『ガストリノーマ』を発症すると『腹痛・胃もたれ』といった症状が現れるの?【医師監修】

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ガストリノーマ」という病気をご存知でしょうか。あまり耳にすることのない病名なので、知っている人は多くないでしょう。

発病する確立は比較的稀であるといわれており、厚生労働省では「指定難病の要件を満たすことが明らかでない疾病」として認定されています。

そもそもガストリノーマとは一体どのような病気なのでしょうか。本記事ではガストリノーマにおける症状・診断・治療・予後などについて詳しく解説していきます。

早期発見する方法についても後ほどお伝えしていますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

ガストリノーマの症状や原因

ガストリノーマとはどのような病気ですか?

まずはガストリノーマとは一体どのような病気なのかについて解説していきましょう。ガストリノーマはガストリン産生腫瘍のことで、通常膵臓や十二指腸壁の細胞から発生する膵内分泌腫瘍の一種です。
結果として膵内分泌腫瘍が発生すると、胃酸の過剰分泌がおこり、進行の早い難治性の消化性潰瘍(ゾリンジャーエリソン症候群)を引き起こします。十二指腸壁および膵臓に発生することが通常ではあるが、体内の他部位のガストリン産生細胞から発生することもあるため注意が必要です。
そもそもガストリン産生腫瘍とは、主に胃の幽門前庭部に存在するG細胞から分泌される消化管ホルモンです。消化管ホルモンの働きは以下の通りになります。

胃主細胞からのペプシノゲン分泌促進作用

胃壁細胞からの胃酸分泌促進作用

胃壁細胞増殖作用

インスリン分泌促進作用

どのような症状が出るのですか?

膵臓や十二指腸壁の細胞から発生する膵内分泌腫瘍を発症した患者の約50%には、複数の腫瘍がみられる傾向にあります。
また、ガストリノーマは直径1cm未満と腫瘍が小さく、増殖はゆっくりと静かに進行するものです。進行はゆっくりですが、ガストリノーマの腫瘍の約50%は悪性です。
さらに、ガストリノーマ患者の約40~60%には多発性内分泌腫瘍症(MEN)という合併症を引き起こしていると判明しています。症状としては消化性潰瘍と似ています。主にみられる症状は以下の通りです。

腹痛(上腹部痛)

背部痛

食欲がない

吐血(鮮血または黒褐色化したコーヒー残渣様(ざんさよう)の吐血)

下血(大量出血の場合は泥状の黒色便や血性の便)

下痢(水様便)

胸焼け

胃もたれ

非常に稀ではありますが、全く自覚症状がないまま健康診断で偶然発見される場合もあります。

原因について教えてください。

ガストリノーマを発症する原因は、胃酸分泌サイクルと無関係にガストリンを血液中へ異常に分泌し続けることです。しかし、消化管ホルモンの過剰分泌についてはまだ詳しいことがわかっていません。
ガストリノーマ自体は「指定難病の要件を満たすことが明らかでない疾病」として認定されていますが、多発性内分泌腫瘍症を含む内分泌疾患は難病指定されています。

ガストリノーマが発生しやすいのはどこですか?

ガストリノーマを発症する部位の80~90%は、膵臓または十二指腸壁です。しかし、残りの発症部位は脾門・腸間膜・胃・リンパ節・卵巣と検査範囲が大きく広がります。
また、多発性内分泌腫瘍症を含む内分泌疾患などの合併症を引き起こしている可能性が極めて高くなるため、発見するのに時間がかかるといえるでしょう。転移する可能性が高い病気なので、膵臓または十二指腸壁での早めの発見が好ましいといえます。

ガストリノーマの診断や治療

ガストリノーマの診断方法を教えてください。

ガストリノーマは非常に小さな段階からホルモン症状を引き起こします。また、腫瘍が遠隔転移するケースも多いため、全身の検査を行う必要があります。検査内容は以下の通りです。

血清ガストリン値

CT

MRI

SRS(ソマトスタチン受容体シンチグラフィー)

PET(陽電子放出断層撮影)

ホルモン測定・生化学検査

超音波内視鏡検査

ガストリノーマにおいては、血清ガストリン値の測定が最も信頼できる検査とされています。血清ガストリン値でガストリノーマが確定した場合には、腫瘍の局在診断に移ることが多いです。
腫瘍の局在診断では、SRS(ソマトスタチン受容体シンチグラフィー)がCTとMRI検査よりも肝転移の同定率が高いことがわかっています。また、再発巣同定の感受性・特異性・精度においても良好であるといえるでしょう。
しかし、転移の徴候が認められず原発巣の位置も不明な場合には、超音波内視鏡検査を行うことがあります。超音波内視鏡検査の代わりに、選択的動脈内セクレチン注入法などの検査方法を行う場合もあります。診断の流れについては医師と相談して進めてください。

治療方法について教えてください。

まずは、胃酸分泌抑制の役割を持つプロトンポンプ阻害薬を使用することが多いです。第1選択薬であるプロトンポンプ阻害薬を使用すると、症状が消失する可能性が大いにあります。
胃酸分泌量が低下すれば用量を減らせますが、低下した胃酸分泌量を維持する必要があります。そのため、薬剤を無期限に服用しなければなりません。転移がみられない場合は、手術療法を行うことが多いです。
反対に転移が認められた場合には、化学療法が用いられます。化学療法では患者の50~60%に腫瘍量の減少と血清ガストリン濃度の低下がみられるため、オメプラゾールの補助として有用な治療方法です。ただし、化学療法は完全に治癒できる治療方法ではないことを覚えておいてください。

どのような手術が行われるのですか?

まずは、胃酸分泌抑制の役割を持つプロトンポンプ阻害薬を使用することが多いです。第1選択薬であるプロトンポンプ阻害薬を使用すると、症状が消失する可能性が大いにあります。
胃酸分泌量が低下すれば用量を減らせますが、低下した胃酸分泌量を維持する必要があります。そのため、薬剤を無期限に服用しなければなりません。転移がみられない場合は、手術療法を行うことが多いです。
反対に転移が認められた場合には、化学療法が用いられます。化学療法では患者の50~60%に腫瘍量の減少と血清ガストリン濃度の低下がみられるため、オメプラゾールの補助として有用な治療方法です。ただし、化学療法は完全に治癒できる治療方法ではないことを覚えておいてください。

ガストリノーマの予後や早期発見

ガストリノーマの予後について教えてください。

ガストリノーマを発症した場合の予後はあまり良くないとされています。孤立性腫瘍を外科的に切除した場合における5年および10年生存率は、90%を超えるため予後は良好といえるでしょう。
しかし、転移などにより不完全切除となった場合には5年生存率が43%、10年生存率が25%と低水準です。ガストリノーマだけでなく、難病指定にもなっている多発性内分泌腫瘍症を含む内分泌疾患の治療方法や予後には、まだまだ課題があるといえるでしょう。

ガストリノーマを早期発見する方法はありますか?

早期発見につなげるためには、毎年の健康診断を受けましょう。血液検査やスクリーニングによって、ガストリノーマを含む内分泌疾患を早期発見するカギとなります。
また、先述しているような症状がみられた場合にはすみやかに病院へ受診しましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

治療が難しいとされている「難病」という言葉に動揺してしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、転移していなければ治癒できる確立が格段に上がります。
体に少しでも異常を感じたら、まずは病院へ受診しましょう。毎年の健康診断を受けることも非常に大切なポイントです。

編集部まとめ


耳にすることが少ない病気ではありますが、非常に厄介な病気といえるガストリノーマについて解説していきました。

何度もお伝えしていますが、早期発見することで治癒する確立を上げられます。転移する前に治療を受けることが非常に大切です。

発症する人は比較的に稀ではありますが、健康診断によって早期発見に繋がることもあります。

また、消化性潰瘍と似た症状がみられる病気なので、体に違和感を覚えたらすみやかに消化器内科のある病院へ受診しましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。少しでも参考になれば幸いです。

参考文献

膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン

多発性内分泌腫瘍症(難病情報センター)

ガイドラインからみたガストリノーマの診断と治療