」


セレス7のインテリア。車載機能の大半をタッチスクリーンとボイスコントロールで操作する。

「すでに技術的なギャップを超えているので、ボイスコントロールがお客様とクルマの間の主要なインタラクションになると思います」

セレスは欧州市場における販売目標をまだ公表していないが、ブランド構築の難しさを認識しており、BYDやGWMのように既存の現地ディーラー・フランチャイズと提携して販売を行う予定だ。

この点についてJiaxi You氏は、ブランド認知度の問題だけでなく、信頼の問題もあると語った。

「当社の戦略は、素晴らしい製品とクラス最高のサービスを提供し、一人一人のお客様を大切にすることです。欧州には長くとどまるつもりです」

欧州でのライバルブランドについては言及を避けたが、中国では「高級車ブランドのランキングで、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、テスラのすぐ後ろに位置するのがセレスです」と説明した。