タクシーを強引に停めて、乗らずに路上で騒ぐ「酔っぱらい」…乗車拒否してもいい?
東京・六本木の路上で、酔っ払いの若い人たちが強引にタクシーを止める光景を見ることは珍しくない。ある日の早朝も、ハイテンションの若い男性が、3車線の真ん中を走るタクシーの前に立ち塞がって強引に停車させて、「ねえ、こっちだよ」と、他の仲間たちに声をかけていた。
しかし、酔っぱらった仲間たちは全く来る気配がなく、この男性は「おーい、こいよ」と声をかけていたが、待っている間、停車せざるをえなかったタクシーの運転手はかなり不機嫌そうだった。
結局、数分たっても仲間は来ずに、タクシーは「解放」された形になったが、明らかに迷惑な客の乗車を拒否できないのだろうか。下山田聖弁護士に聞いた。
●道路運送法ではどう定められているか?
乗車拒否については、どんな法律が関連してくるのか。
「タクシー運転業務は、「道路運送法」という法律の規制を受けます。
道路運送法13条では、「一般旅客自動車運送事業者」は、原則として「運送の引受けを拒絶してはならない」としています。そして、理由のない運送引受けの拒絶(=乗車拒否)には、100万円以下の罰金が予定されています(道路運送法98条6号)。
乗車拒否が許される場合として、法律に定められているのは、
(1)当該運送の申込みが、約款に寄らないものであるとき(13条1号)
(2)当該運送に適する設備がないとき(13条2号)
(3)当該運送に関し、申込者から特別の負担を求められたとき(13条3号)
(4)当該運送が法律、公の秩序、善良の風俗に反するものであるとき(13条4号)
(5)天災その他やむを得ない運送上の支障があるとき(13条5号)
(6)国土交通省令で定める「正当な事由」があるとき(13条6号)
です。
(6)の「正当な事由」については、旅客自動車運送事業運輸規則13条各号に規定があります。たとえば、タクシー内において法令違反、公序良俗違反の行為をするとき(同条1号)、「泥酔した者又は不潔な服装をした者等であつて、他の旅客の迷惑となるおそれもある者」(同条3号)について、運送の引受けや継続を拒否することができる、となっています」
今回のケースをどう考えたらいいのか。
「三車線の真ん中を走るタクシーを強引に停止させる行為は、道路交通法に違反するものと思われますし、停車や駐車が禁止されている車道で正当な理由なくタクシーを停止させるとなれば、タクシー運転手の側が道路交通法違反になりかねません。
『迷惑な客』の程度問題にはなりますが、少なくとも法令に違反するような態様のお客さんについては、乗車拒否をしたとしても、正当な理由があるとして罰則の対象にはならないのではないかと思います」
【取材協力弁護士】
下山田 聖(しもやまだ・さとし)弁護士
弁護士法人一新総合法律事務所高崎事務所 所長
一橋大学法科大学院を修了後、2016年12月に弁護士登録。新潟県内に5か所と長野・高崎・東京に拠点を有する一新総合法律事務所に所属し、企業向けの労務問題や、交通事故をはじめとした事故賠償案件に注力している。
事務所名:弁護士法人一新総合法律事務所高崎事務所
事務所URL:http://www.n-daiichi-law.gr.jp/