92年の天皇賞(春)を制したメジロマックイーンと、5着に敗れたトウカイテイオー(92年4月撮影、ユーザー提供:ribapuruさん)

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 これまでに数多くの“2強”対決が生まれてきたが、戦前の盛り上がりという意味では、このレースが一番だったのではないだろうか。92年の天皇賞(春)。前年の無敗の2冠馬トウカイテイオーと、連覇を目指すメジロマックイーンが激突した一戦である。

 前哨戦の段階から、ファンの興奮は高まっていた。トウカイテイオーの骨折からの復帰戦となった大阪杯、最終追い切りで初コンタクトをとった岡部幸雄騎手は、自らが主戦を務めた父シンボリルドルフに似ていることを明かし、「地の果てまで伸びていく感じ」と語った。そしてレースはほぼ馬なりで圧勝。圧倒的に強さを見せた3歳時から、さらに成長していることを示したのだ。

 一方のメジロマックイーンは、大阪杯の3週間前の阪神大賞典を圧勝。本番に向けて、着々と調子を上げていた。この頃からコメントが巧みだった主戦の武豊騎手は、「あちらが地の果てなら、こちらは天まで昇れそうです」とリップサービス。ファンの盛り上がりに拍車をかけた。

 そして迎えた本番、1番人気は1.5倍でトウカイテイオー。メジロマックイーンは2.2倍の2番人気。3番人気のイブキマイカグラは大きく離れて18.2倍だから、まさに2強ムード。しかしレースはあっさりと決着がついた。

 好スタートから中団につけたメジロマックイーン。一方のトウカイテイオーはライバルをマークするように、2馬身ほど離れた位置を確保した。そして勝負所の3コーナー、武豊騎手とマックイーンが勝負をかける。逃げるメジロパーマーをかわして早くも先頭へ。得意の持久力勝負に持ち込もうという策だ。そうはさせるものかとテイオーと岡部騎手がついていく。しかし、一騎打ちムードは長く続かなかった。直線に向いて後続を突き放すマックイーン。一方のテイオーは距離が堪えたのか、脚色が鈍る。終わってみればマックイーンが2着のカミノクレッセに2馬身半差の圧勝。テイオーは1秒7差の5着に敗れ、デビュー8戦目で初黒星を喫することとなった。

 トウカイテイオーはレースの10日後に右前脚骨折が判明。これがレースの走りに影響したのかどうかは、今となっては定かではない。一方のメジロマックイーンも次走に予定していた宝塚記念の前に骨折。ともに復帰し、さらにタイトルを重ねることとなるが、ファンが待ち望んだ2度目の対決は実現しなかった。もしテイオーが無事だったら、仮に距離が2000mなら、どうなっていたのか。そんなことを考えながら、32年前の一戦に改めて思いをはせてみたい。