福島第一原発の事故発生から現在まで12年間に100回以上現場に足を運んで取材を重ねてきた烏賀陽弘道さんが9月25日の大竹まことゴールデンラジオに登場。大竹もまだ知らない福島の現状を伺った。

大竹「福島第一原発周辺では住めない町が増えてますが、どのくらいの広さになるんですか?」

烏賀陽「だいたい直径40キロの半円ですから、東京でしたら東京駅から八王子駅までが40キロですね。それを直径とする半円の中が全部無人になってしまったんですよ。」

大竹「ええっ!?」

烏賀陽「でかいですよ。実は、半径10キロですと人口の92%が避難でいなくなりました。避難先にもう定住しちゃったんですね。20キロ圏まで広げても、だいたい8割いなくなりました。」

大竹「住んでもインフラとか行き届いていない。」

烏賀陽「そうですね。買い物もできないし病院にも行けないというのが福島第一原発の周辺の実態ですね。政府はお金を出して、スーパーを営業しなさいとか、病院を作りなさいとか言ってるんですけど、戻ってくるのはだいたい高齢者のかたなんですね。そういう方々はもう車の運転もしんどいと。そういう方は、救済できないんですよ。一緒に住んでいた親世代、息子世代、孫世代は子どもが心配だから避難で移住したまま戻ってこない。だから、家計がおじいさんおばあさんの年金だけになっちゃうわけですね。すると、そもそも生活が成り立たない。昨今ガソリン代も値上がりしておりますでしょ。その中でどうやって暮らしていくのか、ということで訴訟が起きたりしてますね。」

大竹「私、74歳ですけども、ジジイが住めようが住めまいか元の場所に戻りたいっていうのもよくわかるし、若い人たちが、どうなるか分からないこの地で生活できないから出て行こうっていう思いも充分に理解できますね。」

烏賀陽「そういう世代間の温度差が非常に激しくて、そのために一家が引き裂かれるんですよね。孫と一緒にいたいおじいさんおばあさんと、「だめです。うちの子は」という嫁が対立して離婚に至るとか、本当にそういうこと多いですよ。」

大竹「一番今問題になっている、いわゆる処理水のことについてお話を伺いたいと思います。まず、この件は世界で初めて?」

烏賀陽「これは皆さん誤解が多くて、「トリチウムを含んだ水なら世界中で出してるからいい」みたいな暴論がいっぱいありまして。ただし、福島第一原発は、燃料棒に触れた水を「ALPS」で処理したとは言え、海に直接流す。これは世界初ですね。」

大竹「そうなってくると、世界で出してる処理水と、今度のいわゆる処理水の違いはあるんですか?」

烏賀陽「明確に違います。燃料棒に触れた冷却水は高い放射能を帯びておりますので、ぐるぐるループの中を回っているだけで絶対に外に出しません。最後は高レベル廃棄物として固体化して埋めてしまうんですね。じゃあ、なんで排水が出るのっていうと、熱交換器というものを使って、海水でもう一つのループを作るんですよ。この全く独立した2つの水のループの間を熱だけ移すんです。で、熱を海に捨てるんですよね。世界の「健全炉(事故を起こしていない普通に運転している原発)」はこれでやっております。ですから「健全炉」から出てくる排水には、一部トリチウムが入るんですけれども、例えば福島第一原発から検出されているセシウムとかストロンチウムとかは普通は出てこないですね。ごく微量です。」

大竹「福島はどうなってるんですか?」

烏賀陽「原子炉っていうのは、密閉されてるヤカンに燃料棒を突っ込んでお湯をぐらぐらわかしてたわけです。フクイチは燃料棒が溶けて落ちちゃったわけですよ。それが熱を放ってメルトダウンするというので、これはいかんと水をかけたわけですよ。そしたら水が溢れてきて、底が抜けてるのでジャーっと出てきたわけですね。それをALPSという濾過装置…これ実は冷蔵庫のキムコみたいな、活性炭みたいなもんで吸着させるんですよ。それを通すとアラ不思議!海に流しても大丈夫になるんですよ、というのが日本政府および東電の説明ですね。つまり、核物質に直接触れた水を海に放出するっていうのは、フクイチが最初ですね。」