PCやスマホの処理速度をハードウェアのアップグレードなしで約2倍にして消費電力は半分にする方法を科学者が考案
一般的に、コンピューターの処理性能を上げるにはハードウェアそのものをアップグレードするか、コンピューターの動作環境を改善する必要があります。カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者らが、スマートフォンやノートPCに搭載されている既存のハードウェアを変更することなく、コンピューターの処理速度を2倍に向上させる新たな実行モデルを考案しました。
Simultaneous and Heterogenous Multithreading | Proceedings of the 56th Annual IEEE/ACM International Symposium on Microarchitecture
Method identified to double computer processing speeds | UCR News | UC Riverside
https://news.ucr.edu/articles/2024/02/21/method-identified-double-computer-processing-speeds
Radical New Discovery Could Double The Speed of Existing Computers : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/radical-new-discovery-could-double-the-speed-of-existing-computers
現代のコンピューターデバイスには一般的な処理を行うCPUに加えて、主にグラフィックの処理を担うGPUや機械学習用のテンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)など、複数のプロセッサやハードウェアアクセラレータが搭載されることが多く、実質的に異機種混在環境(ヘテロジニアス)であるといえます。
従来のプログラミングモデルでは、各コード領域において最も効率的な処理ユニットのみを使用することに重点が置かれています。表計算プログラムを実行するコードと生成AIテキストボットを実行するコードは、同じ方法で処理されるわけではないため、これは確かに理にかなっています。しかし、特定のプロセッサでタスクを個別に処理する方法では、ある処理を行ってから次の処理ユニットに情報を移す際にボトルネックが発生するとのこと。
そこで、カリフォルニア大学リバーサイド校の電気コンピューター工学准教授のHung-Wei Tseng氏らは、ヘテロジニアスなコンピューターの強みを最大限に生かすため、複数のプロセッサで同時に並列タスクを実行する実行モデルである「simultaneous and heterogenous multithreading(同時ヘテロジニアスマルチスレッド:SHMT)」を考案しました。
SHMTは従来のモデルとは対照的に、同じコード領域に対して異種タイプの処理ユニットを同時に使用可能だとのこと。さらに、SHMTはコードの並列実行を容易にするための抽象化とランタイムシステムを提供するとTseng氏らは主張しています。
Tseng氏らはSHMTをテストするため、ARM Cortex-A57 CPU、NVIDIA GPU、Google Edge TPUを含んだコンピューターシステムでサンプルコードを実行しました。その結果、SHMTによってサンプルコードの実行速度が約1.96倍になり、エネルギー消費量も51%削減できたとのことです。
既存の処理コンポーネントを同時に使用することで、ハードウェアのコストを節約できるだけでなく、エネルギー消費による二酸化炭素排出量も削減することができます。Tseng氏は、「すでにプロセッサを持っているのであれば、新たにプロセッサを追加する必要はありません」とコメントしました。
なお、SHMTはまだアイデアに可能性があるかどうかをテストしている段階であり、提案されたシステムをスマートフォンやスマートウォッチですぐに導入できるわけではないとのことです。