船橋の“ヒミツヘイキ”が後の芝GI勝ち馬2頭に勝利! コーナリングの課題が生んだ地方馬のユニコーンS制覇
ユニコーンSは今年から施行時期が早くなり、東京ダービーのステップレースとなった。それだけに地方との結びつきが今まで以上に強くなることだろう。それはさておき、このレースをただ1頭、地方馬として制したのがヒミツヘイキである。そこで今回は22年前の一戦を振り返りたい。
ヒミツヘイキは父ダミスター、母ジョーディアレスト、母の父キタノカチドキの血統。半姉は00年のチューリップ賞を制したジョーディシラオキ。4歳年上の近親に98年の日本ダービーを制したスペシャルウィークがいることに加え、馬主の田中春美さんが田中勝春騎手の父という話題性もあった。
2歳10月に船橋でデビュー勝ち。2戦目は2着に敗れたものの、年末の平和賞で重賞初制覇。休み明けとなった3歳初戦の五月会盃も制し、次走に選ばれたのがユニコーンSだった。南関東所属なので、通常であれば東京ダービーを目指すところ。それでもあえてJRAに挑戦した裏側には、ヒミツヘイキが右回りのコーナリングに課題を抱えているという理由があった。
単勝20.7倍の7番人気で迎えた一戦。ダッシュはひと息だったが、左海騎手に気合を付けられて番手を確保した。前半3F34秒9、5F58秒6のハイペースを無理なく追走。とはいえ、多くのファンが「これは直線で止まる」と思っていたことだろう。しかしながら直線を迎えても手応えは良く、残り300mで堂々と先頭へ。懸命に追い込んできた1番人気のインタータイヨウを振り切り、終わってみれば2馬身差の完勝だった。ちなみに4着のアサクサデンエン、13着のイングランディーレは後にJRAのGIを勝利。6位入線10着降着のクーリンガーはダート重賞を6勝している。また、地方所属馬としてはちょうど10回目のJRA重賞制覇でもあった。
その後の活躍が期待されたヒミツヘイキだったが、もはや秘密ではなくなったからなのか、年内は4戦して未勝利に終わる。4歳初戦の報知グランプリCで5戦目の勝利を手にしたものの、結局これがラストランに。その後は行方不明となった。また、パートナーだった左海誠二元騎手は22年11月に騎手を引退。23年5月に厩舎を開業したものの、僅か3カ月後の8月20日に急性心筋梗塞のため、48歳で早世している。
今となっては忘れ去られつつある22年前の一戦。しかし、そのインパクトのある馬名とともに、オールドファンの記憶の奥底には刻まれているはずだ。ユニコーンSが新時代に突入する機会に、ヒミツヘイキと左海騎手の雄姿を是非思い起こしていただきたい。