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川崎市のカフェで働くパート従業員の30代女性が「制服への着替え時間を労働時間と認めないのは違法だ」と訴え、労基署から是正勧告が出たと明らかにした。7月14日、都内で会見した女性と飲食店ユニオンによると、カフェを運営する飲食チェーン「フジオフードシステム」(大阪市)は「司法により判断される事項」と回答し、約1カ月にわたり、勧告を無視した状態だという。

●コック風の制服だけど「家から着てきてもいい」

女性が働くのは川崎市の「デリス タルト&カフェ」で、大型商業施設内に入居している。 制服は白いコック風で、更衣室と店舗が離れており、着替えや移動に時間がかかるが、出勤退勤時ともに労働時間には含まれていないという。

女性側は、昨年6月から会社側と書面のやりとりを重ねてきた。しかし、会社側は「更衣室での着替えは義務ではない」「家から着てきてもいい」などと主張した。交渉は平行線をたどり、今年5月に川崎北労基署に、違法だと申告した。

●未払い賃金をさかのぼって支払うよう勧告

川崎北労基署は6月17日、同店では制服の着用が義務付けられており、実態として更衣室での着替えが余儀なくされているとして、会社側に是正を勧告した。着替えも労働時間として扱い、また、女性がこれまで働いてきた2年間の未払い分の賃金を支払うよう指導する内容だった。

しかし、会社側は7月1日、労基署の行政指導について「公的な判断と理解はしているものの、労働時間性という法的評価が争点となる事項であるがゆえに、終局的には司法により判断されるべき」と女性側に回答している。川崎北労基署にも、支払う意向はないことを伝えているという。

ユニオンによると、着替えや移動の時間を計算すると、女性の場合は週2日勤務で年間5万7000円の未払いになるという。ユニオンは「他の店舗でも、着替え時間に賃金が支払われていない可能性が高く、多数の従業員を抱える同社の未払いは総計3億円超に上ると推定される」と説明する。

●「諦めて我慢してしまえば、何も変わらない」 

女性は昨年7月、コロナ禍の休業手当を求めて、同社を相手取り約180万円を求める訴訟を横浜地裁に提起している。

4年間働く中で、30人以上の学生やパート従業員が、会社の体制に理解できず辞めていったという。「私も、コロナまでは嫌だったら辞めちゃえばいいや、って考えてました。でも、諦めて我慢してしまえば、何も変わらない。辞めるのはいつでもできるんだから、闘ってみようと思ったんです」

今後、是正勧告の内容を受けた団交に臨むといい、会社側に誠実な対応を求めている。会社側の代理人弁護士は「対応を検討中」と話した。