坐骨神経痛、頸椎ヘルニア… 自宅で実践したい運動・生活習慣を解説
頸椎ヘルニアや坐骨神経痛は、症状に長く悩まされている人が多いと聞きます。自分でできるちょっとした運動などで、症状を和らげることができればと思う人は少なくないはずです。そこで頸椎ヘルニア、坐骨神経痛などで悩む人向けに、自宅で実践できる運動、生活しやすい動作を柔道整復師の長島康之先生(nicori整骨院)に教えてもらいました。
「頸椎ヘルニア」ってどんな状態? 首以外に症状が出る原因も教えて!編集部
「頸椎ヘルニア」とはどんな病気ですか?
長島先生
頸椎ヘルニアは、正式には「頸椎椎間板ヘルニア」という名前の疾患です。「椎骨」という骨が連結して、「脊椎」(いわゆる背骨)を形成しているのですが、この椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている「椎間板」が潰れて、近くの神経を圧迫してしまうのが「椎間板ヘルニア」です。脊椎の中でも、首の部分にある「頸椎」の椎間板で起こるヘルニアが頸椎椎間板ヘルニアになります。
編集部
どんな症状がでるのですか?
長島先生
脊椎には多くの神経があり、どの神経が圧迫されるかによって症状も様々です。痛みや痺れ、動かしにくさのほか、感覚が鈍くなったり、冷えたりするような症状を訴える方もいます。また、症状のでる部位も首周辺だけでなく頭痛、手先の痺れなど、こちらも様々です。
編集部
では、頸椎ヘルニアにはどんな治療法があるのですか?
長島先生
大きく分けると、手術療法と保存療法の2種類があります。しかし、日常生活が送れなくなるほど症状が重度の場合を除くと、ほとんどのケースはまず保存療法で様子を見ます。保存療法には、手技療法や運動療法、温熱療法などがあります。
編集部
では、自分でできる運動などはありますか?
長島先生
頸椎ヘルニアの方は腹圧を高めたり、胸椎(背中)の可動性を上げたりすると、症状の緩和が期待できます。いわゆる「体育座り」の状態で、意識して呼吸をすると腹圧も高まりやすく、胸椎の動きも出やすいので、患者さんにはよく試してもらっています。
坐骨神経痛はどうして起こる? 自分でできるケアはある?編集部
坐骨神経痛はどんな病気ですか?
長島先生
正式名として「坐骨神経痛」という病気はありません。病気の名前ではなく、症状の名前だと思っていただいたほうが良いですね。坐骨神経痛は、腰から足にかけて伸びている「坐骨神経」がさまざまな原因によって圧迫・刺激されることで表れる痛みや痺れなどの症状の総称です。最初は腰だけが痛くなる場合が多く、続いて臀部や太ももの後ろ、ふくらはぎ、足先などに痛みや痺れが表れます。
編集部
坐骨神経痛にはどんな治療法があるのですか?
長島先生
こちらも、手術療法と保存療法に分けられます。保存療法には、血流を改善させるための温熱療法、筋肉を適度に動かすための運動療法、あとは病態によってはベルトやコルセットなどの装具療法が用いられることもあります。
編集部
こちらも改善のために自分でできる運動があれば教えてください。
長島先生
坐骨神経痛には、腹圧を高めることや体幹のトレーニングに加えて、股関節の柔軟性がとても大事です。例えば仰向けに寝て、片方の膝を抱え込むようにするだけで、股関節周囲の筋肉のストレッチになります。坐骨神経痛に悩む方は、ぜひ試してみてください。
編集部
では、生活習慣などで気をつけることはありますか?
長島先生
基本的なことですが、同じ姿勢を長く取らないようにしたり、ストレスを溜めないようにしたり、睡眠時間をしっかり取ったりすることを心がけてみてください。また、坐骨神経痛に悩む方は、反り腰の方が多い傾向にあります。例えば座る時なども、お腹が前に出過ぎないように、少し専門的に言うと、「骨盤を後傾すること」を意識していただくと良いと思います。
セルフケアでも良くならない不調はどうしたら良い?編集部
これらの運動をする際、気をつけることなどはありますか?
長島先生
頸椎ヘルニアも坐骨神経痛も同じことが言えますが、これらの運動を行っても、良くならない方もいらっしゃいますし、逆に悪化してしまう場合もあるということです。首や腰の神経は、体の中でも非常に大事な部分ですので、今回はあくまで一例としてお伝えしましたが、数日やってみて効果が感じられなかった場合などは、無理して継続しないようにしてください。
編集部
症状が悪化してしまうこともあるのですね。
長島先生
そうですね。頸椎ヘルニアや坐骨神経痛に限らずですが、残念ながら「どんな人でも100%症状が改善する運動」というのはありません。ある人にとっては効果のある運動が、別の人にとっては逆効果ということもあります。悪化するリスクをなくし、より効果的に症状を改善させるためには、整骨院などで専門家にきちんと診てもらい、自分の体に合った運動を指導してもらうのが一番です。
編集部
整骨院では、運動指導のほかにどんなことを行っているのですか?
長島先生
まずは、それぞれの不調や痛みの原因を分析し、必要と思われる手技療法や微弱電流、電気治療、温熱機器などを用いて施術を進めていきます。さらに、症状に応じて、肩甲骨や胸椎、骨盤や股関節など、骨格のバランスを整える施術も行います。そして、再発防止のために、自宅でできる柔軟性を高めるセルフケアや安定性を高める運動などもお伝えしています。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
長島先生
頸椎ヘルニアや坐骨神経痛については、筋肉・骨格の問題ももちろんありますが、心理的な面が影響しているケースも多く見受けられるので、これらに悩んでいる方はストレスや生活環境などをまず見直してみましょう。とは言え、「ストレスを無くしましょう」と言われたところで、思ったようにコントロールできない方がほとんどかもしれません。そういった方には、例えば当院のようにコーチングなどの心理的サポートも取り入れてアプローチしている施設に相談するのもお勧めです。
編集部まとめ
運動や生活習慣の見直しで、改善が期待できるのはとても嬉しいところです。しかしながら、「どんな人でも100%症状が改善する運動」というものはなく、やはり個々に合わせた運動指導が大事。必要に応じて、整骨院などにたよることも検討してみてください。
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