キング・オブ・ジーンズ「リーバイス501」を知る【VINTAGEコレクター案内書】

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【VINTAGEコレクター案内書】

世界中の人々に愛される“ジーンズのスタンダード”といえば、誰もが知るリーバイスの「501」。今年、生誕150周年を迎えたこの傑作モデルの歴史を、時代とともに変化するディテールとともに紐解いていく。

*  *  *

1873年にリーバイスが「衣料品のポケットの補強にリベットを使用する方法」に関する特許を取得。こうして世界初のジーンズが誕生し、「501」の名が商品に付けられたのが1890年。以降、時代とともに変化し続け、1936年、アイコンの1つ“赤タブ”が初めて採用される。今、世界中で愛される「501」のスタイルがここに完成した。だがそれも、あくまで“その時代の”という注釈付き。

「ベルベルジンで取り扱うヴィンテージの『501』を並べてみても、同じモデル名でありながら、大戦モデル、レザーパッチ、紙パッチ、ビッグEに、赤耳まで、ディテールが変化し続けており、それぞれにファンがいます。これを言い換えるならば、どの時代のモデルでも流行り廃りなく楽しめるということです」

常に変わり続け、完成形が未だ定まっていないからこその“永遠のスタンダード”。「501」が時代を超えて愛されている理由を見た。

※各モデルの年代はおおよそのもので、ディテールに関しての記載も含め、編集部調べで諸説あります。ご了承ください。

ベルベルジン 副店長 野原由太郎さん
今年25周年を迎えた原宿のヴィンテージショップ「ベルベルジン」の副店長。YouTubeチャンネル「ベルベルジン CH」にて古着に関する様々な情報発信も行われている

 

【501XX(1937〜42)】
後に象徴となるディテールがここで出揃う通称 “37モデル”

リーバイス
「501XX(1937)」(ベルベルジン販売価格:275万)

今ではブランドの象徴となった赤タブが、1936年から採用される。さらに剥き出しだったバックポケットのリベットは隠しリベットに。消えたディテールと今なお残るディテールが混在する、過渡期ならではの一本である。

▲洗濯と乾燥を繰り返して大きく縮み、今やわずかに残存しているのみの革パッチ。値段を左右する評価ポイント

▲露出していたヒップポケットのリベットは隠しリベットに。大きくラウンドしたアーキュエイトステッチも見もの

▲サイズ調整に使用されるシンチバック(尾錠)は、ベルト普及率の低かった1940年代までのモデルに見られる特徴

▲なにかとダメージを受けやすい股部分の補強として設けられた銅製のリベット。これが存在するのは1941年までだ

 

【S501 XX(1942〜45)】
第二次世界大戦下の物資難で全体のディテールを簡素化

リーバイス
「S501XX WW2」(ベルベルジン販売価格:275万円)

第二次世界大戦下で軍需生産を優先させるため物資調達が困難に。そこでディテールを簡略化して誕生したのが、通称“大戦モデル”。頭に付くSはSimplified=簡略化)の意味。本モデルを憧れの一本に挙げるファンも多い。

▲月桂樹ボタンとドーナッツボタンが特徴だが、本個体はリーバイボタンを使用しているため初期のモデルと判る

▲バックポケットのアーキュエイトステッチはペンキで描かれた。消えてしまっていることが、その証左といえる

▲簡略化は細部にまでも及び、懐中時計を収納するためのウォッチポケット(コインポケット)のリベットも廃止

 

【501XX(1947〜57)】
レザーパッチにリベットとディテール復活で完成度UP

リーバイス
「501XX LEATHER」(ベルベルジン販売価格:65万7800円)

第二次世界大戦の終戦に伴い、代用されていたパーツや簡略化されていたディテールが一気に復活。アーキュエイトステッチが2本針になったのも見逃せない。ただし股リベットだけは、復活せずに消えていった。

▲パッチはレザー製。かなり縮んでいるので判別が難しいが、モデル名の頭に記載されていた“S”の文字も消える

▲アーキュエイトステッチが2本針ステッチで復活。赤タブはビッグE片面刺繍が、1953年から両面刺繍へと変更

▲フライ部分の先端(持ち出し)が切りっぱなし仕様から、折り込み仕様へと変わる。裏返してみれば一目瞭然だ

 

【501XX(1962〜65)】
チェックすべきは紙パッチ最後のXX、通称“ギャラなし”

リーバイス
「501XX」(ベルベルジン販売価格:87万7800円)

パッチが革から紙に変わったのは1世代前の“ギャラ入り”から。本個体はパッチにギャランティ表記のない、通称“ギャラなし”だが、細部にギャラ入りの特徴も残る。このことから過渡期にあたる1962年製と思われる。

▲1957年より革パッチから紙パッチに。パッチに“Every Garment Guaranteed”の記載はないので、通称“ギャラなし”

▲赤タブをよく見ると、LEVI’SのVが両面とも左右均等に刺繍されている。均等Vと呼ばれ、1966年頃までの特徴だ

▲ポケット中のスレーキに打たれているリベットは、鉄製銅メッキの打ち抜き。これは1962年頃までの特徴である

 

【501(1966〜67)】
型番の急な変更で生まれたコレクタブルな仕様が魅力

リーバイス
「501」(※ベルベルジン スタッフ私物)

紙パッチに型番が2つ印字された、通称“ダブルネーム”。1966年にXXの表記が姿を消し、「501」に型番が変わる。これによる混乱を避けるため旧型番を併記したのだ。本個体はパッチが紛失するも、下記条件を満たすことから同モデルの可能性が高い。

▲トップボタン裏にはアルファベット1文字の刻印、さらにはV状のステッチ、ウエスト上部がシングルステッチ

▲股部分はステッチで補強するカンヌキ止め。写真のようにシングルステッチ部分とズレて縫製しているものを、ズレカンと呼ぶ

▲赤タブはビッグE表記。股と同じくポケットの隠しリベットも廃止され、バータック(カンヌキ止め)に変わる

【501(1973〜76)】赤タブがスモールeにシフト縦落ちが楽しめる“66前期”リーバイス
「501(66 SS)」(ベルベルジン販売価格:6万5780円)

最大の特徴が、赤タブに刺繍されていたLEVI’Sの文字がLeVI’Sへと変わったこと。また“縦落ち”と呼ばれる美しい色落ちが楽しめるのも、このモデルまで。1966年製造だから“66”と勘違いする人も多いが、実は違う。

▲社名の変更で、1973年頃から赤タブの表記がビッグEからスモールeに。ヴィンテージ好きには重要なポイント

▲バックポケット裏はシングルステッチ。1977年頃から登場する“66後期”では、ここがチェーンステッチに変わる

▲トップボタン裏の刻印は6。覚えやすい特徴だが、同じ6でもビッグE表記のものも存在するので、注意が必要

 

【501(1977〜79)】
一部のディテール以外は前期とほぼ変わらぬ “66後期”

リーバイス
「501(RED LINE 66後 L/CUT)」(ベルベルジン販売価格:28万3800円)

バックポケット裏がチェーンステッチになった以外は“66前期”とほぼ同様。生地の縮み率が8%は本モデルまで。デッドストックでありながら前出の“66前期”より安いのは丈詰めされているから。

▲赤タブはもちろんスモールe表記。あとで紹介する“赤耳”に比べると、文字の刺繍がやや粗い印象を受ける

▲フロントのトップボタン裏の刻印が6。“66”の前・後期に共通するディテールとしては、もっとも分かりやすい

▲バックポケット裏のステッチは、“66前期”がシングルステッチだったのに対し、堅牢なチェーンステッチを採用

 

【501(1980〜86)】
ヴィンテージ501と呼べるのはこの“赤耳”まで

リーバイス
「501(RED LINE DS)」(ベルベルジン販売価格:32万7800円)

赤いラインが走るセルビッチ、通称“赤耳”。このビッグEと並ぶヴィンテージ501のアイコンを有する最終型。後継モデルは“脇割り”と呼ばれ、80年代製造の両方をまとめて“ハチマル”と呼称したりもする。

▲バックポケットが表側からステッチで補強する表カンヌキに変わっている。このディテールは1982年以降に登場

▲トップボタン裏は、基本的に5から始まる3桁の数字が打たれる。若干見えづらくなっているが、555と判読可能

▲セルビッチに赤いラインが入った通称“赤耳”。1986年以降は、セルビッチ自体が消え、脇ワリと呼ばれる仕様に

 

■これが最新の501!! 変わらぬ魅力と人気のヒミツ

一世紀半にも及ぶ歴史の中、時代に合わせて変化し続けてきた「501」。最後は、現行モデルをご用意。その特徴をリーバイスPRチームに尋ねると、「タフなクオリティを保ちながら、常に時代の真ん中をいく王道のストレートを打ち出しています」との回答が。

「変わらず守るものと時代に合わせた変化の絶妙なバランスを保ちつつ、多様なライフスタイルに寄り添いながら進化する。それこそが『501』が愛されてきた理由なのだと思います」

1993年にヨーロッパ規格とアメリカ規格が統一され、両方の長所を取り入れた仕様へとアップデートされて以降、数年おきにマイナーチェンジが行われているとか。だが、パッチと赤タブとボタンフライ、そしてクオリティの高さは常に変わらず、ファンを魅了し続けている。

未経験の人も、久しぶりにはいてみようという人も、まずはこの『501 オリジナル』を試してほしい。ジャストで穿くか、サイズアップするのか、サイズ選びもまた醍醐味の1つ。ポイントは、自分が“ちょうど心地良い”と思えるどうか。もし悩んだら、プロのいるリーバイスストアを訪れよう。自分だけのスタンダードが見つかるはずだ

【501 ORIGINAL】
変わらぬ伝統的ディテールと嬉しいアップデートが1つに

リーバイス
「501 ジーンズ ダークインディゴ CRISPY RINSE」(1万4300円)

2018年秋冬にモデルチェンジした、最新の現行「501」の姿をご覧あれ。濃紺の色合いにボタンフライ。すっきりと落ちるストレートフィットの堂々たる佇まい。リベットやレザーパッチ、赤タブ、バックポケットに走るアーキュエイトステッチなど、ディテールまでも抜かりなし。

▲パッチはレザー製。赤タブはヴィンテージデニムの証たる“ビッグE”表記。テンションの上がる嬉しい仕様

▲このタグは「501」など伝統品番を生地からパターン、ステッチまで現代風に一新したUS生産モデルに使用

 

【501 150th アニバーサリーモデル】
150周年モデルの501もCHECK!

リーバイス
「501 ジーンズ リジッド RAIN FOREST」(1万9800円)

150周年イヤーということで、これを記念した「501」が多数ラインアップ中。どれも人気が高く、ここで紹介するモデルも既に品薄状態。とはいえせっかくの機会なのでご覧あれ。

▲レザーパッチのモデル名が入る箇所には、150周年を記念した“150th”の刻印。白文字にすることで注目度上昇

▲通常であれば“Levi’s”の文字が記されている赤タブもまた“150”仕様。さり気なくもスペシャル感のある演出

▲ロールアップした際に視線を集めるセルビッチ部分にも“150 YEARS OF 501”の文字が。赤耳仕様でWの存在感

※2023年7月6日発売「GoodsPress」8-9月合併号104-107ページの記事をもとに構成しています

>> 特集【VINTAGEコレクター案内書】

<写真/河田浩明 取材・文/TOMMY 撮影協力/ベルベルジン、リーバイス ジャパン>

 

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