「卵巣嚢腫」が妊娠中に発見された場合の治療法はご存知ですか?医師が解説!

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卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)をご存じでしょうか。卵巣にできる腫瘍の一種で、ほとんどが良性ですが、まれに悪性もあります。20~30歳代に多い疾患です。
今回は、卵巣囊腫の概要や症状、受診科目と検査、そして治療方法を紹介します。

卵巣嚢腫とは

卵巣囊腫とはどのような疾患でしょうか。

卵巣囊腫とは、卵巣が風船のように膨らむ腫瘍です。ほとんどが良性ですが、まれに悪性の場合があります。20~30歳代に多い疾患で、卵巣腫瘍のうち80~90%は卵巣囊腫であると考えられています。

卵巣はホルモンを分泌したり、排卵を行ったりするため、細胞分裂が盛んです。また、卵巣にはいろいろなものに分化する可能性のある細胞があるため、腫瘍も生まれやすいと考えられています。

なお、卵巣嚢腫にこれといった原因や予防法はありません。健康診断等を定期的に受けて、早期発見することが重要です。

卵巣囊腫の種類と、それぞれの特徴を教えてください。

卵巣囊腫は何が卵巣に溜まったかで、主に3種類に分類されます。もっとも多いのが全卵巣腫瘍の15~25%を占める「漿液性囊腫(しょうえきせいのうしゅ)」です。水のようなさらさらとした液体が溜まり、両側に発生することが多くなっています。漿液性囊腫は、円形か楕円形をしています。

粘液が溜まる「粘液性囊腫(ねんえきせいのうしゅ)」は、全卵巣腫瘍の5~30%を占めます。多くは片側に発生し、円形か楕円形で30cmを超える場合もあります。

もっとも特徴的なのが、脂肪や毛髪や歯などが含まれる「成熟嚢胞性奇形腫(せいじゅくのうほうせいきけいしゅ)・皮様嚢腫(ひようのうしゅ)」です。卵巣にはいろいろなものに分化する可能性のある細胞があるため、皮脂や毛髪、歯などが作られる場合があります。

成熟嚢胞性奇形腫・皮様嚢腫は全卵巣腫瘍の15~25%を占めています。両側に発生することが多く、20~40代に多く発生します。年齢を重ねると、まれに悪性転化してがんになってしまう可能性があるため、注意が必要です。

卵巣嚢腫の症状

卵巣囊腫はどのような症状が現れますか?

卵巣囊腫は「Silent Tumor(沈黙の腫瘍)」と言われ、無症状の場合が多い疾患です。成長速度もゆっくりであるため、かなり大きくなっても気付かず、「太ってきた」と思う人も多い腫瘍です。

大きくなると下腹部痛や腹部の膨満感(お腹の張り)、頻尿などが現れる場合があります。

また、皮様囊腫の場合は、茎捻転(けいねんてん)を起こすことがあります。茎捻転とは囊腫がねじれること。急に激しい腹痛が起こることで、救急受診となる場合があります。

卵巣嚢腫の受診科目

卵巣囊腫が疑われる場合、何科を受診すればいいのでしょうか?

産婦人科を受診してください。しかし、多くの場合は無症状なので、妊娠や健康診断をきっかけに発見されることもあります。また、腹痛で内科などを受診した時に発見されることもあります。

卵巣嚢腫の検査

卵巣囊腫はどのような検査が行われ、診断されますか?

卵巣嚢腫は、超音波検査・CT検査・MRI検査・血清腫瘍マーカーなどで診断されます。大きくなると、触診でも診断可能です。

卵巣腫瘍に多い卵巣嚢腫の多くは良性ですが、悪性腫瘍の可能性もあるので、良性か悪性かを予測します。そして卵巣嚢腫だった場合、種類を決定しなければなりません。

それぞれの検査法では、何を調べますか?

超音波検査(経腹・経膣)で、腫瘍の大きさがわかります。また、良性・悪性の予測にも役立ちます。腫瘍が袋状の嚢胞性であれば卵巣嚢腫であり、良性の可能性が高いでしょう。かたまりの充実性部分があれば、悪性が疑われます。

CT検査やMRI検査では内部の構造を調べられるため、良性・悪性の予測や卵巣嚢腫の種類の決定に用いられます。

また、腫瘍の良性・悪性を予測するために行うのが、血清腫瘍マーカーです。しかし血清腫瘍マーカーで異常値を示しても悪性とは限らないため、あくまで予測にすぎません。

これらの方法での良性・悪性の診断には限界があります。そのため、確定させるには手術で腫瘍を取り除き、病理検査を行わなければなりません。

卵巣嚢腫の治療方法

卵巣囊腫はどのように治療を行いますか。

卵巣嚢腫と診断されても、小さくて無症状かつ良性と予測される場合は、治療をせずに定期検診で経過観察をする場合もあります。しかし、手術をして取り除いた腫瘍を病理検査しなければ良性と確定はできません。

まれに、急に大きくなるなど後になって悪性とわかる場合があるので、経過観察が必要です。

ある程度大きくなっていたり、下腹部痛や腹部膨満感などの症状があったりする場合は、基本的に手術を行います。

卵巣嚢腫の手術

具体的には、どのような手術を行いますか?

手術には、卵巣嚢腫摘出術や付属器摘出術などがあり、それぞれ開腹手術、腹腔鏡手術があります。腫瘍の大きさや良性か悪性か、妊娠・出産の希望、年齢などに応じて治療方針が選択されます。

腹腔鏡手術の方が入院期間や開腹期間が短くなります。傷や痛みも少なく済みます。

卵巣嚢腫摘出術は、どのような手術ですか?

卵巣嚢腫摘出術は悪性の可能性がない場合に行われ、腫瘍のみを摘出する手術です。卵巣の正常な組織は残されます。開腹手術では、お腹を8~10cmほど切開して腫瘍を摘出します。

腹腔鏡手術は、もう少し複雑です。まずお腹に小さな穴を数カ所開けて、その穴から炭酸ガスを入れてお腹を膨らまします。そして、1つの穴から腹腔鏡を入れてモニターでチェックしながら、さらに別の穴から器具を入れて、腫瘍のみを摘出します。

付属器摘出術は、どのような手術ですか?

付属器摘出術は、卵管と卵巣を摘出します。卵巣のみを摘出して卵管を残す場合もあります。付属器摘出術の開腹手術も、腹腔鏡手術も、摘出するのが腫瘍のみか卵管と卵巣かの違いだけで、やり方は卵巣嚢腫摘出術とほぼ同じです。

妊娠中に卵巣嚢腫が見つかった場合の治療

妊娠中に卵巣嚢腫が発生することはありますか?

妊娠中に卵巣嚢腫が発見されるのは、かなりまれです。もし見つかった場合は、超音波検査で大きさや、悪性が疑われる所見があるかどうかを確認します。

妊娠中の卵巣嚢腫は、どのように治療しますか?

手術をするかどうかは、腫瘍の大きさにもよります。腫瘍が5cm以下などと小さい場合は、手術を行わない場合もあります。しかし、妊娠中に破裂する危険性があったり、分娩時の障害となったり、茎捻転が起こったりなど、危険性が高いと判断される場合は手術が必要です。

手術は、胎児への影響を考えて妊娠12~16週頃を目安に手術を行います。12週より早いと、麻酔薬の胎児への影響や、流産の危険性がより強く懸念されます。一方で胎児が成長して子宮が大きくなったあとでは、見える範囲が狭くなって手術が難しくなってしまうのです。

手術後は原則、通常の分娩管理と経膣分娩を行います。

編集部まとめ

卵巣嚢腫とは、卵巣が風船のように膨らむ腫瘍で、ほとんどが良性です。卵巣腫瘍のうち80~90%が卵巣嚢腫であり、20~30代に多い疾患です。

水のようなさらさらとした液体が溜まる漿液性囊腫や、粘液が溜まる粘液性囊腫、脂肪や毛髪や歯などが含まれる成熟嚢胞性奇形腫・皮様嚢腫などがあります。

症状は無症状の場合が多く、大きくなると下腹部痛や腹部膨満感、頻尿などの症状が現れる場合があります。

疑われる症状がある場合は、産婦人科を受診してください。しかし、多くの場合は無症状なので、妊娠や健康診断をきっかけに発見されることも多い疾患です。

卵巣嚢腫は、超音波検査・CT検査・MRI検査・血清腫瘍マーカーなどで診断されます。大きさを確認し、良性か悪性かの予測を立てて、卵巣嚢腫だった場合はその種類を決定します。

小さくて無症状かつ良性と予測される場合は、治療をせずに経過観察をすることも。大きくて症状がある場合は、卵巣嚢腫摘出術や付属器摘出術などの手術を行います。

卵巣嚢腫にこれといった原因や予防法はありません。健康診断等を定期的に受けて、早期発見をすることが重要です。

参考文献

大橋医院 産婦人科【卵巣のう腫について】

婦人科内視鏡手術センター【卵巣腫瘍】

婦人科info【卵巣嚢腫】

大鳥居医院【良性卵巣腫瘍】

愛和レディースクリニック【卵巣嚢腫】

東京ベイ浦安医療センター【妊娠中に卵巣嚢腫・子宮筋腫が合併しているときの対応は?~妊娠前からの定期的なチェックも大切です~】