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親が亡くなった後に、兄弟姉妹間で揉めることも多い遺産相続。弁護士ドットコムには「弟が父から高級マンションを無償使用していた」という相談が寄せられています。

●【相談】

他界した父が、約2億円の分譲マンションを所有していました。弟夫婦はその超高級分譲マンションに15年以上、家賃を一切支払わず無償で暮らしていました。不動産会社に家賃を査定してもらうと、月額約70万円くらいで貸せるとのことです。

遺産である超高級分譲マンションの無償使用による利益は、特別受益にあたるのでしょうか?

●【解説】遺産の前渡しと評価できるか(新保英毅弁護士)

特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から遺贈や生前贈与など遺産の前渡しを受けたと評価できる場合に、共同相続人間の不公平を解消するために、受益額を遺産に持ち戻して具体的な相続分を算出するという制度です。

一般的には、相続人が被相続人の所有する建物に無償で居住している場合、その賃料分は特別受益にはならないと考えられます。その理由は、建物の無償居住は恩恵的な要素が強いこと、建物を無償で使用させても遺産は減少しないことから、通常は遺産の前渡しとは言い難いからです。

しかし、今回のケースのように収益性の高い超高級分譲マンションの場合、無償居住がなければ父が賃料収入を得られる見込みが高く、父の収入が減少していると評価できるため、特別受益に当たる可能性があるでしょう。

ただし、被相続人が持ち戻し免除(過去の贈与を特別受益とは扱わず、残った遺産だけを遺産分割の対象とする)の意思表示をしている場合は、特別受益と扱わないこととなります。特に、弟夫婦に病気等で困窮した事情があって父が無償居住を許容したような場合、持ち戻し免除の意思表示があったと推測できる場合が少なくないでしょう。

結局、今回の無償の居住が遺産の前渡しと評価できるのか、無償の居住について父にどのような意思があったかがポイントになりそうです。

【取材協力弁護士】
新保 英毅(しんぼ・ひでたか)弁護士
2004年弁護士登録。相続・遺産分割事件、中小企業の法務の案件を多く取り扱っている。モットーは「依頼者ひとりひとりに適したオーダーメイドのサービス」。
事務所名:新保法律事務所
事務所URL:http://shinbo-law.com/