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会社で導入されている勤怠管理システム。残業時間が15分単位でしかつけられないという男性が弁護士ドットコムに相談を寄せました。

●【相談】46分に打つと1分もつかない

会社の勤怠システムは、システム上の仕様なのか残業時間が15分単位でしかつきません。例えば、17時45分にタイムカードを打つと18時までの15分は残業時間となりますが、46分にタイムカードを打つと1分もつきません。

これが毎日となると月換算でそれなりの時間が切り捨てられていますが、当たり前なのでしょうか。

●【回答・寺岡幸吉弁護士】

結論から言って、違法です。ただ、以下のような場合には、労働時間の切り捨てとは言えないこともあります。

それは、例えば、工場の入口の守衛室の前にタイムレコーダーが置いてあり、それで出勤時刻を打刻してから着替えをするなどして、実際に労働を始めるまで15分ほどかかる場合です。なお、着替えの時間が労働時間かどうか、という問題もあり、一定の条件を満たす場合には労働時間となりますが、ここでは、労働時間ではないという前提で説明を続けます。

この場合、労働時間はタイムレコーダーで記録してから15分後に始まると考えられるので、15分単位で切り捨てても違法ではありません。仕事が終わってからタイムレコーダーで退勤時刻を記録するまで15分程度かかる場合も同様です。

実は、数十年前の、まだタイムレコーダーが高価であった時代には、このようなやり方が多かったのです。しかし、今はタイムレコーダーも安価ですし、それ以外にも、いろいろな労働時間管理システムが登場してきました。現在、このような事業所は圧倒的少数派でしょう。

●労働時間は1分単位で考えるのが一般的

要するに、今は、始業時刻や終業時刻、休憩の開始時刻や終了時刻を正確に把握することが可能になっている時代なのです。質問者の会社の勤怠システムも、15分単位で記録する仕様ではなく、1分単位での記録も設定できるようになっているはずです。

そして、いつの時代も、みなし労働時間制などを採用していない事業所では、労働時間に応じて賃金を支払うのが大原則であり、15分未満は切り捨てていい、などという法律などはありません。

ちなみに、一般的に言って、時間は1分単位で計測するものとは限らず、もっと細かい単位で計測することが必要な場合もありますが、労働時間については、1分単位で計測するのが感覚的に合っているということなどから、1分単位で考えるのが一般的です。

なお、時間外労働等の時間数について、1か月の合計で1時間未満の端数がある場合には30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げるという方法を認めている通達があります(昭和63年3月14日付の労働省通達、基発第150号)。これは、当時の労働時間の集計が電卓などで行われていたことを考慮したもので、PCなどを使えば分単位の計算も簡単にできる現在の状況に合っているとは思えません。

そのため、私は未だにこの通達が有効なものとして扱われていることについて、疑問を持っています。ただ、この通達を前提としても、毎日、15分未満の労働時間を切り捨てるという方法は違法と言わざるを得ません。 

【取材協力弁護士】
寺岡 幸吉(てらおか・こうきち)弁護士
社会保険労務士を経て弁護士になった。社労士時代は、労働問題を専門分野として活動していた。弁護士になった後は、労働問題はもちろん、高齢者問題(成年後見や高齢者虐待など)、高齢者問題の後に必ずやってくる相続の問題などにも積極的に取り組んでいる。
事務所名:落合・深澤法律事務所
事務所URL:https://rousai-kanagawa.jp/