「血糖値」とは?基準値や病気のリスク・改善方法などを医師が徹底解説!
血糖値とは?Medical DOC監修医が血液検査でわかる血糖値の見方や基準値・数値が高くなる主な原因と病気のリスク・対処法などを解説します。
血糖値とは?
血糖値とは、血液の中に含まれるブドウ糖(グルコースともいいます)の濃度のことです。
食べ物や飲み物の中に含まれている炭水化物などが消化・吸収されると、ブドウ糖となり血液中に入ります。
そのため、血糖値は食後と食前でも変化がみられます。
血糖の濃度が上がると、膵臓(すいぞう)が分泌する「インスリン」というホルモンの作用により、ブドウ糖が細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されるという役割を担っています。余分なブドウ糖は、グリコーゲンに変換され、肝臓や筋肉に蓄えられます。
一方、空腹になると血糖値が下がるので、膵臓が「グルカゴン」などのホルモンを分泌し、蓄えられたグリコーゲンをブドウ糖に分解してエネルギーとして使い、血糖値を正常に戻します。
このように血糖値は体内で一定に保たれるよう調整がなされています。
血糖値が高い場合のリスクと対策
では、血糖値が高い場合のリスクとその対策について述べていきます。
血糖値が基準値より高いとどうなる?
血糖値の基準値は、空腹時には約70~100mg/dlの範囲にあります。
血糖値が高い原因としては、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの量が重要です。
膵臓のインスリンの分泌量が少なかったり、インスリンの働きが悪かったりすると、血糖値が高くなってしまうのです。
血糖値が高いだけでは自覚症状は特にありません。
しかし、血糖値が慢性的に高い状態が続くと、血管を傷つけ、動脈硬化を引き起こし、糖尿病などの様々な病気が発症する危険性が高まります。
血糖値が上がりやすい食べ物として、一般的にはすぐにエネルギーになりやすい、ごはんやパン、果物、砂糖などの炭水化物が多いものがあります。
血糖値の上がりやすさを表す指標としては、GI(グリセミック・インデックス)があります。GI値が高い食べ物を食べると血糖値は急上昇し、逆にGI値が低い食べ物を食べると血糖値は緩やかに上昇します。
健康診断で血糖値が高いと言われたら?
健康診断で血糖値が高いといわれ、再検査が必要な場合には、まずは医療機関で詳しい検査を行い、治療が必要な糖尿病かどうかを調べてもらうことが大切です。
一方、血糖値が高めではあるけれど服薬治療が必要なレベルではない、という場合には、生活習慣を見直し、血糖値を急激に上げないような食事の工夫をしていきましょう。
血糖値を下げる方法は?
血糖値を下げる方法としては、まずは食事や運動などの生活習慣を見直していくことが基本となります。
生活習慣改善によっても血糖値が下がらない場合には、経口血糖降下薬や、インスリンなどの薬物療法を行うことになります。
血糖値が低い場合のリスクと対策
今までは血糖値が高い場合について述べました。一方で、血糖値が低いことによるリスクと対策についても解説していきます。
血糖値が基準値より低いとどうなる?
血糖値が低い状態を低血糖とよび、診断基準は以下のようになっています。
低血糖症状があってもなくても、血糖値が70mg/dLより低い場合
血糖値が70mg/dLより高くても、低血糖症状のある場合
低血糖を起こす原因は、糖尿病治療中の方で、食事量や炭水化物が不足した場合や、インスリン注射の単位や飲み薬の量が多かった場合、アルコール摂取、空腹での運動、また、薬を使った後の食事時間の遅れなどがあります。
低血糖の症状は、以下の2つに大きく分けられます。
交感神経症状:低血糖時に分泌されるホルモンによる自律神経系の症状
発汗、不安、頻脈、手や指の震え、顔面蒼白などがあります。中枢神経症状:
ブドウ糖が足りないことによる中枢神経機能の低下による症状
血糖値が50mg/dl程度では、頭痛、目のかすみ、集中力低下、生あくび、眠気などの症状が出始め、さらに血糖値が低下すると、異常行動、けいれん、意識が遠くなる、意識消失といった生命に関わる症状がでることもあります。
このうち、[1]の交感神経症状は、[2]の中枢神経症状が出る前に現れるために、警告症状とも呼ばれます。
健康診断で血糖値が低いと言われたら?
健康診断で血糖値が低いと言われた場合、糖尿病治療中であれば主治医に相談し、インスリンや経口糖尿病治療薬の量や飲み方があっているかどうかを確認しましょう。
糖尿病治療中でない場合には、血糖値が下がるような原因となる病気がある可能性もあるので、内分泌内科などの専門科を受診しましょう。
血糖値を上げる方法は?
低血糖が起きた場合に、口から食べ物を摂取することが可能であれば、ブドウ糖10~20gを経口摂取しましょう。昏睡状態など口から摂取できない場合、点滴でブドウ糖を補うことになります。
健康診断の血糖値の見方と基準値・再検査が必要な数値・診断結果
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
健康診断・血液検査の「血糖値」の基準値
健康診断では、通常は空腹時の血糖値と、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が計測されます。
人間ドック学会によれば、空腹時血糖値は下記のように定義されています。
定義数値
基準範囲99mg/dL以下
要注意100~125mg/dL
異常126mg/dL
なお、空腹時血糖値の平均値と年齢の関係を見ると、男性では60~64歳でピークになるのに対し、女性では年齢が上昇するにつれ緩やかに空腹時血糖値も上がるというデータもあります。
HbA1cは、血液検査をする1~2ヶ月の血糖の推移を反映する値で、空腹時血糖値よりも長い間の血糖値を評価することができ、下記のように定義されています。
定義数値
基準範囲5.5%以下
要注意5.6~6.4
異常6.5%以上
特に、空腹時血糖値が126mg/dL以上かつ、HbA1c6.5%以上ならば、糖尿病と診断されますので、危険といえるでしょう。
一方、血糖値が低い場合については、健康診断などでは明確には基準値が定められてはいないので、健康診断を受けるクリニックなどで基準をそれぞれに設けている場合が多いでしょう。
一般的には血糖値が70mg/dL以下になると低血糖症状が現れ、30mg/dLになると痙攣や脳障害、10mg/dL以下になるまで低下すると死に至ることもあるため危険です。
健康診断・血液検査の「血糖値」の異常値・再検査基準と内容
健康診断で血糖値が高いあるいは低いといわれた場合には、内分泌内科や糖尿病内科を受診するとよいでしょう。
血糖値が健康診断の際に高く出る病気の代表には糖尿病がありますが、その他の病気でも一過性の高血糖状態となることがあります。
糖尿病の診断のためには、慢性的に高血糖状態であることを証明する必要があります。
そのため、ブドウ糖負荷試験(OGTT)という糖尿病診断の精密検査を行うことになります。
この試験は、ブドウ糖シロップを飲み、飲む前と飲んだ後30~60分おきに採血し、空腹時とその2時間後の血糖値(食後血糖値)を測定します。
こうして空腹時の血糖値と、ブドウ糖負荷試験の結果を組み合わせ、糖尿病型と境界型、正常型の3つに分類します。
そして、血糖値とHbA1cがいずれも糖尿病を疑う数値の場合には、糖尿病という診断となります。糖尿病と診断がついた場合には、食生活や運動習慣などの生活習慣改善や、経口血糖降下薬の内服、場合によってはインスリン治療が行われます。
そうでない場合にも、定期的な再検査や通院は必要となります。
健康診断で、要精密検査と言われた場合には、なるべく早く医療機関を受診することが望ましいです。
費用については保険診療となるので、初診料や血液検査費用など、5,000円~7,000円程度を用意しておけばよいと思われます。
健康診断・血液検査の「血糖値」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「血糖値」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
糖尿病
糖尿病は、インスリンというホルモンの分泌が不足したり、作用が低下したりすることで、血糖値の上昇を抑える働きが低下してしまうため、高血糖の状態が慢性的に続く病気です。
糖尿病には、インスリン依存型と言われる1型糖尿病、インスリン非依存型といわれる2型糖尿病などがあります。
1型糖尿病は、自己免疫性疾患などが原因となりインスリン分泌細胞が破壊されてしまうもので、インスリンの自己注射が必要となります。
2型糖尿病は、遺伝的な要素に、過食や運動不足、肥満などの生活習慣が重なって発症します。糖尿病の多くはこの2型糖尿病です。
糖尿病は自覚症状がないまま進行し、微小血管障害である網膜症・腎症・神経障害といった3大合併症や、大きな血管の動脈硬化が進行し、心臓病や脳卒中のリスクが高まるという恐ろしさがあります。
健康診断で血糖値が高く、糖尿病の疑いがあるといわれたり、口が渇く・頻尿になる・体重が減るといった症状があったりするようであれば、早めに内分泌内科・糖尿病内科を受診するようにしましょう。
低血糖症
低血糖症は、血糖値が低い状態のことで、診断基準としては以下のようになっています。
低血糖症状があってもなくても、血糖値が70mg/dLより低い場合
血糖値が70mg/dLより高くても、低血糖症状のある場合
発症の原因は、糖尿病の治療中の方で、インスリン治療や経口糖尿病治療薬によるものが多いです。
一方、糖尿病以外の疾患では、インスリノーマというインスリンを大量に分泌する腫瘍があたり、インスリンの作用を抑える働きのあるホルモンが十分に分泌されなくなるような病気(下垂体前葉機能低下症、副腎皮質機能低下症など)もあります。
血糖値が低いと健康診断などで指摘された場合には、早めに内分泌内科・糖尿病内科を受診するようにしましょう。
もしも糖尿病の治療中で低血糖症状がでた場合には、ブドウ糖タブレットや飴をまずは食べ、その後主治医に相談するようにしましょう。
「血糖値」が高い時、低い時の正しい対処法・改善法は?
血糖値が高いだけでは症状は出現しないことが多いのですが、高いままで放置しておくと、糖尿病になるリスクが高まります。
まずは、血糖値が高いことへの対処方法について、糖尿病の診療ガイドラインを参考にして解説します。
食事については、総エネルギー量を適正なものとし、適正体重を目標とします。
糖尿病の場合には、栄養の比率として炭水化物50~60%エネルギー、タンパク質20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とすること、また、炭水化物摂取量にかかわらず、食物繊維は1日20g以上とることが推奨されています。
血糖値を下げる運動としては、ウォーキングなどの有酸素運動や、強度が高いレジスタンス運動があります。これらの運動を組み合わせることで、血糖値が下がる効果が出ているという報告もあります。そして、日常生活で階段を使ったり歩くようにしたりする、といった運動量を多くする工夫も、体重の減少に効果的と示唆されています。
一方、血糖値が低い場合にはブドウ糖や砂糖、ブドウ糖を含む清涼飲料水を摂るようにします。糖尿病の治療中の場合には、主治医にあらかじめ低血糖症状がでた際の対処方法について確認し、家族や周囲の人にも知っておいてもらう必要があります。
特に、車を運転する際には注意です。2014年6月から改正道路交通法が施行されており、自動車免許を取得・更新する際には無自覚性低血糖の有無や、血糖コントロールがきちんとされているかどうかが重要になるとされています。低血糖を起こさないように注意することと、無自覚性低血糖の経験がある場合には自動車運転について主治医に相談をしておくことが大切だと考えられます。
現在、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスによる、非侵襲型つまり針を刺さずに血糖値が測定できるような技術開発が進んでいます。現時点ではまだ実用化には至っていませんが、今後も注目される技術と考えられます。
「血糖値」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血糖値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
健康診断で血糖値が高いと言われたらどんなリスクがありますか?
木村 香菜 医師
健康診断で血糖値が高いと言われた場合には、糖尿病になっている可能性があります。糖尿病になると、動脈硬化がすすみ、腎機能障害や視力低下・失明、神経障害のほか、心血管障害や脳卒中になるリスクが高まります。
空腹時の血糖値が100mg/dL以上だとインスリン治療が必要ですか?
木村 香菜 医師
空腹時血糖値が100mg/dL以上の場合、将来的に糖尿病に進行する可能性は、空腹時血糖値が正常な人と比べると多少は高くなるようです。
しかし、1回の血糖値測定のみでは、現在治療が必要な状況なのか、あるいは生活習慣改善などで血糖値を下げていき様子をみる段階なのかを判断するのが難しいのです。そのため、空腹時血糖値が100mg/dL以上の場合だからといって、必ずしもインスリン治療が必要となるとは限らない、といえます。
血糖値を下げる食べ物や飲み物はありますか?
木村 香菜 医師
血糖値を下げる食べ物として、食物繊維が豊富な食品が挙げられます。
例えば、昆布やわかめなどの海藻類や、きのこ類、野菜があります。
血糖値を下げる飲み物というのは特にはないのですが、血糖値が高い人は糖分が含まれていない飲み物、例えば水や麦茶、ブラックコーヒーを飲むようにすると良いでしょう。
血糖値が高い人が食べてはいけないものはありますか?
木村 香菜 医師
血糖値が高い人が食べてはいけないものは特にありません。
肥満にならないようにすることが、血糖値のコントロールには大切なので、適切なカロリーの食事になるようにしましょう。
また、血糖値を急に上げない食べ方として、最初に野菜などの食物繊維が豊富な食べ物を摂ることなどがあります。
お菓子や糖質量が多く、食べ過ぎると血糖値の上昇の原因になります。そのため食べすぎないように注意が必要です。
血糖値スパイクとはどのような状態ですか?
木村 香菜 医師
血糖値スパイクとは、食後の血糖値が急上昇と急降下を起こす状態のことです。
膵臓の老化や肥満などが原因となり、インスリンを分泌する能力が低下すると、インスリン分泌量が減り、分泌が遅くなってしまいます。このため、食後の血糖値が急激に上昇し、逆に血糖値を下げようとインスリンが大量に分泌されてしまうため、今度は血糖値が急に下がってしまいます。こうした血糖値の乱降下が、血管に対してダメージを与え、動脈硬化が引き起こされ、心筋梗塞や脳卒中による突然死のリスクが高くなってしまうと考えられます。
血糖値を測定するための測定器もあり、インスリン治療を行っている患者さんで、保険診療上の条件を満たす場合には医療機関で処方してもらえます。
まとめ 「血糖値」の異常は高血糖や低血糖に注意!
今回は、血糖値の異常として、糖尿病などの高血糖状態や、低血糖について解説しました。
糖尿病は、進行しない限り症状が出ないことが多いため、日頃から太りすぎないように気をつけ、健康診断で異常が指摘された場合には、内分泌内科や糖尿病内科などを受診するようにしましょう。
まずは、食生活や運動習慣の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。
「血糖値」の異常で考えられる病気
「血糖値」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内分泌系の病気
糖尿病インスリノーマ副腎皮質機能低下症下垂体前葉機能低下症
血糖値の異常には、糖尿病が原因となっている場合の他、インスリノーマなどの腫瘍性病変や、副腎皮質機能低下症などの病気が隠れている場合もあります。健診などで血糖値異常を指摘された場合には早めに医療機関受診を検討しましょう。
参考文献
糖尿病(e-ヘルスネット)
血糖値(e-ヘルスネット)
低血糖(糖尿病情報センター)
糖尿病診療ガイドライン2019(日本糖尿病学会)