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弾劾裁判所に訴追された仙台高裁の岡口基一裁判官(職務停止中)が、その要因の1つとなったSNSへの投稿をめぐり、女子高生殺害事件の遺族から損害賠償を求められている訴訟は10月28日に結審した。2023年1月27日に判決が言い渡される。

●遺族「なぜこんなことをするのか」

この日は原告である遺族の岩瀬正史さん、裕見子さん夫妻の本人尋問があった。

岡口氏は2017年、二人の次女・加奈さん(当時17)が殺害された事件について、ツイッターに判決文のURLを貼ったうえで、「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」「そんな男に無惨にも殺されてしまった17歳の女性」と投稿した。

二人は加害者の裁判にも被害者参加制度を使って出廷していた。正史さんは、裁判について知るために、SNS発信が盛んな「異色の裁判官」として知られていた岡口氏をフォローしていたという。投稿を見たときの気持ちについて、「衝撃を受けました。人目を惹く文章とともにURLが貼られていて、なぜこのようなことをするのかと思いました」と話した。

裕見子さんも、判決文がしかるべき場所で議論されるのは構わないが、岡口氏の過去のツイッター投稿などから、「娘を汚されているように感じました」「フォロワーを増やすことに執着しているように感じていました」と語った。

●娘の命日に「洗脳」投稿

二人の抗議を受けて、当時岡口氏が勤務していた東京高裁は、岡口氏が反省していることや、この件については二度と投稿しないことなどを度々説明していたという。しかし、その後も岡口氏はこの件についての釈明など、投稿を繰り返しており、二人の不信感は高まっていった。

そして2019年11月12日、岡口氏はフェイスブックに「リンクを貼った俺を非難するようにと、東京高裁事務局及び毎日新聞に洗脳されてしまい、いまだに、それを続けられています」などと書き込んだ。

この日は娘の加奈さんの命日だった。

裕見子さんは「頭が真っ白になりました。(投稿を)削除されると困るので証拠を残さなければと思いました」と答え、娘の冥福を十分に祈れなかった無念を語った。

「被告(岡口氏)の誠意、反省は1ミリも感じられませんでした。私たちにとって一番悲しい娘の命日が来るたびに思い出す。また何か書かれるんじゃないかと思いながら、これから生きていかないといけない」(裕見子さん)

「娘が殺されて、それでも普通の生活をしようと努力しているのに、被告の執拗な繰り返しの攻撃にあっている。悲しむ権利を奪われていると思っています」(正史さん)

岡口氏とのやりとりをめぐり、SNSでは第三者から二人に対する誹謗中傷もあったといい、裁判に証拠として提出されている。

裕見子さんは、「SNSの誹謗中傷に苦しんでいる人が希望を持てる判決が出ることを心から祈っています」とも語った。