JR東日本の一部の新幹線でホットコーヒーの車内販売が復活した(写真:JR東日本提供)

近年のJR東日本の車内販売には物足りなさを感じる人も多いのではないだろうか。お弁当の取り扱いはなくなってしまい、何よりもコーヒーやアイスクリームがないということで残念に思っている人も多いだろう。

JR東日本では、コロナ禍前の2019年7月1日から車内販売におけるホットコーヒーの取り扱いをやめてしまった。それより前の同年3月15日には北陸新幹線「かがやき」「はくたか」以外でのアイスクリームやお弁当の販売を終了しており、これらの列車も7月にはコーヒーの販売を終了した。

コーヒーなどを扱う、それなりのスタイルの車内販売があるのは、この時点でJR東海の東海道新幹線と、JR西日本の山陽新幹線だけになってしまったが、「ホットコーヒー待望論」は東日本の新幹線利用者の中には根強かった。

上越新幹線の一部でまず再開

今年7月8日、JR東日本の車内販売を担当するJR東日本サービスクリエーションは、上越新幹線の一部列車にてホットコーヒーの試行販売を開始した。「お客さまからのご要望等を受けて」(JR東日本)、試行として上越新幹線で販売したところ好評だったという。

そこで同社は、車内販売のホットコーヒーの取り扱いを拡大することにした。上越新幹線での販売の実施状況から、乗客のニーズや採算性、商品に関する購入者の感想などを総合的に考えて、線区を拡大して販売することにした。値段は1杯あたり250円。以前のホットコーヒー販売時よりも安く、東海道新幹線のホットコーヒーレギュラーサイズの350円よりも100円安い。

コーヒーは「深いローストによるコクと苦み豊かなストロングタイプ」だという。あっさりしたタイプの味ではすぐ飲み終えてしまうので、一定の乗車時間がある新幹線で少しずつ飲むにはちょうどよさそうだ。具体的な商品名や抽出方法については答えられないが、「大手飲料メーカーより仕入れ、販売している」という。

販売する列車は、上越新幹線「とき」に加え、東北新幹線「はやぶさ」、北陸新幹線「かがやき」「はくたか」だが、一部の列車では取り扱いがない。東北新幹線では、モーニングコーヒーとして一部列車でホットコーヒーを上越新幹線とは異なる商品・抽出方式で販売していたが、11月1日以降は上越新幹線と同様の商品・抽出方式へ変更した上で対象列車を拡大して販売しているという。

ホットコーヒーが販売再開されるならば、今度は人気商品だったアイスクリームもほしい、となるのが人情だ。コーヒー販売開始のプレスリリースには、「アイスクリーム等のご要望の多い商品についても、今後販売線区の拡大を検討してまいります」とある。

アイスクリームはどうなった?

JR東日本に質問すると、すでに北陸新幹線ではスジャータ製のアイスクリームを販売し、好評だという。SNSなどでも同新幹線車内で「シンカンセンスゴイカタイアイス」などと呼ばれるスジャータ製アイスクリームを販売していることが話題となっていた。


新幹線E7系の車内(撮影:大澤誠)

北陸新幹線は、JR東日本では最後までお弁当やアイスクリームの車内販売を残していた路線だ。終点は金沢という北陸随一の大都市であり、全線を通して乗る利用者も多い。仙台、盛岡、八戸と徐々に利用者が減っていく傾向がある東北新幹線とは異なる。そんな路線だけに、乗客がアイスクリームを堪能するのにはちょうどいいのだろう。つまりは販売に向いている路線ということだ。

アイスクリームの販売再開は好評で、すでに上越新幹線の一部列車でも発売を開始したとのことだ。ただし、スジャータ製のアイスクリームとは異なるものだという。東北新幹線でもすでに発売している。

JR東日本は乗客の要望や採算性などを考えて、販売する線区の拡大も検討するという。北陸新幹線などでのアイスクリーム販売の好評を受けて、在来線特急の車内販売での復活や、在来線特急でもホットコーヒーの販売が登場することを期待したい。

以前の車内販売では、お弁当も取扱商品に入っていた。東海道新幹線の車内販売では、現在もお弁当やサンドウィッチを扱っている。JR東日本は、具体的な商品の予定は現時点ではないものの、今後も要望の多い商品の提供を検討するとしている。

東北・上越・北陸の各新幹線の走行エリアには、駅弁業者が多く見られる。とくに北陸新幹線は、「峠の釜めし」を沿線の駅で扱っているということもあり、途中駅での積み込みも期待したくなる路線だ。

車内販売見直しにつながるか?

車内販売は近年、列車の高速化による乗車時間の短縮や駅ナカサービスの充実により苦境に立たされていた。そこにコロナ禍が直撃し、鉄道利用そのものが減るという状況となって私鉄も含め全国的にほぼ消滅してしまった。JR東日本の車内サービスでも、「グランクラス」の軽食サービス縮小など、暗い話題が多かった。しかし、今回のホットコーヒー復活、アイスクリームの試行販売は、低迷の続く車内サービスにおいて明るい話題である。

最近は鉄道の利用も復活しつつあるが、今後は車内サービスでもより付加価値が求められるようになるだろう。新幹線車内ではペットボトルや缶コーヒーよりも車内で買えるホットコーヒーを飲みたいという人は多く、人気が高かった商品だ。ほかの車内販売品目の検討も含め、ぜひ取扱列車を拡大して長続きしてほしいものである。


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(小林 拓矢 : フリーライター)