担当者は「水着のトレンドや社会情勢も変わっていくため…」と説明する(公益財団法人埼玉県公園緑地協会「埼玉県営水上公園における水着撮影会開催の手引き」より )

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 グラビア業界の出来事を、グラビア評論家の徳重龍徳が振り返る連載「上善は水着のごとし」。今回は昨年グラビアタレントを震撼させた埼玉県営プールでの水着撮影会を巡る問題についてです。

【実際の画像】“突き出す”のはNGだが四つん這いはOK…細かすぎるプール撮影会の「手引き」

 埼玉県営プールを管理する埼玉県公園緑地協会(以下、協会)は3月5日、県営プールでの水着撮影会についての開催条件を発表しました。

 昨年6月、開催予定だったイベントの中止を協会が突然要請したことに始まった水着撮影会を巡る問題ですが、今回発表された新ルールのもと今年も埼玉県で水着撮影会は開催されます。

 新ルールでは過激な水着やポーズがNGとなったほか、18歳未満は出演者、参加者とも禁止に。外から撮影会が見えないよう遮蔽することも必須条件とされました。

担当者は「水着のトレンドや社会情勢も変わっていくため…」と説明する(公益財団法人埼玉県公園緑地協会「埼玉県営水上公園における水着撮影会開催の手引き」より )

「公営施設で水着撮影会を開催すべきではない」

 3月28日までに、匿名の有識者による検討会の議事録がすべて公開されたのですが、そのやり取りを見ると、賛成派と反対派の双方にとってバランスを取ったことがうかがえます。しかし、県営プールでの水着撮影会については表現の自由やフェミニズムも絡み賛否が分かれており、玉虫色とも言える着地に賛成派、反対派ともに不満の声を上げています。

 たとえば反対派は、この問題が始まった当初から現在まで「公営施設で水着撮影会を開催するべきではない」と訴えています。

 協会が発表した資料を読むと、地方自治法第244条の第二項「正当な理由がない限り、住民の利用を拒むことができないこと」、同条第3項「住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取り扱いをしてはならない」とあることが水着撮影会の開催継続の理由とされています。

 昨年6月の開催中止撤回の際、埼玉県の大野元裕知事は水着撮影会について「表現の自由で、公が介入するものではない」との考えを示していますし、それ自体が問題のあるものではありません。公共施設だから水着撮影会を開催中止にするべきではなく、むしろ公共施設だからこそ開催中止できないのです。

 念の為、協会の担当者に開催継続の理由について取材したところ「基本的に利用希望があれば、拒むことができないというのが大前提」といい、公共の場だからこそ受け入れるのが自然な流れとのことでした。

「18歳禁止のイベントとなったのだったら…」

 新しいルールについては賛成派にも疑問が上がっています。新たに過激な水着やポージングがNGとなりましたが、「18歳禁止のイベントとなったのだったら過激な水着やポージングをOKしては」というのです。

 この点に関して議事録などをみると、過去の判例から、イベント主催者、出演者、参加者の合意があったとしても、水着やポージングが仮に違法となった場合には、協会側もほう助罪に問われるおそれがあることから、ゾーニングがされた空間でも過激な水着やポージングはNGとしたと説明されています。

 3月5日に発表された「開催の手引き」についてネット上で話題となったのは、イラスト付きで紹介されたNGポージングや水着についてでした。

 昨年7月に暫定ルールが発表された際にもイラストが話題となっていましたが、今回の「開催の手引き」では「各10センチメートルの三角形以上の衣装(トップス)」、「足の付け根より高い位置にあるハイレッグ」などかなり細かく規定しています。

 議事録には名前こそ書かれていませんが、衣装のレギュレーションについては同人誌即売会「コスホリック」のものを参考にしているようで、水着のサイズの数値は全く一緒でした。

当のタレントたちの見解は

 水着やポージングの禁止で大きく影響を受けるのは出演者であるタレントです。プールでの水着撮影会に参加経験のある複数のタレントに話を聞いてみると、今回過激とされた水着やポージングをしていたタレントからは禁止に対して不満が漏れました。

 一方、同じく過激な水着やポージングをしたタレントの一人は「そうすることでカメラマンが集まるから続けていたけれど、どんどん過激化していって精神的に疲弊していた」と話してくれました。これまで過激な水着やポージングをしてこなかったタレントはNGとなったことに安堵していました。タレントによって捉え方はそれぞれで一概によかった、悪かったとは言えない状況です。

 ただし、撮影会用の水着を買いたいが、手引きは見たもののNGなのか、そうではないかで悩んでいるという声はかなりありました。

 例えば水着ボトムでNGとされる水着には「サイドが紐状で露出が過度」と短い説明がついているのですが、これをサイドが紐の水着はNGと捉えているタレントがかなり多いのです。

 協会の担当者に聞いたところ、あくまでサイドが紐状になった水着で露出が過度のものがNGということで、通常のサイズのボトムでサイドが紐のものについてはOKだといいます。

「突き出すポーズ」はどうなる?

 ポージングに関しても、バックショットで「突き出すポーズ」はNGとなっています。このことで武器をアピールできないとの嘆きもありましたが、これは後ろ向きになるポーズの全てがNGということではなく、例えば立ちのポーズであれば、90度以下の突き出しであればOKです。

 イラストから四つん這いポーズがNGと捉えるタレントもいましたが、「カメラマンに向けて突き出すのはNGですが、そうでない四つん這いのポーズはOKです」(協会の担当者)といいます。

 イラスト付きでわかりやすく説明しているとはいえ、どうしても認識の齟齬は出てしまいます。この辺りは主催者、タレント、協会の努力で溝を埋めていく必要はあるでしょう。

 レギュレーションについて、協会担当者は「水着のトレンドや社会情勢も変わっていくため、都度変更もあり得ます。開催条件はコロコロ変わるものではないですが、レギュレーションに関しては変更しやすいよう手引きという形を取っていますし、柔軟に対応していきます」と確定ではありません。

 今後も注視していく必要がありそうです。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。現在は退社し雑誌、ウェブで記事を執筆。個人ブログ「OUTCAST」も運営中。Twitter:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部