ビクトリノックスが作るとシースナイフだって多機能になるんです

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【アウトドア銘品図鑑】

ビクトリノックスといえばクロス&シールドが記された赤いハンドルに驚くべき機能を盛り込んだマルチツールをイメージしますが、この夏登場した「ベンチャー」コレクションは刃厚3.4mmのフルタングナイフ。2019年登場の「アウトドアマスター」シリーズに次ぐバトニング対応のシースナイフです。

シースナイフに機能を持たせるといっても、角がたったバックブレードとファイヤースターターを装備するくらいしかイメージできず、「アウトドアマスター」もそういった標準的なシースナイフだったんですがそこはビクトリノックス! 「ベンチャー」コレクションはひと味違った多機能ぶりなんです。

■ビット用ホールを備えた「ベンチャー」シリーズ

なんてことないシースナイフに見えますが、「ベンチャー」コレクションはグリップエンドに六角形のホールを備えています。

▲「ベンチャーPro」。全長24.2cm、重量210g(シース込み)

「ベンチャー」コレクションは、「ベンチャー・プロ」(1万6500円)と「ベンチャー」(1万3200円)の2モデル。どちらも刃渡り10.5cm、刃の幅2.7cmのブレードを備えたフルタングで、グリップの先に飛び出したところには六角形の穴を備えています。

この穴に手持ちのビットを差し込めば、工具として使うことができるんです。

たとえば「ベンチャー」シリーズのひとつ、「ベンチャーProキット」(7700円)には2cmのフラットドリルが付いているので、これを使ってナイフでは作りにくい穴あけだってできる!

直径2cmの穴ができるので、ハンガーを作ったりハシゴを作ったりなんてときにロープを通す穴あけにちょうどいいんですね。

ブレードは14C28N。マルテンサイト系ステンレス鋼というもので「ベンチャーPro」の場合、硬度を示す数値は59HRC。硬く、よく切れます。

もちろんバックブレードはピチッと角が立っていてファイヤースターターの使用もOK。そして先端近くには溝が刻まれています。硬い木を削るなんてときに、利き手とは反対側の手を添えることがありますが、そんな風に力を込めてもすべりにくいというわけ。

▲樹脂製シースに口をあてても違和感がない

樹脂製のシースにもちょっとした機能が搭載されています。先端に小さな穴が空いていますが、これは湿気をためないためであると同時に火ふき棒代わりにするためのもの。

写真のようにグリップ側の穴を塞ぐようにして持ち、息を吹き込むとちょうどいい量の空気が出るんですね。

■「ベンチャーPro」は弓ぎり式火起こしをサポート

ここまでは「ベンチャー」コレクション共通の仕様ですが、ここからは「ベンチャー・プロ」のみの機能です。

▲「ベンチャー」には付属されていないキャリングケース(写真左)付き

ケースはシースだけを取り出し、付属のベルトを取り付けて軽快に持ち運ぶことも可能です。

▲写真上よりピンセット、ボールペン、ファイヤースターター

樹脂製のキャリングケースにはピンセットとボールペン、ファイヤースターターを搭載! ビクトリノックスはこうでなくちゃ。

しかもこのケース自体がなかなか多機能なんです。

▲「ベンチャーProキット」

「ベンチャーProキット」は、先ほど登場したフラットドリルと半円柱の砥石(2個入り)とポーチのセットです。

この「ベンチャーProキット」のポーチ外側に取り付けられたベルトを「ベンチャーPro」のケースに取り付ければまとめて持ち運べるというわけ。

半円柱の砥石を、「ベンチャー」のキャリングケースに立てていつでもどこでもケアできるようになっているんです。

「ベンチャーPro」にはハンドルの真ん中あたりに金属パーツが装備されています。これは弓ぎり式火起こしの棒を押さえつけるためのもの。もう押え板を作る必要はありません。

「ベンチャーProキット」のキャリングケースにはファイヤースターターが付属しているのに、あえて弓ぎり式火起こし用の機能を装備する。なんだかロマンを感じます。

それに「ベンチャーPro」と「ベンチャーProキット」、そして好きなビットをまとめて持ち運べば、火起こしもクラフトもかなり楽になる。ビクトリノックスの折りたたみ式マルチツールも優秀ですが、「ベンチャーPro」と「ベンチャーProキット」の最強コンビはまた別のベクトルで便利なギアに仕上がっています。

■MOLLE&Tek-Lok対応で最強コンビを持ち運べる

ちなみにキャリングケースをベルトに通せるのは当たり前。

「ベンチャーPro」と「ベンチャーProキット」はMOLLEシステムやTek-Lokにも対応しています。

樹脂製のキャリングケースには、いろいろな穴が空いていることがわかります。

ケース両端の細長い穴はベルトに通すのにちょうどいい感じだし、中央の3つの小穴がTek-Lok対応の穴。裏に「ベンチャーPro」を取り付けても干渉しない位置です。

▲すっきりまとめて持ち運べる

ちなみに、「ベンチャー」のシースや「ベンチャーPro」のシースのみでは、「ベンチャーProキット」の間に挟むことはできますが、「ベンチャーPro」のキャリングケースのように固定して一体化させることはできません。

*  *  *

ビクトリノックス「ベンチャー」コレクションは火ふき棒替わりになるケース、ビットが使えて思った以上にマルチツールっぽい仕上がりです。とはいえ「ベンチャー」コレクションの刃は厚さも通常のブッシュクラフトナイフと比べてベベルがないフラットグラインドで、更に厚みも薄目。

これは細い枝の薪割りやフェザースティック作りから料理にまで使えるよう、刃の厚みと形状を研究したためだそう。

調理からバトニング、ブッシュクラフトなどマルチに使えるんですね。

さらに上級モデルの「ベンチャーPro」ともなるとフィールドに出る際、忘れがちなボールペンやピンセットまで付いています。手持ちの折りたたみ式マルチツールとともに備えておけば、キャンプにも防災にも役立ちそうですね。

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<取材・文/大森弘恵>

大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter

 

 

 

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