東京で一度は食べておきたい人気食堂の「最強定食」とは? | 食楽web

 東京は世界トップクラスと言えるほど、美味しいものであふれる都市です。カレーやラーメンの食べ歩きは序の口で、江戸前寿司に舌鼓も打てるし、行こうと思えばラグジュアリーなミシュラン店もたくさんあるし、地元密着型の居酒屋でこだわりの料理を肴に一杯やるのも自由自在。

 でも、忘れちゃいませんか? 日本が誇る最強のセットメニュー「定食」を。メイン料理とご飯、そして汁物と副菜たちが一堂に会する、ひとりメシのワンダーランド。これを楽しまずして、東京の、いやニッポンの食を語ることはできません。

 というわけで今回は、美味しい定食で心もおなかも満足したいと願う大人にぜひ訪れてもらいたい、東京のイチオシ店の最強定食を5品、ご紹介しましょう。

国宝級にウマい! 荻窪の名店『ことぶき食堂』の名物「ブタカラ定食」

これが名物「ブタカラ定食」(1000円)。ご飯、味噌汁、香の物、そして味変用にタルタルソース(50円)を追加

 “からあげ”というと、鶏のからあげ(トリカラ)を思い浮かべる人がほとんどでしょう。しかし実は豚肉のからあげで人気のお店が荻窪にあります。それが『ことぶき食堂』。

 看板メニューは「ブタカラ定食」です。ブタカラとは、豚肩ロース肉に片栗粉をまぶしてラードで揚げたものに、醤油や酢、ニンニク、ショウガなどで味付けしたタレをからめたもの。まずはその量に度肝を抜かれます。一瞬、完食できるか不安になってしまうほどにてんこ盛り。ブタカラと一緒に千切りキャベツが添えられています。

JR中央線ほか荻窪駅北口から徒歩15分ほど。環状8号線沿いに佇む『ことぶき食堂』

 ひと口食べてみると、サクッとした歯ざわりの衣。その先に待っている肉の旨みと柔らかさが相まって“サクトロ”食感とでも表現したくなる噛みごたえです。ラードのコクのある風味が口いっぱいに広がったかと思うと、それが砂にまいた水のごとく舌に吸い込まれていきます。

千切りキャベツを圧迫するブタカラの量に圧倒されます。キャベツも味が染みてウマい!

 あまりの美味しさに無意識に肉を飲み込んでしまい、反射的にご飯で追いかけます。ご飯がすすむ、というより白米のアシストが必須。舌が吸収しきれなかったブタカラの味を、ご飯が見事に集めて胃袋に送り出してくれます。ブタカラ⇒ご飯⇒ブタカラ⇒ご飯という無限ループが止まりません…!

 また、自家製の胡瓜の糠漬けを長めに漬けて古漬けにしたものを、ピクルス代わりに使った自家製タルタルソースは玉子感が強く酸味ひかえめ。豚肉の旨味をさらに引き立ててくれる超優秀バイプレーヤーで、ブタカラにつけるとこってり感が和らぎ、美味しさがさらに増します。

削り節の風味が絶品の味噌汁。これが実に美味しい!

 そしてこの店は味噌汁も旨い。定食で味噌汁がマズいとガッカリするものですが、こちらは違います。かつおなど数種類のけずり節でダシをとっているそうで、旨み・風味が実に爽やかで滋味深い一杯。こってりしたブタカラとのコントラストが絶妙で、食事のリズムをいい感じに整えてくれます。

 ちなみにブタカラ定食は400円で「肉特盛」もできるので、ガッツリ食べたい人はオーダー時に伝えるのをお忘れなく。

●SHOP INFO

店名:ことぶき食堂

住:東京都杉並区桃井1-13-16
TEL:03-3390-0545

孤独のグルメにも登場した大岡山の名店『九絵』の魚づくしの最強定食!

「なめろう付九絵定食」(1870円)。この豪華なラインナップをご覧ください!

 魚をおかずにご飯を食べたいけど、普通の焼き魚定食や刺身定食などでは物足りない。もっとガッツリ、いろんな魚料理を楽しみたい! そんな時、ありませんか? そういうワガママにも近い願望をかなえてくれる店が東京・大岡山にある『漁師料理 九絵』。こちら、釣り好きの大将が営むお店で、ドラマ『孤独のグルメ Season5 第6話』(テレビ東京)にも登場した名店です。

東急目黒線・大井町線の大岡山駅から徒歩1分

 イチオシは「なめろう付九絵定食」。こちら、日によって変わる日替わりの煮魚定食です。例えば取材に行った日は、煮付けはマグロのカマ、なめろうはカンパチ。豪華すぎて、お昼にこれだけ食べちゃっていいの!? と嬉しい焦りを感じるほどのボリューム感でした。

 まずはいわゆる魚のたたきである「なめろう」から。カンパチのねっとり&トロッとした舌ざわりに、ところどころで身のプリッとした歯ざわりが瞬間的に現われます。そして漂うほのかなショウガの風味。複数の食感と風味が多層的に入り混じる、バラエティ感アリアリの味わい。もちろん、ご飯にのせて食べるとさらに激ウマです!

この日のなめろうはカンパチ。ねっとり&プリッのコントラストが超優秀

 主役のマグロのカマは煮汁がよく染みていて、これもご飯にピッタリ。ふわとろなやさしい食感。煮汁のこってり感とマグロの旨みがじわ~んと広がり、とにかく後を引く味わいです。

この日の煮付けはマグロのカマ。大根にも魚の旨みがしっかり染みて最高に美味

 刺身はマグロ、ヒラメ、サーモン、ブリ、シメサバ、エビ。豪快に切り分けられた刺身で、分厚く面積もデカい! 口に入れた瞬間、鮮度の良さがわかります。ひと切れだけで口の中がその魚の旨みエキスで満タンにされてしまったかのよう。それが6種類もあり、満足感を通り越して恍惚とした幸福感すら覚えます。

この日の刺身はマグロ、ヒラメ、サーモン、ブリ、シメサバ、エビ

 この豪華でボリューミーな定食の成り立ちは、店を切り盛りするご夫妻が、「食材を余らせるくらいなら新鮮なうちにお客さんに食べてもらったほうがいい」と考えて、一品プラスするようになったのが由来だそう。きっと、お客さんの中に「アジフライ定食を頼んだけど刺身も食べたい」なんてワガママ(?)を言う人がいたんでしょう。お客さんと食材への愛をひしひし感じるお店です。

●SHOP INFO

店名:漁師料理 九絵

住:東京都目黒区大岡山2-2-1
TEL:03-5731-5230

東京・浅草の食事処『水口』で「最強コロッケ定食」を堪能する!

 東京・浅草にある『食事処 酒肴 浅草 水口』は昭和25年創業。浅草の芸人たちにも愛される老舗定食店です。漫才コンビ・ナイツのお二人も、この店のことをよく話していますね。こちらで有名な料理といえば「いり豚」。豚肉と玉ねぎをカレー風味のソースで炒めた、ちょっとスパイシーでやみつきになりそうな逸品です。

 しかしそれ以外にも水口には美味しいメニューがたくさんあり、どれも単品でオーダー可能。ご飯と味噌汁の単品もあるので、これらを自在に組み合わせることで、世界に一つだけの“マイ定食”を作ることができるのです!

一品料理も豊富で目移り必至。ここから自分だけの定食を作るのが楽しい

 例えば、筆者のオススメは以下のようなラインナップ。

・手作りコロッケ(450円) ・イカバター焼(690円) ・栃尾油揚焼(450円) ・御飯 並(200円) ・なめこ汁(450円)

 これに小鉢とお新香もつけて、豪華この上ないコロッケ定食が完成するという寸法です。この組み合わせだとランチとしてはややお高くなりますが、それでも2000円ちょい。大人なら許せる範囲ですよね。

 主役はもちろん「手作りコロッケ」。お店で毎朝、じゃがいもをふかすところから手作りしている絶品コロッケです。このコロッケを軸に、「イカバター焼」と「栃尾揚げ」を飛車角のようにサイドに配する布陣で攻めていきます。

毎朝お店でじゃがいもをふかして手作りしているコロッケ。衣のサクサク感とポテトのホクホク感のコントラストが最高

 まず主役である「手作りコロッケ」にかぶりつけば、揚げたてのサクッとした衣と“おいも感”あふれるホクホク感がたまりません! 何もかけなくても十分美味しいのですが、レモンやソースをたらすと、ちょっとフルーティーな酸味も加わって、さらに魅力的な味わいに変化していきます。

 次に、「イカバター焼」に箸を伸ばしてみましょう。これはご飯にもお酒にも合う逸品です。プリンとした弾力ある歯ざわりとともに、ほんのりと感じるバターの塩気が最高。少しレモンを搾ると、より爽やかな風味が立ち上ります。

イカバター焼。プリンと弾力ある食感でお酒のアテにもピッタリ

 そして「栃尾油揚焼」。外はカリッとクリスピーで、中は実にふんわりとした食感。噛むほどに旨みがにじみ出します。ここに刻み白ネギやショウガをのせて、醤油をほんのちょっとかけて食べてみれば、さらに旨さが加速。焼いた油揚げの香ばしさにショウガと醤油の風味がピタリと寄り添います。

栃尾油揚焼。ショウガ、刻み白ネギ、醤油が食欲をソソる!

 汁物で言えば、「なめこ汁」がまたウマいのなんの! ダシに加えてなめこの旨みがよく出ていて、深みのある味わいなんです。どれもこれもお米を美味しく楽しませてくれる味なので、胃袋に自信のある人は大盛りにするかおかわりするといいでしょう。

『食事処 酒肴 浅草 水口』は浅草演芸ホールから徒歩で数十秒

 ちなみに、水口はお刺身や焼魚、煮魚などの魚料理はもちろん、ハンバーグやナポリタン、オムレツなどの洋食メニューも豊富。ぜひ自分だけのマイ定食を楽しんでみてください。

●SHOP INFO

店名:食事処 酒肴 浅草 水口

住:東京都台東区浅草2-4-9
TEL:03-3844-2725

築地の老舗食堂『多け乃』の「煮魚定食」に喰らいつけ!

本日の煮魚定食の「ランチサイズ・キンキ」(2500円)

 東京・築地場外市場にある昭和10年創業の『多け乃(たけの)』。こちらは刺身や煮付け、フライなど、魚や貝など海の幸は何を食べても美味しい人気食堂です。

 こちらで頼みたいのが、日によって魚が異なる「本日の煮魚定食」。例えば、ある日のメニューは「ランチサイズ・キンキ」。ランチサイズと謳っているので小さめのものを想像するかもしれませんが、実に立派なサイズのキンキが丸ごと1尾。さすが築地だけあって、ボリュームも豪快なのです。

食べごたえ抜群の煮魚。この日はキンキ

 そのキンキの煮付けに箸を入れると、ホロリとむしり取れます。そのまま食べると、ツルンとした舌ざわりがなんとも心地いい! 噛みしめるほどに、旨みたっぷりの脂がのっているのがよくわかります。

 そしてその身を、濃厚で旨み十分な甘い煮汁に浸して食べてみれば、食欲スイッチが一気に全開になるハズ。これをご飯に合わせない手はありません! ホカホカの白いご飯にドンとのっけて煮汁を染み込ませたら、あとはそれを一気にかきこむだけ。するとどうなるか。「旨い!」としか言いようがなくなります。魚の旨みがお米に乗り移って、もはや口福の極み。

ご飯にのせればキンキの旨みがたっぷり染みた贅沢な味付けご飯に変身!

 こうして、自分の裁量でご飯とおかずを自由に差配して食べられるのが定食の醍醐味。ちなみに、頭もまた美味。とくにホホはゼラチン質が豊富で、プリンとした食感がたまりません。胸びれや背びれの付け根の部分も最高なので、ぜひ骨についた身までしゃぶり尽くしてください。下品? いやいや、この美味しさを前にして、外面の悪さを気にしているほうが失礼というものです。

●SHOP INFO

店名:多け乃

住:東京都中央区築地6-21-2
TEL:03-3541-8698

からあげ&ラーメン好き必見! 完全無欠の「唐揚げ定食」は板橋にあり!

「イチオシ唐揚げ定食」1300円

 東武東上線・大山駅から徒歩1分ほどの場所にある『ジンジャーヘッドバッド』はショウガにこだわったラーメンをウリにするお店。こちらはからあげ×ラーメン×ご飯という最強の布陣で構成された「イチオシ唐揚げ定食」が素晴らしい。

『ジンジャーヘッドバッド』は東武東上線・大山駅から徒歩1分ほど(食楽web)

 まずはラーメン。チャーシューではなくカットしたからあげがのっています。スープをひと口含むと、濃いめの醤油味の中からショウガの風味がガツンと攻めてきます。レンゲでドンブリの底をさらうようにかき混ぜると、沈んでいたショウガが拡散されて、さらにその爽やかな風味が強まります。ツルッとした舌ざわりが抜群にいい麺との絡みもバツグン。ラーメンにのったからあげも衣にスープが染み込んでこれまた美味。ヘタなチャーシューよりもこちらのほうが断然イイ!

ラーメンにはからあげがドーンとのっかっていてテンション爆上がり!

 からあげはかなり大きめのものが3個。箸で持ち上げてみるとけっこうな重量感で、子どものコブシほどはありそうです。かぶりついて、サックリとした食感の衣を突破すると、フワッとやさしい歯ざわりの肉が現れます。肉汁も十分で、のどから鼻にかけて抜けていくショウガの爽快感がたまりません。

ショウガのやさしい風味とともに肉汁がたっぷり出てきます

 ラーメンのショウガは勢いよくガンガン攻めてくる感じですが、からあげの場合はその真逆の印象です。肉の旨みとショウガの風味が手を取り合って、おだやかに歩み寄ってくるような感覚。このバランスが絶妙で、食べ飽きることがありません。

 そしてからあげの旨さを受け止めるご飯には、特製のネギ味噌がのっています。ショウガとネギを混ぜ合わせて作った味噌で、これがまた白いご飯に合うこと! これはある意味、ショウガづくしの「ショウガ定食」でもあるので、食べ終わると体がポカポカと温まります。

●SHOP INFO

店名:ジンジャーヘッドバッド

住:東京都板橋区大山東町59-8第一徳山マンション1F
TEL:03-6905-7899